7 / 71
第一部 第二章 エウドクシスの大難
2 水神の語り
しおりを挟む
気が付いたら、何人かの男に取り囲まれていた。全員同じ程度に武装している。兵士のようだ。敵意は感じなかった。俺は起き上がろうとして、中の一人に止められた。
「まだ横になっていた方がいい。遠慮はいらない」
「ここは?」
「レグナエラ王国に所属するグーデオンだ。お前、悪い奴らに殺されそうになったんだってな。ソリス陛下の特別臨検使であるデリム様が言っていたぞ。こっちの言葉が話せるなら、ここは港町だからいくらでも仕事は見つかる。もう、シュラボスには帰りたくないだろう。なあ、エウドクシス」
俺を助けてくれた男はデリムという名前らしい。
記憶が欠落しているが、俺は身の上を奴に話したのか。殺されそうになったのは本当だが、仕組まれた罠にかかったとはいえ、そもそも親父の後妻に手を出した俺も悪いのだから、どちらが悪いかは一概には言えない。
ともかく、ここの連中には俺はいい奴として紹介されているようだ。まずは一安心だった。俺は顎を引いて同意を表した。意思に従って顎が動いたことに、言い知れぬ感動を覚えた。
兵士達は、己に感動している俺を見て疲れが出たのだと解釈し、俺を寝かせたままその場を離れた。すぐ隣の部屋が、彼らの居場所のようだ。ここは何かと首を巡らすと、どうも寝所のようだった。
毒を飲まされて飲まず食わずで海を漂流していた割りには、俺の状態はまずまずだった。
あの兵士達が適切な看病をしてくれたに違いない。兵士達はまるで軽い病人を扱うように緊張感がなかった。
レグナエラ王国の医療はシュラボス島よりよほど進んでいる。差し当ってすることもないので、俺は横になったまま目を閉じて、今後の身の振り方を考えてみた。
彼らの言う通り、シュラボス島には戻れない。生きて戻れば親父は内心喜んでくれるかもしれないが、いずれイニティカに口実を設けられて殺されるのが落ちである。
ここグーデオンの地名は、俺も誰かに聞いた覚えがあった。シュラボス島との交易を主にしている都市だ。
仕事は確かにたくさんあるだろう。だが、それは危険も多いということだ。シュラボス島の人間が多く出入する場所でうろうろしていれば、誰かが俺に気付いてイニティカや弟達の耳に入れるかもしれない。
どこにいようと彼女らの耳に入れば、シュラボス島に戻るのと同じことである。
俺に合った仕事を見つけるのは難しいかもしれないが、もっと北方の内陸へ移動して、できれば聞いた事もないような土地で生活するのがいい。勿論、俺をこんな目に合わせた弟達を許すつもりはない。いつか何らかの形で仕返しをしてやる。だが、まずは俺自身を生かさなければならない。
「なに、ソリス陛下が?」
「しっ、奥にシュラボス人がいる」
隣の部屋から席を立つ音がした。俺は目を閉じたまま、眠っている振りをした。誰か俺の様子を窺っているようだ。俺は目を開けたい衝動に耐えた。長すぎる沈黙の後、会話が再開された。
「出入の商人から口伝えで耳に入った話だから、まだ確かなことはわからない。どうもお加減が悪いようだ」
「公式な通達は出ていないよな。王様が倒れたら、俺達どうしたらいいんだ?」
「危急時に備えて、主だった大臣による協議機関が用意されているんだよ。当面はこれで充分しのげるだろう。俺達も失業せずに済むって訳さ」
「でも、こんな時に北方の野蛮な民族が攻めてきたら厄介だ。やっぱり他の国には知られないに越したことはないぜ」
兵士達は額を寄せて話し合っているのか、声は小さく発音も不明瞭だった。俺は目を閉じているのを幸い、耳を銅鑼のように大きくして集中した。
ソリス王がどうやら病気らしい、という情報は、俺にはぴんと来なかった。シュラボス島にいた時なら、親父の仕えている王様が倒れたとなれば、一大事だと大騒ぎしただろう。レグナエラの王様の健康が俺にどう関わるのか、今の状態では判断しかねた。
