67 / 71
第二部 第三章 首都レグナエラ
10 似顔絵の男
しおりを挟む
高壁に守られた民は、戦争の影響を日々感じても、戦闘については、まだ現実味が薄かった。
出入の門は全て閉められている。外を見る兵士達は応戦で忙しく、市中をぶらぶら巡回する余裕を失ったため、民と話す暇がない。
誰かが何処からか仕入れる切れ切れの噂以外に、民が外の様子を知る術はなかった。外側で繰り広げられる死闘の様など想像の埒外である。
それでも、この期に及んでは、味方の趨勢ぐらいは予想がついていた。
「だって、勝っていれば、ちょっとぐらい門を開けてくれたっていい筈だよ」
ネオリア軍が来ると聞いて、カーンサスから逃げてきた親父が言う。
全財産を抱えレグナエラへ逃げ込んだ翌日に、門を閉められたのだ。元は商売人と自称するが、わざわざレグナエラへ逃げ込む程度の目端では、怪しいものだ、と皆口には出さず、心に思っている。
目端の利く商人は大方他所へ鞍替えしてしまい、残るのは代々レグナエラに住んでいるという土地に愛着がある者、親類が城に勤めているという愛情深い人、他所へ行くあてもないので大博打を打とうと考えているろくでもない奴ぐらいであった。
流入組の大半も、先のことを深く考えているとは言い難い。兵士の募集は継続的に行われていたが、敗色濃いレグナエラ軍に応募する者は、愛国心からと言うよりも、支給される衣食を目当てにしていた。
「ちょっと勝ったぐらいで門を開けるなんて、できないよ。俺、閉めるところを見ていたんだけれど、何十人がかりで動かしていたぜ。扉自体は相当重いだろう。パッと開けて、パッと閉めるなんて器用な芸当は無理だ」
また違う男が言った。この男は正真正銘レグナエラで小麦を商っていたのだが、出入ができなくなって店を閉め、毎日のようにこうして近所の連中を集めてお喋りをしていた。各自秘蔵の品を持ち寄り、必要な品と情報を交換するのである。
「でも、負けているのは確かだろう。この間も、何だかやけに大門の上が騒がしかったもの」
「それなんだけど、ソルペデス王子様が落命されたって噂は本当かねえ?」
「本当かい、ダハエス?」
一同の注目を一身に集めてしまい、後ろの方に座っていたダハエスは、きまり悪そうな表情になった。古ぼけた椅子がぎしぎしと鳴った。
「俺も兵士達が言っているのを小耳に挟んだだけだから、何とも言えないよ」
「ああ、ダハエスは金属加工を商っているから軍の噂も耳に入るよな。やっぱりあの騒ぎは只事じゃない、と思ったぜ」
「そう言えば、最近ソルマヌス王様もお見かけしないぞ。病気なんじゃないか」
「メロスメリヌ様が後継ぎをお産みなされたから、近々お披露目するとか何処かで見たぞ。ソルペデス王子様が亡くなられたんじゃあ、それどころじゃないよな」
「もう、レグナエラも終わりかもしれないなあ」
誰かが小声で呟く。皆、悲観的な気分で同調した。カーンサスから逃げてきた男がぽん、と手を叩いて衆目を集めた。
「ネオリアが入ってきたら、どうせ一切合財盗られるんだ。その前に、レグナエラの民である俺達で、王様が持っている財産を分かち合えればいいよなあ」
「そうだなあ。ネオリアは酷いというからなあ」
「ダハエス、お前さんなら軍の倉庫の場所なんかも分かるだろう?」
「ええっ?」
ダハエスは迷惑そうな顔をした。
「俺達だけで行ったって、追い返されるのが落ちだよ。見せしめに処刑されちまう」
「じゃあ、もっと大勢で行けばいいんだな」
小麦屋が冗談らしく混ぜ返した。無理だ、と皆爆笑し、そこで話は終わる流れであった。
「そりゃ、大勢なら王様のお宝だって掴み放題だろう」
笑いが鎮まったのを見計らったように、ダハエスがぽそっと呟いた。
皆、更にしん、とした。カーンサス男がにやりとした。
