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第3章 外国出張
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テーセウス王国までの道のりは、ガイア王国との両国間の行き来が盛んになってから、きれいに整備されていた。
街と自然が繰り返し現れる道の景色はルフェルニアを楽しませた。
ガイア王国内の国境付近の街で1泊し、国境を過ぎた後、馬車は何もないだだっ広い大地の中を走っていた。
「この広い土地はちゃんと雨も降っていそうなのに、何も植物がないのですね、どうしてなのでしょう?」
ルフェルニアが馬車の中から御者に尋ねる。
「ここはテーセウス王国で一番大きいノア公国の端です。
この一帯は”呪いの地”といわれて、何の作物も育たないので、ただの更地のまま残されているのです。気候は悪くないんですけれどね。」
ガイア王国は国内全域を王が治めている。一方でテーセウス王国は、ガイア王国の2倍ほどの国土があり、貴族の権力も強いため、一部の地域では貴族の自治が認められ、いくつかの公国が属する形になっている。
「そう、せっかく拓けているからいろいろと使えそうなのに...。」
「ノア公国には、収入源も人が暮らす場所も豊かにありますから、わざわざこの大地に頼らなくても良いのでしょう。大公は代々優秀な方が多く、上手く大きい公国を治めています。この大地からは想像できないほど、公都は栄えていますよ。」
ルフェルニアはこの土地が使われていないことを残念に思ったが、ノア公国は国の土地の一部を放っておけるほど豊からしい。
「最近、ノア公国では大公の代替わりがあったのですが、次の大公も大層優秀な方ですよ。少し前までは王都の騎士団の団長を担っていたので、私もお見かけしたことがございます。」
護衛の騎士が口を挟むと、ルフェルニアも興味深そうにその話を聴いた。
「そうですが、そんなにすごい方が治められている都なら、いつか、ぜひひと目見てみたいものです。」
「ええ、ぜひ。今回はテーセウス王国の王都まで最短の道でご案内するので通りませんが、公都はここから比較的近いところにございます。ガイア王国との国境にも近いので、王都から帝都に行くまでの半分ほどの時間でつくと思いますよ。」
ルフェルニアは騎士から聞いたことを心に留めると、再び今走っているだだっ広い土地を見つめた。
(いつかノア公国にいって、今走っている大地の土壌の性質を調べてみたいわ。テーセウス王国の王都へ行ったら、ノア公国に繋がりのある方と、お知り合いになれるかしら?)
明日の夕刻になれば、帝都に到着する予定だ。
ルフェルニアは窓からのぞく景色から目線を外し、持参した資料に再び目を通し始めた。
ルフェルニアは今回、テーセウス王国の学園の生徒に、植物学の必要性などを1週間の集中講義の形式で説明することになっている。
テーセウス王国は、北の地に多く魔獣が発生するため、それに対抗すべく軍事に長けた国だ。産業も非常に発達しているが、農作物や薬草に関する研究はガイア王国の方が先進している。
テーセウス王国は幅広い分野の人材の育成に力を入れているため、今般ガイア王国へ植物学の必要性に関する講義を担当する者の派遣を依頼したのだった。さらに、女性の社会進出も両国間の議論で活発に上げられる課題のひとつだったため、ルフェルニアに白羽の矢が立ったのだ。
ルフェルニアは、ガイア王国の王立学園の生徒に、職場紹介という形で植物局の案内をしたことはあるが、講義をするのは初めてだ。
当日はきっと緊張で話すことが飛んでしまうに違いない、とルフェルニアは馬車の中で何度も何度も資料を読み返した。
街と自然が繰り返し現れる道の景色はルフェルニアを楽しませた。
ガイア王国内の国境付近の街で1泊し、国境を過ぎた後、馬車は何もないだだっ広い大地の中を走っていた。
「この広い土地はちゃんと雨も降っていそうなのに、何も植物がないのですね、どうしてなのでしょう?」
ルフェルニアが馬車の中から御者に尋ねる。
「ここはテーセウス王国で一番大きいノア公国の端です。
この一帯は”呪いの地”といわれて、何の作物も育たないので、ただの更地のまま残されているのです。気候は悪くないんですけれどね。」
ガイア王国は国内全域を王が治めている。一方でテーセウス王国は、ガイア王国の2倍ほどの国土があり、貴族の権力も強いため、一部の地域では貴族の自治が認められ、いくつかの公国が属する形になっている。
「そう、せっかく拓けているからいろいろと使えそうなのに...。」
「ノア公国には、収入源も人が暮らす場所も豊かにありますから、わざわざこの大地に頼らなくても良いのでしょう。大公は代々優秀な方が多く、上手く大きい公国を治めています。この大地からは想像できないほど、公都は栄えていますよ。」
ルフェルニアはこの土地が使われていないことを残念に思ったが、ノア公国は国の土地の一部を放っておけるほど豊からしい。
「最近、ノア公国では大公の代替わりがあったのですが、次の大公も大層優秀な方ですよ。少し前までは王都の騎士団の団長を担っていたので、私もお見かけしたことがございます。」
護衛の騎士が口を挟むと、ルフェルニアも興味深そうにその話を聴いた。
「そうですが、そんなにすごい方が治められている都なら、いつか、ぜひひと目見てみたいものです。」
「ええ、ぜひ。今回はテーセウス王国の王都まで最短の道でご案内するので通りませんが、公都はここから比較的近いところにございます。ガイア王国との国境にも近いので、王都から帝都に行くまでの半分ほどの時間でつくと思いますよ。」
ルフェルニアは騎士から聞いたことを心に留めると、再び今走っているだだっ広い土地を見つめた。
(いつかノア公国にいって、今走っている大地の土壌の性質を調べてみたいわ。テーセウス王国の王都へ行ったら、ノア公国に繋がりのある方と、お知り合いになれるかしら?)
明日の夕刻になれば、帝都に到着する予定だ。
ルフェルニアは窓からのぞく景色から目線を外し、持参した資料に再び目を通し始めた。
ルフェルニアは今回、テーセウス王国の学園の生徒に、植物学の必要性などを1週間の集中講義の形式で説明することになっている。
テーセウス王国は、北の地に多く魔獣が発生するため、それに対抗すべく軍事に長けた国だ。産業も非常に発達しているが、農作物や薬草に関する研究はガイア王国の方が先進している。
テーセウス王国は幅広い分野の人材の育成に力を入れているため、今般ガイア王国へ植物学の必要性に関する講義を担当する者の派遣を依頼したのだった。さらに、女性の社会進出も両国間の議論で活発に上げられる課題のひとつだったため、ルフェルニアに白羽の矢が立ったのだ。
ルフェルニアは、ガイア王国の王立学園の生徒に、職場紹介という形で植物局の案内をしたことはあるが、講義をするのは初めてだ。
当日はきっと緊張で話すことが飛んでしまうに違いない、とルフェルニアは馬車の中で何度も何度も資料を読み返した。
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