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第1章 就職と解雇
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エリックに杖の修復を依頼されてから2日後、ユミルは屍のようになっていた。
(すんごい疲れた…。)
確かに、損傷具合は先日のギルドの魔法騎士と同じ程度だったが、杖に馴染んでいる魔力量が桁違いで、綺麗につなぎ合わせるのに途方もない精神力を要するのだ。
作業はスコープを覗きながら行うが、瞬きすら作業の邪魔になるので、ユミルの瞳はすっかり乾ききっていた。それに、自分の呼吸のリズムでさえも指先に伝わってしまうようで、ユミルは度々息を止めながら作業をしていた。
ユミルは目を押さえて作業場のソファに横たわる。
「ユミル、大丈夫か?今からでもドウェル様に期日を延ばしてもらうようにお願いするかい?」
様子を見に来たジョンソンがユミルを気遣うように言うと、ユミルは力なく首を横に振った。
「私の我儘でこの件を引き受けたのです。頑張ります。」
ジョンソンはユミルの決意が高いことを察すると、それ以上は何も言わずに静かにその場を後にした。
それからも、ジョンソンは度々ユミルの様子を見に度々作業場にやってきたが、ユミルの作業の邪魔になると思ったのか、それ以外は作業場へあまり顔を出しておらず、自身が修復を担当する分は、ユミルが丁度休憩をしているときに作業をしているようだった。
(集中力が必要だから、配慮してもらえて、ありがたいわ。)
ユミルは痛む目を押さえながら、再び作業台へ向かう。
(一度引き受けた仕事だし、お店に瑕疵はつけられない。遅れないように頑張らないと。)
ユミルは深呼吸をして呼吸を整えた。
_____
そして、期日の昼過ぎ、ユミルはついに作業を完了させた。
(私史上最高の出来だわ…!)
ユミルがジョンソンに修復した杖を渡すと、ジョンソンは大層ユミルを褒めてくれたが、ユミルは疲れすぎていて、その言葉の半分も聞き取れなかった。
「店長、申し訳ないのですが、今日はもう休ませてもらっても良いですか?」
「ああ、そうしなさい。受け渡しは僕がやっておくよ。明日も休みなさい。」
ユミルは、本当はエリックが杖を試しに使うのを見たかったが、今も眩暈がしている。
立っているのがやっとだ。
ユミルは店の2階にある部屋に戻ると、そのまま死んだように眠りについた。
(すんごい疲れた…。)
確かに、損傷具合は先日のギルドの魔法騎士と同じ程度だったが、杖に馴染んでいる魔力量が桁違いで、綺麗につなぎ合わせるのに途方もない精神力を要するのだ。
作業はスコープを覗きながら行うが、瞬きすら作業の邪魔になるので、ユミルの瞳はすっかり乾ききっていた。それに、自分の呼吸のリズムでさえも指先に伝わってしまうようで、ユミルは度々息を止めながら作業をしていた。
ユミルは目を押さえて作業場のソファに横たわる。
「ユミル、大丈夫か?今からでもドウェル様に期日を延ばしてもらうようにお願いするかい?」
様子を見に来たジョンソンがユミルを気遣うように言うと、ユミルは力なく首を横に振った。
「私の我儘でこの件を引き受けたのです。頑張ります。」
ジョンソンはユミルの決意が高いことを察すると、それ以上は何も言わずに静かにその場を後にした。
それからも、ジョンソンは度々ユミルの様子を見に度々作業場にやってきたが、ユミルの作業の邪魔になると思ったのか、それ以外は作業場へあまり顔を出しておらず、自身が修復を担当する分は、ユミルが丁度休憩をしているときに作業をしているようだった。
(集中力が必要だから、配慮してもらえて、ありがたいわ。)
ユミルは痛む目を押さえながら、再び作業台へ向かう。
(一度引き受けた仕事だし、お店に瑕疵はつけられない。遅れないように頑張らないと。)
ユミルは深呼吸をして呼吸を整えた。
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そして、期日の昼過ぎ、ユミルはついに作業を完了させた。
(私史上最高の出来だわ…!)
ユミルがジョンソンに修復した杖を渡すと、ジョンソンは大層ユミルを褒めてくれたが、ユミルは疲れすぎていて、その言葉の半分も聞き取れなかった。
「店長、申し訳ないのですが、今日はもう休ませてもらっても良いですか?」
「ああ、そうしなさい。受け渡しは僕がやっておくよ。明日も休みなさい。」
ユミルは、本当はエリックが杖を試しに使うのを見たかったが、今も眩暈がしている。
立っているのがやっとだ。
ユミルは店の2階にある部屋に戻ると、そのまま死んだように眠りについた。
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