「じゃあ、ひとつできるものかどうか、お前さんから倉庫の場所を説明してもらおうか」
ダハエスは渋りもせず説明を始めた。集まった連中は、初め冗談半分に、話が進むにつれて徐々に身を乗り出し、全身を耳にして彼の話に聞き入った。
途中でダハエスとカーンサス男の目が合った。一瞬、親密な光が互いを結びつけた。
ソルペデスの悲報はソルマヌス前王の病状を悪化させた。明瞭な言葉が喋れなくなったのである。
倒れてからずっと寝台に仰臥したままである。言葉が話せなくなってからは、意識も混濁してきているらしいのが、瞳に表れる色に見て取れた。
メロスメリヌはエウドリゴが王位を継ぎ、自らが後見についてから、寝室を移して続き部屋に起居していたので、その変化をつぶさに感じた。側で見守るしかできないもどかしさが、居たたまれない思いを強くする。
「お披露目はいつしたら、よいのでしょう」
メロスメリヌは縋りつかんばかりにして、ウルペスに尋ねた。ウルペスはソルピラスの遺骸を運び込んで以来、大臣に取り立てられ、更にソルマヌスが王位を退いてからはエウドリゴの相談役をも兼ねていた。実質、メロスメリヌの相談役である。
彼は戦の総指揮もとっており、多忙の身でありながら、ソルピラスに仕えていた縁で相談役の務めを果たすべく、前王の寝室へも暇を見ては顔を出していた。
ウルペスは難しい顔付きを美しい後見役に向けた。
「本当の事を申し上げますと、お披露目などする呑気な状況ではないのです。民も自分の生活を守るのに精一杯で、新王の即位を祝う余裕はないでしょう」
「ただ、ソルペデス殿下の隊を失った今、我々は本当に篭城するしかなく、今こそ結束を固めるべき時期でもあるのです。もうすぐ雨季に入ります。ネオリアもメリディオンも、雨季の野営には慣れていない筈で、我々は一息つけるでしょう」
「ですから、いつ、ということなしに、お披露目を行い、その際食料の配布も併せて行えば、人も集まり形も整うし、篭城する気力も少しは蓄えられると考えます」
「ソルペデス殿下は本当に亡くなられたのでしょうか。私、どうしても信じられませんわ」
唐突に、話の本筋とかけ離れた質問をぶつけられて、ウルペスはまじまじと相手を見返した。メロスメリヌはウルペスの不審な視線をものともせず、真剣に答えを待っていた。
「妃殿下が、最後の希望が途絶えたのを信じたくない気持ちはわかります。私も同じ気持ちですから」
「しかし、殿下が胴を切り裂かれて倒れたのを、我が軍の兵士が複数目撃しております。すぐに敵軍が体を運び去ってしまったとは言え、生きていれば敵軍から何らかの反応がある筈です。やはり、お亡くなりになったものと考え、今後の方針を決められるべきと考えます」
「そうですか」
メロスメリヌはあからさまに気落ちした様子で下を向いた。きちんと結われた蜂蜜色の髪も色褪せて見える。ウルペスが慰めの声を掛けようとした時、急に彼女は顔を上げた。
「今から、お披露目の準備をしますわ。あなたのおっしゃる通り、食料も配らせます。明後日には開催できますわね?」
決然とした表情だった。ウルペスは、勢いに押されて頷くのが精一杯だった。城内は一気に慌しくなった。
その日のうちに、レグナエラの街角に、お披露目と食料の配布が行われるというお触れが出された。街角には、どこに隠れていたのか、人々が群がり集まった。
エウドクシスは、メリディオン軍に捕らわれ、縄でぐるぐる巻きにされたまま、地面に転がされていた。食事は、毎回無理矢理兵士に摂らされた。また、その前後に、いちいち縄を巻き直された。これでは、少しずつ緩めて縄抜けする作戦は使えない。
毒の効かない体ではあったが、兵士達の様子を見るに、毒入りの食事でもなさそうであった。
最初は猛然と暴れたエウドクシスも、秩序だったメリディオンの兵士達相手に根が尽き、今は大人しく転がされていた。
勿論このままでいるつもりはなく、そのうち脱出しようと隙を窺っていた。
機会を掴めぬまま何度か食事を摂らされた後、前触れもなくメリファロス王子が現れ、彼の前に片膝をついた。
王子はレグナエラ語で話しかけた。
「お前、エルロだろう。我が国の古記録に、似顔絵が残っているぞ」
前髪は王子の命令によって、後ろへ撫でつけて紐で押さえてある。王子が初めてレグナエラ語を話すのを聞いたのと、その内容に、エウドクシスも無表情ではいられなかった。
数百年の間怪しまれずに生き延びるため、時に変名を使い、他国に渡って生活した時期が幾度かあった。
何でも記録して、公共の図書館まで作ってしまうメリディオン人の性質はエウドクシスも知ってはいたが、まさか似顔絵まで残っているとは予想し得なかった。自分に関する情報など、調べたこともない。
メリファロスは、エウドクシスの微妙な表情の動きを正確に読み取り、くつくつと笑った。
周囲にいる兵士達は、王子が笑う理由が分からない様子で、戸惑っている。彼らがレグナエラ語を解さないことは試し済みだった。
「手品が趣味でな、その道には詳しいのだ。戦が終わったら、お前の手品をこころゆくまで再演し、種明かしもしてもらおう。不老長寿の秘密もな」
「その体は武器では傷つかないと聞いたが、火や水にも耐えるのかな。皮膚を溶かす薬品はどうだ。土に埋めても平気なのか。一部でも切り取ることができれば、それを食べた人間が同じ能力を授かるかもしれぬ。くくく、実に楽しみだ」
エウドクシスは無言のまま答えなかった。メリファロスは気にした様子もなく、立ち上がると去っていった。
「逃げねえと、本格的にやばいぜ」
焦っても、ぐるぐる巻きにされた状態では、どうしようもなかった。間もなく、がっしりとした兵士達がやってきて、エウドクシスを持ち上げた。彼はどこかへ運ばれた。
出入の門は全て閉められている。外を見る兵士達は応戦で忙しく、市中をぶらぶら巡回する余裕を失ったため、民と話す暇がない。
誰かが何処からか仕入れる切れ切れの噂以外に、民が外の様子を知る術はなかった。外側で繰り広げられる死闘の様など想像の埒外である。
それでも、この期に及んでは、味方の趨勢ぐらいは予想がついていた。
「だって、勝っていれば、ちょっとぐらい門を開けてくれたっていい筈だよ」
ネオリア軍が来ると聞いて、カーンサスから逃げてきた親父が言う。
全財産を抱えレグナエラへ逃げ込んだ翌日に、門を閉められたのだ。元は商売人と自称するが、わざわざレグナエラへ逃げ込む程度の目端では、怪しいものだ、と皆口には出さず、心に思っている。
目端の利く商人は大方他所へ鞍替えしてしまい、残るのは代々レグナエラに住んでいるという土地に愛着がある者、親類が城に勤めているという愛情深い人、他所へ行くあてもないので大博打を打とうと考えているろくでもない奴ぐらいであった。
流入組の大半も、先のことを深く考えているとは言い難い。兵士の募集は継続的に行われていたが、敗色濃いレグナエラ軍に応募する者は、愛国心からと言うよりも、支給される衣食を目当てにしていた。
「ちょっと勝ったぐらいで門を開けるなんて、できないよ。俺、閉めるところを見ていたんだけれど、何十人がかりで動かしていたぜ。扉自体は相当重いだろう。パッと開けて、パッと閉めるなんて器用な芸当は無理だ」
また違う男が言った。この男は正真正銘レグナエラで小麦を商っていたのだが、出入ができなくなって店を閉め、毎日のようにこうして近所の連中を集めてお喋りをしていた。各自秘蔵の品を持ち寄り、必要な品と情報を交換するのである。
「でも、負けているのは確かだろう。この間も、何だかやけに大門の上が騒がしかったもの」
