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第4章 ユリウスの自覚(その1)
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(やってしまった…。)
ルフェルニアは自分の席に戻らず、お手洗いに籠って激しく落ち込んでいた。
仕事の話しをひとつもせずに感情的に飛び出してしまったこともそうだが、何よりユリウスを傷つけるような物言いをしてしまった。
ルフェルニアはフラれたことを除いては、ユリウスから傷つけられたことが一度もないどころか、真綿に包むように大切にされていたため、喧嘩をしたことなど一度もなかった。
でも、ルフェルニアは自分が100%悪いとは、どうしても思えなかった。ギルバートとの間に何かがあるわけではないが、フッたくせに、交友関係に口出ししてくるなんて、と思ってしまうのだ。
ルフェルニアは少し呼吸を整えると、のそのそと自分の席に戻った。
「ルフェ、先ほど守衛から伝言を預かったわ。マーサさんという方がいらっしゃったらしくて、終業後に植物局の前に馬車を回します、と言っていたのだけれど、心当たりはある?」
ミシャはルフェルニアが戻ったことを確認すると、声をかけた。
「マーサね。わかった、ありがとう。」
「中まで馬車を乗り入れられるなんて、どんなお知り合いなの?」
「マーサはテーセウス王国への出張中にお会いした方の侍女なの。」
ルフェルニアはここまで答えて、はっとした。
(ということは、あの馬車が植物局の前に乗り入れるのを、皆に見られるの…?)
あの馬車を見れば、王宮の文官はすぐにノア公国の馬車であることに気づくだろう。
それに、ユリウスも目にするかもしれない。
ルフェルニアはますます心が重たくなった。
「じゃあ、本当にテーセウス王国で良い人を捕まえてきたのね!」
「そんなんじゃないわよ!後で話しが回ってくると思うけれど、テーセウス王国のノア公国にある土地の調査を頼まれただけよ。」
「それなら、先ほどルフェが席を外している間にベンジャミン様からお話があったわ。ノア大公が暫く滞在されることも。じゃあ、会いに来られる方はその大公様なのね!ルフェ、すごいわ。」
ミシャが周りを気にしながらも、はしゃぐように声を上げた。
「お仕事の関係でお話しがあるだけよ。私は隣国の、しかも子爵家なのだし…。ユリウス様も何を勘違いしたのか、根掘り葉掘り聞いてこられて、大変だったんだから!」
「まぁ!ルフェをフッておいて、それはお門違いじゃない。そんなの無視よ、無視。」
ミシャはユリウスの煮え切らない態度に思うところがあるため、冷たく言い放った。
「でも、心配してくれているのだろうし…。」
「ユリウス様はルフェのことになると過干渉すぎるのよ。でも、良かった。仕事繋がりだろうと、ルフェがユリウス様以外の男性と会うような機会があって。」
確かに、ルフェルニアはユリウスとサムエル以外の男性と仕事の時間以外に待ち合わせの約束をしたことが無い。
それに、サムエルと会うときは大体ミシャが一緒だ。
一方ミシャは学園を卒業してからというもの、色々な局の文官や武官と数多のお付き合いを経て、今は魔法局の文官と付き合っているらしい。ちなみに、魔法局の大多数は魔獣討伐等に対応する武官だが、魔法を研究する文官が少数在籍している。魔法局の文官は特に変わり者揃いと聞くが、ミシャの恋人もかなり変わった方らしい。
「まぁ、ユリウス様離れという意味では、意味があるかもしれないけれど…。」
「そうよ。まずはユリウス様以外にどんな男性がいるのか、知るところから始めるべきだわ。」
「ありがとう、ミシャ先生。参考になります。」
(恋多き乙女、ミシャが言うのだから、きっと間違いないわ。)
ルフェルニアは少し憂鬱に思いながらも漸く業務に手を付けた。
ルフェルニアは自分の席に戻らず、お手洗いに籠って激しく落ち込んでいた。
仕事の話しをひとつもせずに感情的に飛び出してしまったこともそうだが、何よりユリウスを傷つけるような物言いをしてしまった。
ルフェルニアはフラれたことを除いては、ユリウスから傷つけられたことが一度もないどころか、真綿に包むように大切にされていたため、喧嘩をしたことなど一度もなかった。
でも、ルフェルニアは自分が100%悪いとは、どうしても思えなかった。ギルバートとの間に何かがあるわけではないが、フッたくせに、交友関係に口出ししてくるなんて、と思ってしまうのだ。
ルフェルニアは少し呼吸を整えると、のそのそと自分の席に戻った。
「ルフェ、先ほど守衛から伝言を預かったわ。マーサさんという方がいらっしゃったらしくて、終業後に植物局の前に馬車を回します、と言っていたのだけれど、心当たりはある?」
ミシャはルフェルニアが戻ったことを確認すると、声をかけた。
「マーサね。わかった、ありがとう。」
「中まで馬車を乗り入れられるなんて、どんなお知り合いなの?」
「マーサはテーセウス王国への出張中にお会いした方の侍女なの。」
ルフェルニアはここまで答えて、はっとした。
(ということは、あの馬車が植物局の前に乗り入れるのを、皆に見られるの…?)
あの馬車を見れば、王宮の文官はすぐにノア公国の馬車であることに気づくだろう。
それに、ユリウスも目にするかもしれない。
ルフェルニアはますます心が重たくなった。
「じゃあ、本当にテーセウス王国で良い人を捕まえてきたのね!」
「そんなんじゃないわよ!後で話しが回ってくると思うけれど、テーセウス王国のノア公国にある土地の調査を頼まれただけよ。」
「それなら、先ほどルフェが席を外している間にベンジャミン様からお話があったわ。ノア大公が暫く滞在されることも。じゃあ、会いに来られる方はその大公様なのね!ルフェ、すごいわ。」
ミシャが周りを気にしながらも、はしゃぐように声を上げた。
「お仕事の関係でお話しがあるだけよ。私は隣国の、しかも子爵家なのだし…。ユリウス様も何を勘違いしたのか、根掘り葉掘り聞いてこられて、大変だったんだから!」
「まぁ!ルフェをフッておいて、それはお門違いじゃない。そんなの無視よ、無視。」
ミシャはユリウスの煮え切らない態度に思うところがあるため、冷たく言い放った。
「でも、心配してくれているのだろうし…。」
「ユリウス様はルフェのことになると過干渉すぎるのよ。でも、良かった。仕事繋がりだろうと、ルフェがユリウス様以外の男性と会うような機会があって。」
確かに、ルフェルニアはユリウスとサムエル以外の男性と仕事の時間以外に待ち合わせの約束をしたことが無い。
それに、サムエルと会うときは大体ミシャが一緒だ。
一方ミシャは学園を卒業してからというもの、色々な局の文官や武官と数多のお付き合いを経て、今は魔法局の文官と付き合っているらしい。ちなみに、魔法局の大多数は魔獣討伐等に対応する武官だが、魔法を研究する文官が少数在籍している。魔法局の文官は特に変わり者揃いと聞くが、ミシャの恋人もかなり変わった方らしい。
「まぁ、ユリウス様離れという意味では、意味があるかもしれないけれど…。」
「そうよ。まずはユリウス様以外にどんな男性がいるのか、知るところから始めるべきだわ。」
「ありがとう、ミシャ先生。参考になります。」
(恋多き乙女、ミシャが言うのだから、きっと間違いないわ。)
ルフェルニアは少し憂鬱に思いながらも漸く業務に手を付けた。
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