異世界でロリッ子魔導師になりました

リオック

文字の大きさ
上 下
26 / 127
帝国編

力には力でした

しおりを挟む
ザシュッ ビシャァァンッ
 空中から雷を纏った斬撃による近接戦、ユラもなかなかやりますわね。
「フィオナを追っていこうとした鳥型も落とせましたし、後は・・・」
 残りは5体程度ですわね、洞窟と違って拓けてると厄介ではありますが・・・こちらも魔導術を抑える必要もないのは楽ですわ。
「・・・ミリーそっちに行ったよ」
 ライトニング・バレットを空中機動に使うのはフィオナとも違う戦い方、器用なものですわ。
「ライトニング・レインで十分ですわね、念のため馬車の方にエア・シールドは張っておきますわ」
ビシャァァンッ バリバリバリッ
 5体に全部命中・・・1体が私(わたくし)の方へと嘴を突き立て・・・
ザシュッ
「よいしょー私ほとんど何もしてないよー」
 アイリが横から振り下ろした斬撃で鳥型が真っ二つ・・・あんな軽く振って威力もあるのは凄いですわね。
「同じゴールドでもこれは凄いな・・・君達まだ学院卒業したばかりだよね?」
「私こんなに無詠唱で連発してる魔導師初めてみたよ・・・使える人は何人か知ってはいるけど・・・」
「なんかミリー達を見てるとその詠唱?しないのが普通なのかなって思うよ」
 無詠唱って宮廷魔導師の領域じゃなかったっけ?と思い思いの感想が聞こえますわね。
 そういえば卒業してもフィオナは結局術式を使うことなかったですわね・・・あの魔導術の使い方だけは未だに分かりませんわね。
「・・・村に行かない?フィオナは大丈夫だと思うけど」
 馬車に乗り程なくして村が見えるとこっちに飛んでくるフィオナの姿、どこか慌ててるみたいですが・・・炎の槍で燃やしたりしておりませんわよね・・・?

 家屋に身を潜めていた村人たちが活発に動き出し、村に賑わいが戻っていく。
 初めてくる村なので元々どれくらいが普段の光景かはさておき、私達はこの村特有のギルド食堂で食事をご馳走になっていた。
「さあさあ食ってくれ・・・特にそっちのちっちゃいお嬢ちゃん、食わんと大きくなれんよ~?」
 陽気なおじさんが鳥の丸焼きのようなものをドカッとテーブルに置く、さっきまで戦ってたのが鳥型の魔物だったせいか・・・気にしても仕方がないのでナイフで切り離しながら齧る。
「・・・フィオナは食べてる方だけど小さいんですよ」
 敢えてスルーしてたおじさんの声にユラが律儀に説明していた。
「それにしても冒険者が少ないですわね、中間村には多くの冒険者が立ち寄ると聞いておりましたが?」
 豚の丸焼き?みたいな肉を切り分け皿に乗せて皆の前に配っていたおじさんが、酒を片手に座り直す。
「ああ、帝都の建国際が来年に迫ってるのもあるが、腕利きはアーシルに出向いてるって話だ」
 豪快に酒を飲みながら事情を説明してくれる・・・さりげなく飲み会モードになっているおじさんだった。
「防衛国のアーシルですの?確かに高ランク冒険者は稼ぐ為にアーシルの依頼を受けるようですけど・・・」
「ああ、なんでもやべえのが確認されたって話でな」
 お陰でギルド食堂に閑古鳥が鳴いてらぁ、王様が言ってた話も特に情報封鎖などはしていないようだ。
 海の大物だとクラーケンみたいのだろうか、討伐隊みたいに大規模な事になると大変そうだ。
「・・・どんな魔物なの?」
「それは分からんねぇ、何せアーシルからこっちにまで戻ってくる奴は少ないから。帝都で出回ってる噂をここに来た冒険者が話をしてる程度でな」
 切り分けられた豚焼きを齧りながら話を聞いてると、おじさんが更に話を続ける・・・酒が入るとおしゃべりになるのはどの世界も変わらないようだ。
「帝都でもう一つ噂になってるのが、王都で有名な冒険者ジオが来るって話だ。君ら王都から来たんなら詳しく知ってそうだねぇ?」
 ジオの名前も有名になったものだなと鳥肉にナイフを刺したところ、ミリーに手を掴まれた。
「フィオナ・・・この話は独り歩きですの?それとも・・・」
 帝都につく前にミリー達の耳に入ってしまった。