「それなんだけど、ソルペデス王子様が落命されたって噂は本当かねえ?」
「本当かい、ダハエス?」
一同の注目を一身に集めてしまい、後ろの方に座っていたダハエスは、きまり悪そうな表情になった。古ぼけた椅子がぎしぎしと鳴った。
「俺も兵士達が言っているのを小耳に挟んだだけだから、何とも言えないよ」
「ああ、ダハエスは金属加工を商っているから軍の噂も耳に入るよな。やっぱりあの騒ぎは只事じゃない、と思ったぜ」
「そう言えば、最近ソルマヌス王様もお見かけしないぞ。病気なんじゃないか」
「メロスメリヌ様が後継ぎをお産みなされたから、近々お披露目するとか何処かで見たぞ。ソルペデス王子様が亡くなられたんじゃあ、それどころじゃないよな」
「もう、レグナエラも終わりかもしれないなあ」
誰かが小声で呟く。皆、悲観的な気分で同調した。カーンサスから逃げてきた男がぽん、と手を叩いて衆目を集めた。
「ネオリアが入ってきたら、どうせ一切合財盗られるんだ。その前に、レグナエラの民である俺達で、王様が持っている財産を分かち合えればいいよなあ」
「そうだなあ。ネオリアは酷いというからなあ」
「ダハエス、お前さんなら軍の倉庫の場所なんかも分かるだろう?」
「ええっ?」
ダハエスは迷惑そうな顔をした。
「俺達だけで行ったって、追い返されるのが落ちだよ。見せしめに処刑されちまう」
「じゃあ、もっと大勢で行けばいいんだな」
小麦屋が冗談らしく混ぜ返した。無理だ、と皆爆笑し、そこで話は終わる流れであった。
「そりゃ、大勢なら王様のお宝だって掴み放題だろう」
笑いが鎮まったのを見計らったように、ダハエスがぽそっと呟いた。
皆、更にしん、とした。カーンサス男がにやりとした。
「じゃあ、ひとつできるものかどうか、お前さんから倉庫の場所を説明してもらおうか」
ダハエスは渋りもせず説明を始めた。集まった連中は、初め冗談半分に、話が進むにつれて徐々に身を乗り出し、全身を耳にして彼の話に聞き入った。
途中でダハエスとカーンサス男の目が合った。一瞬、親密な光が互いを結びつけた。
ソルペデスの悲報はソルマヌス前王の病状を悪化させた。明瞭な言葉が喋れなくなったのである。
倒れてからずっと寝台に仰臥したままである。言葉が話せなくなってからは、意識も混濁してきているらしいのが、瞳に表れる色に見て取れた。
メロスメリヌはエウドリゴが王位を継ぎ、自らが後見についてから、寝室を移して続き部屋に起居していたので、その変化をつぶさに感じた。側で見守るしかできないもどかしさが、居たたまれない思いを強くする。
「お披露目はいつしたら、よいのでしょう」
メロスメリヌは縋りつかんばかりにして、ウルペスに尋ねた。ウルペスはソルピラスの遺骸を運び込んで以来、大臣に取り立てられ、更にソルマヌスが王位を退いてからはエウドリゴの相談役をも兼ねていた。実質、メロスメリヌの相談役である。
彼は戦の総指揮もとっており、多忙の身でありながら、ソルピラスに仕えていた縁で相談役の務めを果たすべく、前王の寝室へも暇を見ては顔を出していた。
ウルペスは難しい顔付きを美しい後見役に向けた。
「本当の事を申し上げますと、お披露目などする呑気な状況ではないのです。民も自分の生活を守るのに精一杯で、新王の即位を祝う余裕はないでしょう」
「ただ、ソルペデス殿下の隊を失った今、我々は本当に篭城するしかなく、今こそ結束を固めるべき時期でもあるのです。もうすぐ雨季に入ります。ネオリアもメリディオンも、雨季の野営には慣れていない筈で、我々は一息つけるでしょう」
「ですから、いつ、ということなしに、お披露目を行い、その際食料の配布も併せて行えば、人も集まり形も整うし、篭城する気力も少しは蓄えられると考えます」
