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第2章 過去のふたり
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ユリウスが高熱を出したときから半年が経ったころ、ユリウスは再び自分で歩けるほどに回復していた。
医者から聞いた話だが、どうやら、投薬により徐々に魔力放出に必要な気道のようなものが確保されつつあるらしい。
最近はルフェルニアのグリーンハウス内でお茶をして過ごすのがルフェルニアとユリウスの2人の日課だ。
「ユリウス、近くの小山に雪が積もったみたいなの。一緒にソリを持って出かけましょうよ!」
「冬は寒いから、嫌だなぁ。」
「ユリウスは魔法で氷を作るのが得意なのに、寒いのが苦手だなんて、変なの。」
ルフェルニアは口を尖らせる。
「じゃあ、いいわ。アルと一緒に行ってくる。」
ルフェルニアの弟・アルウィンは7歳で、ルフェルニアとは5歳差だ。最近は母・トルメアの手を離れ、ルフェルニアと一緒に居ることが多くなった。
「行かないなんて、言っていないよ。」
ユリウスは相変わらず無表情だが、子供に話しかけるような優しげな声で話す。
病気が回復に向かってから、ユリウスは以前と比べて饒舌になった。
「アルウィンとは、僕が勉強中の時間だって、遊べるだろう?」
ユリウスは次の春に王都の王立学園高等部への進学を目指している。もう少し療養して様子を見ては、とユリウスの両親は進めたが、「次の春は丁度同じ年の令息、令嬢が入学する年だから、それに遅れず入学したい。」というユリウスのたっての希望があったからだ。
王立学園の高等部は、上流貴族しか通わない小等部・中等部と異なり、特待生制度もあり国内全域から入学者を募るため、その競争倍率は年々跳ね上がっている。
ユリウスは、来月王都で入学試験を受けることになっているので、子爵家に家庭教師を呼び、1日の大半を勉学に費やしている。
ルフェルニアも将来のために必要最低限の勉強はしているが、その時間は雲泥の差だ。
ユリウスに朝から晩までくっついていることができなくなったルフェルニアは、すっかり退屈…、と思いきや、最近は弟アルウィンがルフェルニアに四六時中ついて回るようになった。
可愛いもの好きのルフェルニアは、すっかり弟の可愛さに心を奪われてしまっている。
ユリウスとのお茶会にもついてこようとするので、ユリウスはミネルウァ家から連れてきた侍女を使って、この時間にアルウィンがグリーンハウスに来ないよう足止めをしてもらっていた。もちろんルフェルニアには内緒だ。
「でも、ユリウスは入学試験が近いのでしょう?」
「少しくらい大丈夫だよ。先生から試験は問題ないだろうってお墨付きをもらっているし。」
「そう…。入学試験は来月よね、その…体調の方は大丈夫?」
少し拗ねたようにしていたルフェルニアだが、王都で行われる入学試験のことを思い出し、眉を下げる。
「良くなっているし、大丈夫。今は薬の量も半分に減っているし、徐々に魔法の練習だって出来ているのだから。」
ユリウスは元気なことをアピールするように、ティーカップに入っている紅茶を魔法でゆらゆらと揺らしてみせた。
それを見てほっとしたように息をついたルフェルニアだったが、ユリウスが元気になって学園に通うということは、もう子爵領で一緒に過ごすことができないということだ。
ここ最近、ルフェルニアは来たるユリウスとの別れをよく考えるようになっていた。
「寂しいけれど、ユリウスが元気になったことを喜ばなくては」と考えたルフェルニアは、少し気が早いが、ユリウスに餞別の品を用意していた。
「ユリウス、お別れの品としては早いのだけれど…、これを貰ってくれる?」
ルフェルニアが差し出したのは、華奢な美しい黒い髪飾りだった。
上部は髪を押さえられるようピンが付いていて、その下には細長い棒状の飾りが3本ぶら下がるようについていた。
長さの異なる3本の飾りがぶつかると、僅かにシャラシャラと音が鳴る。シラー領の自然豊かな森で聞こえるせせらぎを思わせる音だ。
この材質は比較的高価なもので、ルフェルニアの一生懸命貯めたお小遣いだけでは到底足りず、オットマーに援助してもらったのはルフェルニアの心のうちに留めておく。
