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第4章 遠征
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ユミルはホテルの中に入ると、指示のあった部屋番号まで移動しようと階段を上がった。
今回、このホテルは魔法局で貸し切っているらしい。
一部屋はレインがユミルのために抑えたらしく、魔法局職員と相部屋ではないことが唯一の心の救いといって良い。
ホテルは3階建てでこぢんまりとしているので、ユミルは自分の部屋のある2階に移動するとすぐに同じフロアにいた女性に気が付いた。先ほどユミルに鋭い視線を向けていた魔法局の杖修復士だ。杖修復士なので、巡回には同行しないようだ。
「貴女がユミル・アッシャーね。」
相手もユミルにすぐに気が付くと、ユミルに鋭い視線を向けてきた。
初対面から呼び捨てなんて、とユミルは思ったが愛想笑いを浮かべる。
年は近そうだが、魔法学園で見かけたことはない。
恐らく、貴族の令嬢で、学園には通わず家庭教師を付けていたタイプの魔法使いだろうとユミルはあたりを付ける。
「はい、私がユミルです。魔法局の皆様の遠征にご一緒させてもらうことになって恐れ多いですが、よろしくお願いいたします。」
「レイン様からお声をかけてもらったからって、調子に乗っているのかしら。魔法局にも入れない底辺魔法使いが、調子に乗らないでいただきたいわ。」
令嬢はユミルが頭から被っているコートを上から下まで見てから、苛立ちを露わにした。
ユミルがレインから貸してもらったコートは魔法局から支給される制服のようなものだ。
ユミルが遠征に来ていること自体も気に食わないのに、それを身に纏っていることが更に令嬢の癇に障ったらしい。しかもてるてる坊主のようなふざけた着方をしている。
(ここでレイン様から貸してもらった、などといえばさらに怒られるのは目に見えているな。)
カリカリとしている令嬢を前に、ユミルは下手なことを言わずに、曖昧な愛想笑いでその場を凌ごうとしたが、令嬢は更に言い募る。
「貴女の腕が如何程かは知らないけれど、杖修復士はわたくしひとりで十分よ!」
(…大丈夫じゃあないから、先日の事態が起きるんじゃない。)
この令嬢はアデレートが言っていた「レインの杖の修復を怖がった」杖修復士ではないようだが、この様子では恐らくレイン側からお断りされているのだろう。
レインが他の杖修復士を連れて来た時点で自覚してくれよ、とユミルは思うが、このタイプ、要するに家庭教師を付けていた令嬢は井の中の蛙になりやすいのだろうな、とも思った。
決して、ユミルが秀でている、という意味ではなく、レインのような超越した魔法使いは、世間一般では超エリートと言われる魔法局の魔法使いの実力でさえも満足しない、という意味である。
ユミルも小さな田舎町で天狗になっていた幼少期があるので、何とも言えない同情的な気持ちで令嬢を見やった。
「私にも雇用契約書上の義務がありまして…。それでは、失礼します。」
ユミルは困ったように眉を下げて答えると、これ以上の面倒はごめんだとばかりに、そのまま逃げるように部屋に滑り込んだ。
(もともと、外に出ても何もないとは思っていたけれど、尚更外に出るのが億劫になったわ…。)
ユミルはため息を吐きながら荷物を降ろすと、これからの滞在にさらに気が重くなった。
期限は、湧き出ている魔獣の討伐と、関与している魔法犯罪者の逮捕が終わるまでだ。
ユミルは心の底から早くこの事態が収拾することを祈った。
今回、このホテルは魔法局で貸し切っているらしい。
一部屋はレインがユミルのために抑えたらしく、魔法局職員と相部屋ではないことが唯一の心の救いといって良い。
ホテルは3階建てでこぢんまりとしているので、ユミルは自分の部屋のある2階に移動するとすぐに同じフロアにいた女性に気が付いた。先ほどユミルに鋭い視線を向けていた魔法局の杖修復士だ。杖修復士なので、巡回には同行しないようだ。
「貴女がユミル・アッシャーね。」
相手もユミルにすぐに気が付くと、ユミルに鋭い視線を向けてきた。
初対面から呼び捨てなんて、とユミルは思ったが愛想笑いを浮かべる。
年は近そうだが、魔法学園で見かけたことはない。
恐らく、貴族の令嬢で、学園には通わず家庭教師を付けていたタイプの魔法使いだろうとユミルはあたりを付ける。
「はい、私がユミルです。魔法局の皆様の遠征にご一緒させてもらうことになって恐れ多いですが、よろしくお願いいたします。」
「レイン様からお声をかけてもらったからって、調子に乗っているのかしら。魔法局にも入れない底辺魔法使いが、調子に乗らないでいただきたいわ。」
令嬢はユミルが頭から被っているコートを上から下まで見てから、苛立ちを露わにした。
ユミルがレインから貸してもらったコートは魔法局から支給される制服のようなものだ。
ユミルが遠征に来ていること自体も気に食わないのに、それを身に纏っていることが更に令嬢の癇に障ったらしい。しかもてるてる坊主のようなふざけた着方をしている。
(ここでレイン様から貸してもらった、などといえばさらに怒られるのは目に見えているな。)
カリカリとしている令嬢を前に、ユミルは下手なことを言わずに、曖昧な愛想笑いでその場を凌ごうとしたが、令嬢は更に言い募る。
「貴女の腕が如何程かは知らないけれど、杖修復士はわたくしひとりで十分よ!」
(…大丈夫じゃあないから、先日の事態が起きるんじゃない。)
この令嬢はアデレートが言っていた「レインの杖の修復を怖がった」杖修復士ではないようだが、この様子では恐らくレイン側からお断りされているのだろう。
レインが他の杖修復士を連れて来た時点で自覚してくれよ、とユミルは思うが、このタイプ、要するに家庭教師を付けていた令嬢は井の中の蛙になりやすいのだろうな、とも思った。
決して、ユミルが秀でている、という意味ではなく、レインのような超越した魔法使いは、世間一般では超エリートと言われる魔法局の魔法使いの実力でさえも満足しない、という意味である。
ユミルも小さな田舎町で天狗になっていた幼少期があるので、何とも言えない同情的な気持ちで令嬢を見やった。
「私にも雇用契約書上の義務がありまして…。それでは、失礼します。」
ユミルは困ったように眉を下げて答えると、これ以上の面倒はごめんだとばかりに、そのまま逃げるように部屋に滑り込んだ。
(もともと、外に出ても何もないとは思っていたけれど、尚更外に出るのが億劫になったわ…。)
ユミルはため息を吐きながら荷物を降ろすと、これからの滞在にさらに気が重くなった。
期限は、湧き出ている魔獣の討伐と、関与している魔法犯罪者の逮捕が終わるまでだ。
ユミルは心の底から早くこの事態が収拾することを祈った。
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