「そうだ、あの特別臨検使には伝えなくていいのか」
「デリム様か。もうレグナエラへ向けて出発した筈だ。えらく急いでいたからな。もしかして、もう耳に入っているのかもしれない。知らなくても、首都へ着けば自然にわかるだろう」
話が途切れて、誰か新しい人間が加わったような音がした。遠慮のない大声が聞こえてきた。
「今そこで、ユノス近郊の山奥が火事になっていると聞いたぞ」
「ああ、俺も聞いた。雨みたいに凄い落雷があって、物凄い竜巻が起きたんだってさ」
「トリニ島も最近、地震が多いそうだ。不穏な世の中になってきたな」
俺は起きようかどうか迷った。兵士達の話を聞いていて、王国の中心地であるレグナエラに行こうかと思いついたのだ。確かな記憶ではないが、内陸の方にあった筈である。
少なくともここよりは北方にある。大きな都市ならば、仕事を見つけるのも人々に紛れるのも容易だろう。
俺を助けてくれたデリムとかいう奴に頼めば、金がなくても自然にレグナエラまで連れて行ってもらえるのではなかろうか。
奴は既に出発しているという。海路で出航されてはどうしようもないが、陸路ならば追いつく可能性はある。考えているうちに、兵士達の話題が俺の事になった。
「あんまり大声を出すなよ。奥にシュラボス人が寝ているんだ」
「おっと、起こしちまったかな」
足音が近付き、誰かが覗き込む気配がした。俺は思い切って目を開けた。
グーデオンの街中を、デリムは足早に歩いていた。兵士の詰所にエウドクシスを引き渡し、ロータス川を横切ろうとして、対岸に渡るには上流へ行かねばならないと聞き、遡って渡し舟を見つけ、交渉して西岸へ渡り、再びロータス川沿いに河口まで歩いているのであった。グーデオンの西岸は大きな船の停泊所になっており、小さな家々が建て込んでいる東岸に比べると何もない分、広々としていた。
イルカの石像が見えてきた。河口の両側に一基ずつ建立されていて、近付いてよく見ればイルカそのものではなく、人間の手足がイルカの胴体に刻まれていた。魚神を祭ったものであろう。
石像は傾きかけた太陽の光を浴びて、赤く輝いていた。石像の近くには、船乗りの溜まり場がある。
旅人は、ここで船長と交渉して便乗させてもらうことができる。
しかし、デリムはあっさりと溜まり場を通り過ぎた。デリムの銀髪も、夕陽に照らされて赤味を帯びている。彼は足をますます早めて、郊外へ出る街道を進んだ。
グーデオンの隆盛を表すかのように、郊外へ出てもなかなか人通りは途切れない。デリムの銀髪を奇異な表情で眺める輩もいる。
夕陽が海に半分沈んだ頃、漸く人通りが途絶えた。海沿いに伸びる街道は半ば砂に埋もれ、左側にまばらに生えている林にも、小石が多く裸足で歩くには向かない砂浜にも人気はない。デリムは周囲を慎重に見回した後、街道を逸れて波打ち際へ歩いて行った。
「海にそして川にいるもの、あらゆる水に住まい、水を司るものよ。死の神が名のもとに、汝の存在を知るデリムが命じる。水の羽衣を持つアカリウスよ、我が元へ来れ」
沖合いに、突如として大波が起こった。大波は白い泡を立てながら轟々と波打ち際まで押し寄せてきた。デリムは動かなかった。彼の背丈よりも遥かに高い波は、デリムの前で、ぴたりと止まり、急に形を崩した。
大量の海水が落ちた。盛大な水飛沫と水煙が、デリムの衣装を濡らした。落ちた波は、デリムを中心に左右に広がって消えた。水煙が消えると、そこには滝のように真っ直ぐな長い髪を持つ半透明の人物が出現していた。その髪も体も、背後から照らし出される夕陽の色に染まり、赤味がかっていた。
「死の神の名において、私を呼び出したのは誰か」