「ほら、ユリウスって何かを書いたり、本を読んだりするときに左側の髪の毛を良く耳にかけて押さえるでしょう?押さえられるものがあると良いかな…と思って…。」
ユリウスは驚いたようにいっとき間を空けると、嬉しそうに少しだけ微笑んだ。
「ありがとう、とっても嬉しいよ。色が黒色なのは、ルフェルニアの色だから?」
「違う、違うよ!!その材料はこの領地で取れる珍しい金属だって聞いて、作ってもらっただけだもん!!」
ユリウスの声に揶揄うような雰囲気を感じて、ルフェルニアは慌てて否定する。
「それに!今思えば、勉強中にこの飾りの部分は邪魔だったよね…。工房の方に見せてもらったデザインではこれが一番気に入ったのだけれど…、まだお別れまで時間もあるし、別のものを用意するわ。」
すっかり後ろ向きの気持ちになってしまったルフェルニアは、差し出した手を引っ込めようとすると、すかさずユリウスがその手をつかんだ。
「ううん。それが良い。ルフェ、僕につけて?」
「…本当に?」
「うん。本当。」
「…さっき揶揄ったくせに。」
「ごめんね、その髪飾りを見たら、ルフェルニアを連想したから。逆に嬉しいよ。」
ルフェルニアはゆっくり立ち上がるとユリウスに近づいた。
ルフェルニアは髪飾りを留めようと、ユリウスの髪に触ると、思った以上にふわふわでさらさらで、目的を忘れて思わず髪を梳いてしまいたくなった。
髪飾りを留めて、ユリウスの正面に戻ると機嫌の良さそうなユリウスの表情が見えた。
(やっぱり、想像したとおりお人形さんみたいに可愛いユリウスにぴったり似合っているわ!)
髪飾りはユリウスの左側に流れていた髪の毛を留め、飾りの部分は耳の下でゆらゆらと揺れていた。ユリウスの髪が真っ白に輝いているだけあって、黒色の髪飾りがとても映えている。
「ルフェ、もし合格して王都に行ったらたくさん手紙を書くね。
僕も寂しいけど、いつか僕と同じように病気で苦しむ子を救ってあげたい。
僕にはルフェがいたみたいにね。そのために、学園に通うんだ。
少し前の僕には考えもできなかったことだよ。ルフェ、本当にありがとう。」
ユリウスがそう言うと、ルフェルニアは嬉しそうに破顔して言った。
「こちらこそ素敵な時間をありがとう。私たちはこれからもずっと一緒よ。」
医者から聞いた話だが、どうやら、投薬により徐々に魔力放出に必要な気道のようなものが確保されつつあるらしい。
最近はルフェルニアのグリーンハウス内でお茶をして過ごすのがルフェルニアとユリウスの2人の日課だ。
「ユリウス、近くの小山に雪が積もったみたいなの。一緒にソリを持って出かけましょうよ!」
「冬は寒いから、嫌だなぁ。」
「ユリウスは魔法で氷を作るのが得意なのに、寒いのが苦手だなんて、変なの。」
ルフェルニアは口を尖らせる。
「じゃあ、いいわ。アルと一緒に行ってくる。」
ルフェルニアの弟・アルウィンは7歳で、ルフェルニアとは5歳差だ。最近は母・トルメアの手を離れ、ルフェルニアと一緒に居ることが多くなった。
「行かないなんて、言っていないよ。」
ユリウスは相変わらず無表情だが、子供に話しかけるような優しげな声で話す。
病気が回復に向かってから、ユリウスは以前と比べて饒舌になった。
「アルウィンとは、僕が勉強中の時間だって、遊べるだろう?」
ユリウスは次の春に王都の王立学園高等部への進学を目指している。もう少し療養して様子を見ては、とユリウスの両親は進めたが、「次の春は丁度同じ年の令息、令嬢が入学する年だから、それに遅れず入学したい。」というユリウスのたっての希望があったからだ。
王立学園の高等部は、上流貴族しか通わない小等部・中等部と異なり、特待生制度もあり国内全域から入学者を募るため、その競争倍率は年々跳ね上がっている。
ユリウスは、来月王都で入学試験を受けることになっているので、子爵家に家庭教師を呼び、1日の大半を勉学に費やしている。
ルフェルニアも将来のために必要最低限の勉強はしているが、その時間は雲泥の差だ。
ユリウスに朝から晩までくっついていることができなくなったルフェルニアは、すっかり退屈…、と思いきや、最近は弟アルウィンがルフェルニアに四六時中ついて回るようになった。
可愛いもの好きのルフェルニアは、すっかり弟の可愛さに心を奪われてしまっている。
