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帝国編

好奇心は何とやら

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 闘技場乱入・・・レイブンの日から4日ほど過ぎた頃、宿で新装備の構想を練っているとバサバサとカラスに変身(強制)したレイブンが部屋を不器用に飛び回っているのです。
「カァ カァ カ・・・あ、普通に声出せたわ・・・ホンマになぁ、上手く飛べへんわ」
「そうなのですか・・・?翼の扱いは天使的に長けていると思っていたのですよ」
 闘技場の事を思い出してみると、羽ばたいては飛んでいなかったですが・・・ブーストの効果音が聞こえそうな程に。
 空いている椅子から机に乗っては飛び、フラフラと滑空して再度・・・と飛べていないカラスを見るのは新鮮ではあるのです。
「ご友人が市場に行ってるのに、あんさんはつき合わず何書いとるん・・・字きったないなぁ、線も歪んどる」
「利き手ではないので勘弁なのです、まあ右手で書いてもあまり変わらないのですが」
 少し火にあぶられた(自爆)だけと悠長に自然治癒を待っていたら、思いのほか回復しきらないのです・・・大人しくミリーに回復魔導術をお願いすればよかったと後悔しているのです。
 皮膚表面に跡は残ってないからいいのですが、若干つっぱる感じが・・・お湯がしみるのが難点なのです。
「武器にしては珍妙な造形やな、装備に椅子っぽいの付ける必要あるんか・・・そういえばあんさんの装備、この部屋で見掛けへんのやけど?」
「普段は王都の自宅倉庫に保管しているのです、必要な時は転送する・・・のはいいとして、設計段階で収納限界を迎えたのです」
 単体で完結しつつ、ジオとも組み合わせる前提だと少々場所を取りすぎるですね・・・制作自体は保留なのです。
「うちとの戦闘時もその転送やったんか、そこまでできて神器ちゃうねんな・・・杖以外は普通の素材みたいだったようやし」
「神器は転送が可能と聞こえるですね・・・そうであるのなら、レイブンの聖剣擬きも完成度が高かったのですね、見間違えでないのなら光月から一瞬で飛んできた感じだったのです」
「うちが丹精込めて製精錬した光月鉱石・・・こっちではベンタルミナと称されてんな、数百年があんさんの一撃でパァやで」
 手の平サイズの宝石1つに数百年・・・時間の使い方が贅沢なのです、高次存在だからなのか、はたまたリアと同じように持て余していたのか・・・両方かもですが。
「そこ数日アイリはんやフィアはんを見て思うたんわ、ヘーリオス様が創造した神器・・・物理的な触媒がなくとも存在しているっちゅうんは流石の一言や」
「そういえば天陽の神様も名前があるのですね、リアの話では高次元体が自我を保っているのも稀と聞いた気がするのですが」
「うちの親友で三大天が1体・・・セラフが神の啓示を受け取るんやけど、改めて考えると、うちもアイビスも直接拝謁した事なかったんやな・・・初めて気ぃ付いたわぁ」
 察するに天陽の神に一番近い3体の天使と言った所ですかね・・・親友と呼ぶのなら、レイブンもその内の1体だったようなのです。
 実体を確認した事がないということは、その神様が天陽の核になっているコーザル体かもですが、リアがこの地上に降り立った際に干渉しないという判断も啓示という形で伝えたのですかね。


 〔一方その頃のレナ一行〕
 帝国西鉱山の通商隧道での討伐依頼を完遂して帝都に戻って・・・なんだかんだ1週間、学院サボってまで行くんじゃなかったね。
「レナといると退屈しないぜ・・・誉めてないからな、ルミやトールなんて精根尽き果ててるしな」
「私達が卒業単位取り終えたの見計らったかのように遠出の依頼持ってくるんだもん・・・ブレウだけは退屈しのぎだってやる気あったみたいだけどぉ」
「悪かったと思っているよ、市場で何でも奢る・・・フレイアの会計もしばらくは私持ちでいいから」
(反省した様子が感じられないのである、トール氏の声など枯れ果ててしまっているのである)
(高速詠唱の代償というかなんというか、共和国の依頼が何で帝都にまで出回っていたのか納得ではあったよ)
 れぷりかーぜ?の討伐とか聞き馴染みない依頼に興味そそられて受けたけど、学院の魔物関連の授業でそういった名称は出た試しがないのは気になるね・・・あれだけ数がいたのに初めて見る魔物だったよ。
(そうであったか、迷いなく中心の核を貫いていたようであるが・・・妙な手応えではあったな)
 単体は弱いのに報酬はなかなか・・・その理由も核の脆さが関係してるのかもね、粉々になるから回収し難いと。
「ジュベレール鉱山まで行こうとしたから焦ったよ、レナとブレウは余裕だったんだろうけど・・・」
「いや、俺も勘弁だぜ・・・あんな群集体の極みな魔物、一撃で倒せてもきりないぜ・・・まあ全滅させれる範囲だったからいいけどよ」
「ほんどだよ・・・おがげで声が、しばらぐは詠唱じだくないね・・・」
 西鉱山・・・いわゆるヴェルガリア帝国所有鉱山と、隣合わせのジュベレール鉱山、その間に中心街があるけど立ち寄る前に帰ってきたね。
「ミスリルの槍も不完全燃焼だよ・・・違うか、フィオナと関わってから変な言葉使いが移ったよ・・・槍は普通燃えたりしないし」
「そういえばフィオナちゃん最近見掛けないね、帝都には居るんだよね?」
「ミリー達とはちょくちょく会うんだけどね、フィオナは何か作り始めると部屋から出ないらしいよ・・・と言っていたら、ミリー達が市場に来てるようだね」
「フィオナちゃんはいないようだけどな、小さくて見えないとかでもないようだぜ・・・あの杖だけはやたら目立つしな」
「まあ普段持ち歩いていないけどね、魔導師冒険者であんなに呑気な子もいないよ」
(それはそれとして、数日前の違和感でも聞くとしよう、帝都内に異変もないように見えるとはいえども)
(夜営してる時に感じたと言っていたね、時間感覚が盛大にズレたと・・・ヴェルトールの気のせいじゃないの?)
(そんなはずはない、意識はあるのに周囲が完全に静止していたのである・・・レナに語りかけても、まったく反応がなかったのだぞ?)
 私達が寝ていたのならともかく、ヴェルトールがいきなり時間がどうとか言い出して・・・結局、何のことか分からなかったけどね。
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