水神は、びしょ濡れのデリムをじろりとひと睨みしてから口を開いた。
「私はデリム。日の御子の命により、近頃この辺りをうろついている怪物について調べている。ご協力願いたい」
「あれは、日の御子様がお仕置きのために送られたものではないか。そもそもお前が名乗る通りの者であるという証拠はあるのか」
デリムは持っていた双槍を見せた。懐疑的なアカリウスの表情が、驚きに変った。
「地神の杖ではないか。なにゆえ、お前が持ち歩いているのだ」
「ユムステル殿は私が怪物と戦えるように、これを差し出した。信用してもらえまいか」
水神は双槍とデリムを見比べながら、ううむと唸った。水神の足元を取り囲む波も、白く泡立った。デリムは水神の気が済むまで静かに待っていた。やがて水神はおお、と声を上げた。
「すると、あの怪物は日の御子様の手の者ではないのか。大変だ、火神と風神がこの先の南海で食われたのだ。怪物は神の言葉を話し始めた。どんどん進化している」
「なるほど、腑に落ちた。ところで、アカリウス殿。怪物には神の持ち物しか通用しないようなのだ。できれば、水の羽衣を貸して欲しいのだが」
水神は躊躇い、首を振った。夕陽に赤く染まった髪がさらさらと左右に揺れた。
「地神は性格がよいからな。私の羽衣が何の役に立つというのだ。私はこれを手放せない。お前、日の御子様に火神と風神が食われたことをきちんと報告するのだぞ。恐らく、既にご存知であろうが。きちんと仕事をしないと、怪物に食われてしまう。火神と風神のように。おお、人間が近付いて来たようだ。お前の無事を祈ってやろう」
水神は波間に沈みながら沖へと消え去った。水神と話している間に刻々と時は過ぎ、夕陽の最後の光が、海辺を照らしていた。デリムは、左右を見回した。
グーデオンの方角から、走ってくる人影があった。長い髪を風に靡かせているが、服装と体格からして明らかに男性である。
「おーい、待ってくれ」
デリムは待った。それはエウドクシスであった。
「まだ横になっていた方がいい。遠慮はいらない」
「ここは?」
「レグナエラ王国に所属するグーデオンだ。お前、悪い奴らに殺されそうになったんだってな。ソリス陛下の特別臨検使であるデリム様が言っていたぞ。こっちの言葉が話せるなら、ここは港町だからいくらでも仕事は見つかる。もう、シュラボスには帰りたくないだろう。なあ、エウドクシス」
俺を助けてくれた男はデリムという名前らしい。
記憶が欠落しているが、俺は身の上を奴に話したのか。殺されそうになったのは本当だが、仕組まれた罠にかかったとはいえ、そもそも親父の後妻に手を出した俺も悪いのだから、どちらが悪いかは一概には言えない。
ともかく、ここの連中には俺はいい奴として紹介されているようだ。まずは一安心だった。俺は顎を引いて同意を表した。意思に従って顎が動いたことに、言い知れぬ感動を覚えた。
兵士達は、己に感動している俺を見て疲れが出たのだと解釈し、俺を寝かせたままその場を離れた。すぐ隣の部屋が、彼らの居場所のようだ。ここは何かと首を巡らすと、どうも寝所のようだった。
毒を飲まされて飲まず食わずで海を漂流していた割りには、俺の状態はまずまずだった。
あの兵士達が適切な看病をしてくれたに違いない。兵士達はまるで軽い病人を扱うように緊張感がなかった。
レグナエラ王国の医療はシュラボス島よりよほど進んでいる。差し当ってすることもないので、俺は横になったまま目を閉じて、今後の身の振り方を考えてみた。
彼らの言う通り、シュラボス島には戻れない。生きて戻れば親父は内心喜んでくれるかもしれないが、いずれイニティカに口実を設けられて殺されるのが落ちである。
ここグーデオンの地名は、俺も誰かに聞いた覚えがあった。シュラボス島との交易を主にしている都市だ。
仕事は確かにたくさんあるだろう。だが、それは危険も多いということだ。シュラボス島の人間が多く出入する場所でうろうろしていれば、誰かが俺に気付いてイニティカや弟達の耳に入れるかもしれない。
どこにいようと彼女らの耳に入れば、シュラボス島に戻るのと同じことである。
俺に合った仕事を見つけるのは難しいかもしれないが、もっと北方の内陸へ移動して、できれば聞いた事もないような土地で生活するのがいい。勿論、俺をこんな目に合わせた弟達を許すつもりはない。いつか何らかの形で仕返しをしてやる。だが、まずは俺自身を生かさなければならない。
「なに、ソリス陛下が?」
「しっ、奥にシュラボス人がいる」
隣の部屋から席を立つ音がした。俺は目を閉じたまま、眠っている振りをした。誰か俺の様子を窺っているようだ。俺は目を開けたい衝動に耐えた。長すぎる沈黙の後、会話が再開された。
「出入の商人から口伝えで耳に入った話だから、まだ確かなことはわからない。どうもお加減が悪いようだ」
「公式な通達は出ていないよな。王様が倒れたら、俺達どうしたらいいんだ?」
「危急時に備えて、主だった大臣による協議機関が用意されているんだよ。当面はこれで充分しのげるだろう。俺達も失業せずに済むって訳さ」
「でも、こんな時に北方の野蛮な民族が攻めてきたら厄介だ。やっぱり他の国には知られないに越したことはないぜ」
兵士達は額を寄せて話し合っているのか、声は小さく発音も不明瞭だった。俺は目を閉じているのを幸い、耳を銅鑼のように大きくして集中した。
ソリス王がどうやら病気らしい、という情報は、俺にはぴんと来なかった。シュラボス島にいた時なら、親父の仕えている王様が倒れたとなれば、一大事だと大騒ぎしただろう。レグナエラの王様の健康が俺にどう関わるのか、今の状態では判断しかねた。
「そうだ、あの特別臨検使には伝えなくていいのか」
「デリム様か。もうレグナエラへ向けて出発した筈だ。えらく急いでいたからな。もしかして、もう耳に入っているのかもしれない。知らなくても、首都へ着けば自然にわかるだろう」
話が途切れて、誰か新しい人間が加わったような音がした。遠慮のない大声が聞こえてきた。
「今そこで、ユノス近郊の山奥が火事になっていると聞いたぞ」
「ああ、俺も聞いた。雨みたいに凄い落雷があって、物凄い竜巻が起きたんだってさ」
「トリニ島も最近、地震が多いそうだ。不穏な世の中になってきたな」
俺は起きようかどうか迷った。兵士達の話を聞いていて、王国の中心地であるレグナエラに行こうかと思いついたのだ。確かな記憶ではないが、内陸の方にあった筈である。
少なくともここよりは北方にある。大きな都市ならば、仕事を見つけるのも人々に紛れるのも容易だろう。
俺を助けてくれたデリムとかいう奴に頼めば、金がなくても自然にレグナエラまで連れて行ってもらえるのではなかろうか。
奴は既に出発しているという。海路で出航されてはどうしようもないが、陸路ならば追いつく可能性はある。考えているうちに、兵士達の話題が俺の事になった。
「あんまり大声を出すなよ。奥にシュラボス人が寝ているんだ」
「おっと、起こしちまったかな」
足音が近付き、誰かが覗き込む気配がした。俺は思い切って目を開けた。
グーデオンの街中を、デリムは足早に歩いていた。兵士の詰所にエウドクシスを引き渡し、ロータス川を横切ろうとして、対岸に渡るには上流へ行かねばならないと聞き、遡って渡し舟を見つけ、交渉して西岸へ渡り、再びロータス川沿いに河口まで歩いているのであった。グーデオンの西岸は大きな船の停泊所になっており、小さな家々が建て込んでいる東岸に比べると何もない分、広々としていた。
イルカの石像が見えてきた。河口の両側に一基ずつ建立されていて、近付いてよく見ればイルカそのものではなく、人間の手足がイルカの胴体に刻まれていた。魚神を祭ったものであろう。