「ソルペデス殿下は本当に亡くなられたのでしょうか。私、どうしても信じられませんわ」
唐突に、話の本筋とかけ離れた質問をぶつけられて、ウルペスはまじまじと相手を見返した。メロスメリヌはウルペスの不審な視線をものともせず、真剣に答えを待っていた。
「妃殿下が、最後の希望が途絶えたのを信じたくない気持ちはわかります。私も同じ気持ちですから」
「しかし、殿下が胴を切り裂かれて倒れたのを、我が軍の兵士が複数目撃しております。すぐに敵軍が体を運び去ってしまったとは言え、生きていれば敵軍から何らかの反応がある筈です。やはり、お亡くなりになったものと考え、今後の方針を決められるべきと考えます」
「そうですか」
メロスメリヌはあからさまに気落ちした様子で下を向いた。きちんと結われた蜂蜜色の髪も色褪せて見える。ウルペスが慰めの声を掛けようとした時、急に彼女は顔を上げた。
「今から、お披露目の準備をしますわ。あなたのおっしゃる通り、食料も配らせます。明後日には開催できますわね?」
決然とした表情だった。ウルペスは、勢いに押されて頷くのが精一杯だった。城内は一気に慌しくなった。
その日のうちに、レグナエラの街角に、お披露目と食料の配布が行われるというお触れが出された。街角には、どこに隠れていたのか、人々が群がり集まった。
エウドクシスは、メリディオン軍に捕らわれ、縄でぐるぐる巻きにされたまま、地面に転がされていた。食事は、毎回無理矢理兵士に摂らされた。また、その前後に、いちいち縄を巻き直された。これでは、少しずつ緩めて縄抜けする作戦は使えない。
毒の効かない体ではあったが、兵士達の様子を見るに、毒入りの食事でもなさそうであった。
最初は猛然と暴れたエウドクシスも、秩序だったメリディオンの兵士達相手に根が尽き、今は大人しく転がされていた。
勿論このままでいるつもりはなく、そのうち脱出しようと隙を窺っていた。
機会を掴めぬまま何度か食事を摂らされた後、前触れもなくメリファロス王子が現れ、彼の前に片膝をついた。
王子はレグナエラ語で話しかけた。
「お前、エルロだろう。我が国の古記録に、似顔絵が残っているぞ」
前髪は王子の命令によって、後ろへ撫でつけて紐で押さえてある。王子が初めてレグナエラ語を話すのを聞いたのと、その内容に、エウドクシスも無表情ではいられなかった。
数百年の間怪しまれずに生き延びるため、時に変名を使い、他国に渡って生活した時期が幾度かあった。
何でも記録して、公共の図書館まで作ってしまうメリディオン人の性質はエウドクシスも知ってはいたが、まさか似顔絵まで残っているとは予想し得なかった。自分に関する情報など、調べたこともない。
メリファロスは、エウドクシスの微妙な表情の動きを正確に読み取り、くつくつと笑った。
周囲にいる兵士達は、王子が笑う理由が分からない様子で、戸惑っている。彼らがレグナエラ語を解さないことは試し済みだった。
「手品が趣味でな、その道には詳しいのだ。戦が終わったら、お前の手品をこころゆくまで再演し、種明かしもしてもらおう。不老長寿の秘密もな」
「その体は武器では傷つかないと聞いたが、火や水にも耐えるのかな。皮膚を溶かす薬品はどうだ。土に埋めても平気なのか。一部でも切り取ることができれば、それを食べた人間が同じ能力を授かるかもしれぬ。くくく、実に楽しみだ」
エウドクシスは無言のまま答えなかった。メリファロスは気にした様子もなく、立ち上がると去っていった。
「逃げねえと、本格的にやばいぜ」
焦っても、ぐるぐる巻きにされた状態では、どうしようもなかった。間もなく、がっしりとした兵士達がやってきて、エウドクシスを持ち上げた。彼はどこかへ運ばれた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる