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帝国編
現実で起きている事が全てなのです
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ユラとアイリが援護に行っていた第2町側の浜辺で強靭体が3体出現したらしい、が、それはそれとして私は食堂に向かって飛んでいた。
兄のアスト・ウィクトールがいるならあそこにいるのは王国第二騎士団ということになる、話の途中でアイリが再度兄の方に向かったのでまあ大丈夫だろう。
腹が減っては何とやら・・・不動のジオさんなんてあだ名がつけられる前に弁解をし、建物の手前に着地する。
趣のある・・・と言いたいところだが、とても古い木製の扉は表面の木々が所々剥げている、店を畳んだと聞かされていたら信じるだろう。
トントンと叩き、ギギィと軋みながら扉を開けると閑散とした空間が広がっている。
「こんな時間にすみません~やってます~?」
「この静寂・・・随分早く片付いたようだねぇ、いつもより魔物達の数が少なかったのかい?」
お婆さんと聞いていたが、40代と聞かされていたのなら疑わないであろう見た目の女性だった。
背筋はしっかり伸び印象よりも身長は高く見える、魔物が少ないかどうかの質問に答えるついでに現象化させた薄い石板にワニ肉を乗せる。
「鰐人型の強靭体が5体?だったと思うのです、このお肉は調理できるのです?」
「あ、ああ・・・それにしてもちっこい子だねぇ、ここは子供が気軽に立ち寄る地域じゃないよ?」
石造りのカウンターから鰐肉を渡すと出刃包丁より長い短剣で華麗に捌いていく、ミスリル製のようだが・・・調理用には見えない事から元短剣使いなのだろうか。
「私はフィオナ・ウィクトールです、実に使い慣れた短剣捌きなのです」
「あたしゃティシーさ、いい目をしてるじゃないかお嬢ちゃん」
鉄のフライパンにジュゥゥという音とローズマリーのような香りで美味であろうと確信し、お食べと出された香草焼きを再度匂いで楽しむ。
「食わず嫌いではなかったのですが、魔物の肉も中々に美味なのです」
「鰐人型の肉は脂が乗ってるからねぇ、しかしこいつが5体も出現した上での討伐速度・・・加勢に来た冒険者は相当な実力者のようだねぇ」
軽く経緯を説明しながら香草焼きを食べる、ティシーさんはミリー達4人の実力に頷く・・・私とジオの事はどう話すべきかと考えていると。
「膝に乗せてる杖を見れば分かるさね、丸々ディオールの素材など扱いが難しいだろうに・・・魔導術を行使する前に魔力切れしないかい?」
難しい以前に実は扱えていないとは言えず、ティシーさんと世間話をしていたその時。
キュァァァァォォォンッ!!
「?」「初めて聞く音だねぇ・・・・・・鳴き声・・・なのかねぇ?」
意識をジオに集中させ、浜辺の方を確認してみるのだった。
軽食をとっていたミリー達の傍で、片膝をついて休むと言い残していたジオの視界に戻す・・・食堂から浜辺までの距離は結構あったが問題なく稼働した。
「戦闘モード・・・キドウ、今の音は?」
「急に動き出さないで下さいまし、びっくりしますわ!」
「・・・フィオナは食堂にいるんだよね、この距離でも動かせるの・・・?」
ラニールさん達は他の冒険者達に戦闘態勢を指示しているよう・・・第2町側の浜辺にも騎士団が集まっている。
「あのでっかいのが急に叫びだしたんだよ!レイちゃんもびっくりして凄い唸ってるよ!」
「その狐ってちゃんと生きてたんだね・・・もはや首巻きなんじゃないかと思ってたよ・・・」
普段は前足と後ろ足がアイリの胸元辺りでプラプラしており、寝息もたててないのでレナには剥製を首に巻いてるような錯覚を与えていた・・・そう表現すると狂気的な人物になってしまいそうだが。
静寂だった海に波の音が響く、ザバァァと波が浜辺に打ち寄せる・・・ルスカ・カリーナの無数の触手が海面を叩きつけている。
「牙むき出しで威嚇行動とは、レーザーキャノンを撃つにも遠いな・・・俺は面倒が嫌いだと言っただろう」
「魔物にそんなこと言っても仕方ないんじゃない・・・?ヴェルトールも近づく必要があるから、フィオナの気持ちも分からなくはないけど・・・急に口調悪くなったね」
見た目通りの力でも問題だが、現象化しているとはいえコーザル体に攻撃が通るのか・・・実はホログラムとかだと厄介である。
海水が触手に干渉してるのを見ると大丈夫そうではあるが、あの位置にどうやって攻撃を仕掛けるか。
そうこう考えているとラニールさんが歩いてくる、その後ろにエクレさんも海上を警戒しながら続く。
「戦闘態勢を指示したものの、どうするか・・・・・・少しいいかいフィオナ君?」
「はいなので・・・・・・あ」「返事をしてどうしますの・・・」
「なるほど、どうやってるのかは皆目見当がつかないが・・・・・・やはりその鎧は君が動かしていたのか」
「?ラニール先輩、何の話を・・・?」
普通に皆にフィオナと呼ばれていた事で油断して返事をしてしまった、初見で勘付くようなものではないはずだが・・・片膝をついて休むという言い訳には無理があったのだろう。
「あまり認知されてはいないが、魔力には人によって固有の性質がある、ジオには固有の性質以前に、魔力が一切見られなかった・・・まあそれだけの話だよ」
ラニールさんにも魔力の『色』が視えるようだった、炎の魔導術が得意なのもゆらゆらと光る赤色の魔力である事から偶然ではないらしい。
「・・・それだけでフィオナがやってると気づけるのも・・・総合学院の首席というのは伊達ではないみたい」
「理屈は重要な要素だが、現実で起きてることが全てだろう?術式も展開せずにフレア・ランスを同時に3つ4つと・・・常識で考えても仕方ない」
ジオを見ながらミリーは腕を組みうんうんと頷いていた、この世界の基準的には君達も大差ない気がするが。
意識をジオに集中させていたのを解こうとした時、エクレさんが、沖を見て!と声を張り上げた。
「あれは・・・・・・群集体でも強靭体でもない、未確認の魔物だと・・・?」
「・・・数がどんどん増えてく、10や20じゃない・・・」
「わわわ!あのでっかいのに形が似てない!?」
視界を拡大させ魔物を確認してみる・・・数は軽く40以上、問題と言えばアイリが言ったようにその外形はルスカの特徴である鮫頭のクラーケンであった。
兄のアスト・ウィクトールがいるならあそこにいるのは王国第二騎士団ということになる、話の途中でアイリが再度兄の方に向かったのでまあ大丈夫だろう。
腹が減っては何とやら・・・不動のジオさんなんてあだ名がつけられる前に弁解をし、建物の手前に着地する。
趣のある・・・と言いたいところだが、とても古い木製の扉は表面の木々が所々剥げている、店を畳んだと聞かされていたら信じるだろう。
トントンと叩き、ギギィと軋みながら扉を開けると閑散とした空間が広がっている。
「こんな時間にすみません~やってます~?」
「この静寂・・・随分早く片付いたようだねぇ、いつもより魔物達の数が少なかったのかい?」
お婆さんと聞いていたが、40代と聞かされていたのなら疑わないであろう見た目の女性だった。
背筋はしっかり伸び印象よりも身長は高く見える、魔物が少ないかどうかの質問に答えるついでに現象化させた薄い石板にワニ肉を乗せる。
「鰐人型の強靭体が5体?だったと思うのです、このお肉は調理できるのです?」
「あ、ああ・・・それにしてもちっこい子だねぇ、ここは子供が気軽に立ち寄る地域じゃないよ?」
石造りのカウンターから鰐肉を渡すと出刃包丁より長い短剣で華麗に捌いていく、ミスリル製のようだが・・・調理用には見えない事から元短剣使いなのだろうか。
「私はフィオナ・ウィクトールです、実に使い慣れた短剣捌きなのです」
「あたしゃティシーさ、いい目をしてるじゃないかお嬢ちゃん」
鉄のフライパンにジュゥゥという音とローズマリーのような香りで美味であろうと確信し、お食べと出された香草焼きを再度匂いで楽しむ。
「食わず嫌いではなかったのですが、魔物の肉も中々に美味なのです」
「鰐人型の肉は脂が乗ってるからねぇ、しかしこいつが5体も出現した上での討伐速度・・・加勢に来た冒険者は相当な実力者のようだねぇ」
軽く経緯を説明しながら香草焼きを食べる、ティシーさんはミリー達4人の実力に頷く・・・私とジオの事はどう話すべきかと考えていると。
「膝に乗せてる杖を見れば分かるさね、丸々ディオールの素材など扱いが難しいだろうに・・・魔導術を行使する前に魔力切れしないかい?」
難しい以前に実は扱えていないとは言えず、ティシーさんと世間話をしていたその時。
キュァァァァォォォンッ!!
「?」「初めて聞く音だねぇ・・・・・・鳴き声・・・なのかねぇ?」
意識をジオに集中させ、浜辺の方を確認してみるのだった。
軽食をとっていたミリー達の傍で、片膝をついて休むと言い残していたジオの視界に戻す・・・食堂から浜辺までの距離は結構あったが問題なく稼働した。
「戦闘モード・・・キドウ、今の音は?」
「急に動き出さないで下さいまし、びっくりしますわ!」
「・・・フィオナは食堂にいるんだよね、この距離でも動かせるの・・・?」
ラニールさん達は他の冒険者達に戦闘態勢を指示しているよう・・・第2町側の浜辺にも騎士団が集まっている。
「あのでっかいのが急に叫びだしたんだよ!レイちゃんもびっくりして凄い唸ってるよ!」
「その狐ってちゃんと生きてたんだね・・・もはや首巻きなんじゃないかと思ってたよ・・・」
普段は前足と後ろ足がアイリの胸元辺りでプラプラしており、寝息もたててないのでレナには剥製を首に巻いてるような錯覚を与えていた・・・そう表現すると狂気的な人物になってしまいそうだが。
静寂だった海に波の音が響く、ザバァァと波が浜辺に打ち寄せる・・・ルスカ・カリーナの無数の触手が海面を叩きつけている。
「牙むき出しで威嚇行動とは、レーザーキャノンを撃つにも遠いな・・・俺は面倒が嫌いだと言っただろう」
「魔物にそんなこと言っても仕方ないんじゃない・・・?ヴェルトールも近づく必要があるから、フィオナの気持ちも分からなくはないけど・・・急に口調悪くなったね」
見た目通りの力でも問題だが、現象化しているとはいえコーザル体に攻撃が通るのか・・・実はホログラムとかだと厄介である。
海水が触手に干渉してるのを見ると大丈夫そうではあるが、あの位置にどうやって攻撃を仕掛けるか。
そうこう考えているとラニールさんが歩いてくる、その後ろにエクレさんも海上を警戒しながら続く。
「戦闘態勢を指示したものの、どうするか・・・・・・少しいいかいフィオナ君?」
「はいなので・・・・・・あ」「返事をしてどうしますの・・・」
「なるほど、どうやってるのかは皆目見当がつかないが・・・・・・やはりその鎧は君が動かしていたのか」
「?ラニール先輩、何の話を・・・?」
普通に皆にフィオナと呼ばれていた事で油断して返事をしてしまった、初見で勘付くようなものではないはずだが・・・片膝をついて休むという言い訳には無理があったのだろう。
「あまり認知されてはいないが、魔力には人によって固有の性質がある、ジオには固有の性質以前に、魔力が一切見られなかった・・・まあそれだけの話だよ」
ラニールさんにも魔力の『色』が視えるようだった、炎の魔導術が得意なのもゆらゆらと光る赤色の魔力である事から偶然ではないらしい。
「・・・それだけでフィオナがやってると気づけるのも・・・総合学院の首席というのは伊達ではないみたい」
「理屈は重要な要素だが、現実で起きてることが全てだろう?術式も展開せずにフレア・ランスを同時に3つ4つと・・・常識で考えても仕方ない」
ジオを見ながらミリーは腕を組みうんうんと頷いていた、この世界の基準的には君達も大差ない気がするが。
意識をジオに集中させていたのを解こうとした時、エクレさんが、沖を見て!と声を張り上げた。
「あれは・・・・・・群集体でも強靭体でもない、未確認の魔物だと・・・?」
「・・・数がどんどん増えてく、10や20じゃない・・・」
「わわわ!あのでっかいのに形が似てない!?」
視界を拡大させ魔物を確認してみる・・・数は軽く40以上、問題と言えばアイリが言ったようにその外形はルスカの特徴である鮫頭のクラーケンであった。
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