 宿屋の部屋を2つ借り、その1つの部屋に皆が集まり話を問いただされた。
「水くさいですわ、帝都に着いてからどうするつもりでしたの?」
「あ、でも魔海ってことはその魔物水中にいるのかな?」
「・・・なるほど、だからジオに話がいく・・・とはならなくない?」
 空を飛ぶのは私だがジオは魔導具使いで通っているようだから、ジオではなく私に話がいくのではとなっているようだ。
 実際はどっちにもきてはいるが同一人物なので無理と・・・改造短剣飛ばしてる要領でジオの鎧を遠隔で動かすくらいはできるかもだが。
「まだ帝都に着いてもいないのに噂になってるのは予想外なのです」
 王城前でのジオを見かけた人が帝都に行ったときにあることないこと話したのだろうか、結果としては間違いではないのだけども。
「大方、串焼きの露店探すとか言って別行動など安易な考えではありませんわよね・・・目が泳いでおりますわよ?」
「流石にそれでいくのは無理じゃろ?アートマ領域を意識的に使えれば話は別じゃが」
 串焼き買いに行く間に片を付けるとは考えてはいないが、様子を見にいくくらいはできるかと・・・思っていたがアーシルまでの距離を知らないから無理だなと。
「・・・一人で行くつもりだったの?」
「考えてるようで何も考えてないのはフィオナの悪い癖ですわね、というより今回は私(わたくし)達の事を考えて自分の事が疎かというべきですわね」
 私的には寧ろアーシルには行きたくないのが本音ではあるのだが、戦闘狂ではないからわざわざ危険な魔物に立ち向かいたいわけではない。
「ミリー達を連れて行く以前に私も行きたくないのですが・・・帝国から協力してほしいと頼まれたのです」
「いつそんな話を・・・いえジオで王城に行ったというのがその事でしたのね」
「え、フィオナ王城に行ったの?どうだった?」
 アイリはマイペースだったが、ミリーとユラは私の心配をしてくれているようだった。
「妾が手伝ってもよいのじゃが・・・あまり干渉するのもあれじゃ」
 リアが出張れば一瞬で片は付きそうだが、珍しく言いよどんでいるようだ。
「古龍様なら簡単に倒せそうー」
「そうじゃな・・・フィオナ、魔海にいるのはコーザル体じゃ。どのみち神器がない人族ではお主が切り札になるしかなかろうて」
 聖剣があれば話は別じゃが、大型ゴーレムの比ではない魔物だった。

 コーザル体の魔物・・・それはもう魔物で済ませていい話なのだろうかと考えていたらミリーが話を続けた。
「リアさんとフィオナはたまに意味の分からない話をしますけど・・・そのアストラルとかコーザルは何の事ですの?」
「あ、レイちゃんが言ってたのもそれだよね?」
「ふむ、領域の話くらいは聞かせておいた方がよさそうじゃな。人族でいうところの神の領域みたいなものじゃ」
 正確には違うがの、高次領域など生物が認識するものではないから説明も難しそうだ。
「・・・コーザル体というのは神様ということ?」
「近いが違うものじゃな、物質界の生物からすればそのくらいの差があるというとこじゃ」
 実際本当にコーザル体なら魔物という形でも見えないだろうが・・・確認されてるのにコーザル体なのかが疑問ではある。
「妾もそれが気になるところじゃ、コーザル体が何故人族で認識できたのかは分からん」
「ちょっと待って下さい・・・そんなのを相手に何故フィオナが切り札ですの?」
「アイギスを貫けると話したじゃろう?あれはコーザルの根源領域の力故、物質界の現象では干渉できぬ」
 それを貫けるならコーザル体とて例外ではないのじゃ、そう言われてもあまりピンとはこないのだが。
「・・・あの光の柱みたいのはそんな強力な魔導術だったの?」
「そうは言ってもレーザーブレードはゴーレムに効かなかったのです・・・副団長にも弾かれたのです」
 割と自信があったブレード光波をかき消された記憶が蘇った。
「領域の力を現象化させておるだけなら物質界の現象で干渉はできる、この段階であれば魔力でも防げるがコーザル体と同じ根源領域にまで至れば物質界では干渉できなくなるということじゃの」
「私皆が言ってることさっぱりなんだけど!」
 アイリだけでなくここにいる全員理解はできないだろう、私も分からない。
「凄い力には凄い力をぶつけるのじゃ」
 凄い暴論で話を纏めたリアなのであった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...