ユリウスとのお茶会にもついてこようとするので、ユリウスはミネルウァ家から連れてきた侍女を使って、この時間にアルウィンがグリーンハウスに来ないよう足止めをしてもらっていた。もちろんルフェルニアには内緒だ。
「でも、ユリウスは入学試験が近いのでしょう?」
「少しくらい大丈夫だよ。先生から試験は問題ないだろうってお墨付きをもらっているし。」
「そう…。入学試験は来月よね、その…体調の方は大丈夫?」
少し拗ねたようにしていたルフェルニアだが、王都で行われる入学試験のことを思い出し、眉を下げる。
「良くなっているし、大丈夫。今は薬の量も半分に減っているし、徐々に魔法の練習だって出来ているのだから。」
ユリウスは元気なことをアピールするように、ティーカップに入っている紅茶を魔法でゆらゆらと揺らしてみせた。
それを見てほっとしたように息をついたルフェルニアだったが、ユリウスが元気になって学園に通うということは、もう子爵領で一緒に過ごすことができないということだ。
ここ最近、ルフェルニアは来たるユリウスとの別れをよく考えるようになっていた。
「寂しいけれど、ユリウスが元気になったことを喜ばなくては」と考えたルフェルニアは、少し気が早いが、ユリウスに餞別の品を用意していた。
「ユリウス、お別れの品としては早いのだけれど…、これを貰ってくれる?」
ルフェルニアが差し出したのは、華奢な美しい黒い髪飾りだった。
上部は髪を押さえられるようピンが付いていて、その下には細長い棒状の飾りが3本ぶら下がるようについていた。
長さの異なる3本の飾りがぶつかると、僅かにシャラシャラと音が鳴る。シラー領の自然豊かな森で聞こえるせせらぎを思わせる音だ。
この材質は比較的高価なもので、ルフェルニアの一生懸命貯めたお小遣いだけでは到底足りず、オットマーに援助してもらったのはルフェルニアの心のうちに留めておく。
「ほら、ユリウスって何かを書いたり、本を読んだりするときに左側の髪の毛を良く耳にかけて押さえるでしょう?押さえられるものがあると良いかな…と思って…。」
ユリウスは驚いたようにいっとき間を空けると、嬉しそうに少しだけ微笑んだ。
「ありがとう、とっても嬉しいよ。色が黒色なのは、ルフェルニアの色だから?」
「違う、違うよ!!その材料はこの領地で取れる珍しい金属だって聞いて、作ってもらっただけだもん!!」
ユリウスの声に揶揄うような雰囲気を感じて、ルフェルニアは慌てて否定する。
「それに!今思えば、勉強中にこの飾りの部分は邪魔だったよね…。工房の方に見せてもらったデザインではこれが一番気に入ったのだけれど…、まだお別れまで時間もあるし、別のものを用意するわ。」
すっかり後ろ向きの気持ちになってしまったルフェルニアは、差し出した手を引っ込めようとすると、すかさずユリウスがその手をつかんだ。
「ううん。それが良い。ルフェ、僕につけて?」
「…本当に?」
「うん。本当。」
「…さっき揶揄ったくせに。」
「ごめんね、その髪飾りを見たら、ルフェルニアを連想したから。逆に嬉しいよ。」
ルフェルニアはゆっくり立ち上がるとユリウスに近づいた。
ルフェルニアは髪飾りを留めようと、ユリウスの髪に触ると、思った以上にふわふわでさらさらで、目的を忘れて思わず髪を梳いてしまいたくなった。
髪飾りを留めて、ユリウスの正面に戻ると機嫌の良さそうなユリウスの表情が見えた。
(やっぱり、想像したとおりお人形さんみたいに可愛いユリウスにぴったり似合っているわ!)
髪飾りはユリウスの左側に流れていた髪の毛を留め、飾りの部分は耳の下でゆらゆらと揺れていた。ユリウスの髪が真っ白に輝いているだけあって、黒色の髪飾りがとても映えている。
「ルフェ、もし合格して王都に行ったらたくさん手紙を書くね。
僕も寂しいけど、いつか僕と同じように病気で苦しむ子を救ってあげたい。
僕にはルフェがいたみたいにね。そのために、学園に通うんだ。
少し前の僕には考えもできなかったことだよ。ルフェ、本当にありがとう。」
ユリウスがそう言うと、ルフェルニアは嬉しそうに破顔して言った。
「こちらこそ素敵な時間をありがとう。私たちはこれからもずっと一緒よ。」
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