石像は傾きかけた太陽の光を浴びて、赤く輝いていた。石像の近くには、船乗りの溜まり場がある。
旅人は、ここで船長と交渉して便乗させてもらうことができる。
しかし、デリムはあっさりと溜まり場を通り過ぎた。デリムの銀髪も、夕陽に照らされて赤味を帯びている。彼は足をますます早めて、郊外へ出る街道を進んだ。
グーデオンの隆盛を表すかのように、郊外へ出てもなかなか人通りは途切れない。デリムの銀髪を奇異な表情で眺める輩もいる。
夕陽が海に半分沈んだ頃、漸く人通りが途絶えた。海沿いに伸びる街道は半ば砂に埋もれ、左側にまばらに生えている林にも、小石が多く裸足で歩くには向かない砂浜にも人気はない。デリムは周囲を慎重に見回した後、街道を逸れて波打ち際へ歩いて行った。
「海にそして川にいるもの、あらゆる水に住まい、水を司るものよ。死の神が名のもとに、汝の存在を知るデリムが命じる。水の羽衣を持つアカリウスよ、我が元へ来れ」
沖合いに、突如として大波が起こった。大波は白い泡を立てながら轟々と波打ち際まで押し寄せてきた。デリムは動かなかった。彼の背丈よりも遥かに高い波は、デリムの前で、ぴたりと止まり、急に形を崩した。
大量の海水が落ちた。盛大な水飛沫と水煙が、デリムの衣装を濡らした。落ちた波は、デリムを中心に左右に広がって消えた。水煙が消えると、そこには滝のように真っ直ぐな長い髪を持つ半透明の人物が出現していた。その髪も体も、背後から照らし出される夕陽の色に染まり、赤味がかっていた。
「死の神の名において、私を呼び出したのは誰か」
水神は、びしょ濡れのデリムをじろりとひと睨みしてから口を開いた。
「私はデリム。日の御子の命により、近頃この辺りをうろついている怪物について調べている。ご協力願いたい」
「あれは、日の御子様がお仕置きのために送られたものではないか。そもそもお前が名乗る通りの者であるという証拠はあるのか」
デリムは持っていた双槍を見せた。懐疑的なアカリウスの表情が、驚きに変った。
「地神の杖ではないか。なにゆえ、お前が持ち歩いているのだ」
「ユムステル殿は私が怪物と戦えるように、これを差し出した。信用してもらえまいか」
水神は双槍とデリムを見比べながら、ううむと唸った。水神の足元を取り囲む波も、白く泡立った。デリムは水神の気が済むまで静かに待っていた。やがて水神はおお、と声を上げた。
「すると、あの怪物は日の御子様の手の者ではないのか。大変だ、火神と風神がこの先の南海で食われたのだ。怪物は神の言葉を話し始めた。どんどん進化している」
「なるほど、腑に落ちた。ところで、アカリウス殿。怪物には神の持ち物しか通用しないようなのだ。できれば、水の羽衣を貸して欲しいのだが」
水神は躊躇い、首を振った。夕陽に赤く染まった髪がさらさらと左右に揺れた。
「地神は性格がよいからな。私の羽衣が何の役に立つというのだ。私はこれを手放せない。お前、日の御子様に火神と風神が食われたことをきちんと報告するのだぞ。恐らく、既にご存知であろうが。きちんと仕事をしないと、怪物に食われてしまう。火神と風神のように。おお、人間が近付いて来たようだ。お前の無事を祈ってやろう」
水神は波間に沈みながら沖へと消え去った。水神と話している間に刻々と時は過ぎ、夕陽の最後の光が、海辺を照らしていた。デリムは、左右を見回した。
グーデオンの方角から、走ってくる人影があった。長い髪を風に靡かせているが、服装と体格からして明らかに男性である。
「おーい、待ってくれ」
デリムは待った。それはエウドクシスであった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる