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3 未亡人のお願い *

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 アデラは散々俺とヤッて、王都へ戻った。
 往復の旅程を考えると、休暇を全部俺とのセックスに費やした計算である。

 普段使わない筋肉を酷使こくししたせいで、筋肉痛になった。
 こんな時に限って、作り置きの湿布薬が切れている。

 家の周囲をざっと見たが、材料はそろわなかった。
 薬草を探しに行くのも、村まで行くのも億劫おっくうで、俺はひたすら耐える道を選んだ。


 コンコン。ノックの音がした。

 「はい、どうぞ」

 俺は、起き上がるのが面倒臭くて、ベッドに寝たまま応じた。ドアには仕掛けが施してある。誰が来たのかわかっていた。

 扉は開かない。

 思い出した。この人は、こういう人だった。アデラとは違う。俺はベッドから降りて、扉へ向かった。腰と背中が痛い。

 「こんにちは、ザックさん」

 バルノ村に住む鹿人の薬師が立っていた。手提げ籠に背負い籠は、いつものスタイルである。

 「こんにちは。ウィロウ夫人。庭の薬草なら、好きなだけ持っていってもらって大丈夫ですよ」

 俺は筋肉痛に耐え、笑顔を作った。うちの薬草を使う代わりに、手に入りにくい品物を取り寄せる窓口になってもらっている。時には、薬を貰う事もある。

 この間、猟師のマイロが俺にあてがおうとした嫁候補は、彼女であった。恐らくは、事前の了解など一切得ておらず、頼まれてもいなかったと思われる。

 「ありがとうございます」

 ウィロウは、丁寧にお辞儀をした。背中のカゴの縁が、後頭部に当たった。中身は空である。

 「もしかして、お加減が悪いのですか?」

 薬師も仕事柄、医者のような見立てをすることがあった。時には、それが患者の命を左右する。

 「少しだけ。ただの筋肉痛です」

 「まあ、大変。ちょうど、凝りに効く塗り薬を持ち合わせています。塗ってあげます」

 彼女は、黒目がちの瞳を大きく見開いた。

 「自分で塗るから」

 「自分では、塗りにくいでしょう。さあ、うつ伏せになってください」

 鹿人薬師は、ぐいぐいと俺をベッドへ押し戻した。細い手足にそぐわない力だった。
 俺は腰が痛くて、逆らう気力が出ない。

 「いえ。本当に大丈夫です」

 「そうですか?」

 ウィロウはベッドへ腰掛けた俺を、ぐい、と押した。容赦ない圧力である。

 「あうちっ」

 俺は、あえなく敗北した。相手が薬師でも、女性の前で服を脱ぐのは躊躇ためらいがある。それに、うつ伏せであった。脱ぎにくい。

 「では、失礼します」

 彼女は、俺の服を思い切り上下に引いた。背中は丸出し、尻も半分くらいは出た気がする。

 「動かないで」

 半裸の俺をベッドへ残し、彼女は背負い籠を下ろし、手提げ籠から広口瓶を取り出した。茶色い乳液状の物がたっぷり詰まっていた。

 ぺたっ。

 背中がひんやりとした。彼女の手が、滑るように俺の背中を撫でるにつれ、さわやかな香りが広がった。

 「薬を早く馴染なじませるために、マッサージします」

 肩揉みから始めた。マッサージなんて、娼館のサービスで受けて以来かも。

 「ありがとうございます。ボブは元気ですか」

 心地よくて、寝落ちしそうだ。眠気覚ましに話しかけた。
 ウィロウは息子と二人暮らしである。夫は亡くなっていた。

 「ええ。おかげさまで。一人で留守番ができるようになりました。料理も簡単な物なら作れます」

 話しながら、腰の辺りも、優しく丁重に揉みほぐしてくれる。

 「それは、よかった。この薬、後で分けて貰えますか。とても効きそうです」

 「お役に立てそうで、嬉しいです」

 ウィロウの手は、尻にかかっていた。急に力が強くなる。尻を揉みほぐそうとすれば、当然それだけの力が必要だ。俺は反射的に尻に力を入れた。

 「あ、その辺で結構です」

 「ザックさん、動かないで。腰を痛めます」

 未亡人は手を引かなかった。俺のズボンをさらに引き下げる。尻がスースーした。
 起き上がろうにも、彼女は両足の上に乗っていて、尻に体重をかけている。

 「この辺り、もの凄く凝っています。使ったら、お手入れしないといけません」

 ぐいぐい尻を揉まれる。薬は塗らず、手だけでマッサージしているようだ。
 俺の息子が、ぴくりとした。まずい。そんなつもりはないのに。

 「ありがとうございます。もう、大丈夫です」

 「ここで止めたら、効果半減です。血の巡りを良くするために、足の付け根をほぐします」

 ウィロウは、足から降りると、器用に俺を表へ返した。

 「あ‥‥」

 「こ、これは、違うんです。ウィロウ夫人。すみません」

 俺の息子が天を指していた。性欲じゃなくて、刺激でってしまうことは、よくあることだ。
 未亡人で、薬師なら知っているだろう、とは思うが、恥ずかしいには違いない。俺は、必死で弁解した。

 「もちろん、わかっています。さあ、続きをしましょう。邪魔だから、パンツは脱ぎましょうね」

 ウィロウはにっこりして、鮮やかに俺の下半身から布を取り去った。ぶるん、とひと揺れした俺の陰茎は、堂々屹立したままだった。

 「それは、ちょっと」

 「は~い。足を曲げますよ」

 彼女は逆らう間も与えず俺の両足を持ち、膝を曲げて体の脇へ押し付けるようにする。
 ぐうっ、と脚の筋肉が伸ばされる。健康的な気持ち良さ。

 「順番にほぐしますからね。脚はこのまま保ってください」

 彼女は両手を脚の付け根に置き、軽く押す。血の巡りが良くなった気がした。これは純粋なマッサージだ。
 俺は、余計なことを考えないよう、股の間に近付く彼女の頭から目を逸らした。

 パクリ。

 「! ウィロウ夫人」

 未亡人は、剥き出しだった俺の息子を根元までくわえ込んだまま、上目遣いにこちらを見た。

 「ほほふぁ、いひわん、ほっへあふあ」

 「凝っているっていうか‥‥あ」

 息子に舌が絡みつく。先っぽが、喉に当たっているのがわかる。そのまま舌と唇でしごかれた。乳首に快感が走る。

 「あっ」

 彼女の手が、俺の乳首をいじっていた。俺はたちまち達してしまった。

 「す、すみません。俺っ」

 俺は、まだ起き上がることができなかった。俺の精液を飲み下した彼女が、俺の上に乗ってきたのだ。

 「良い薬をいただきましたわ。でも、済まないとおっしゃるなら、今度は私をほぐしてください」

 にこりと笑い、唇の端から垂れた白い液を、手の甲でぬぐう。別の手は、グンニャリとした俺の息子を握りしめ、上下に擦っていた。

 「ボブには兄弟が必要です。大丈夫。あなたを困らせたりはしません。種さえもらえれば、私が育てます。王都に恋人がいらっしゃるのでしょう? この間、お見かけしました。随分と激しくなさって、さぞかしお疲れかと思ってお見舞いに来ましたの。でも、思ったよりお元気そうで良かったです」

 「いや、あれは」

 恋人ではない、と言いかけて、呑み込んだ。この未亡人は、アデラをバルノ村ではなく、ここで見たのか? つまり、ヤっているところを?

 だから、俺の筋肉痛の部位を知っていたのか。

 「ほうら。もう元気になりました。薬とマッサージ効果です」

 俺の息子は、復活を遂げていた。
 ウィロウが、スカートを持ち上げた。むわっと女の匂いが鼻を突く。露出した性器が俺の目を奪う。彼女は、下着をつけていなかった。

 「ほぐすって、一体どうやって?」

 俺は、恐る恐る尋ねてみた。

 「こうやって、です」

 彼女は、その穴に俺の息子を全部収めた。


 「ザックさんは、療養中ですから、動かないでくださいね」

 そう言って、ウィロウは腰を振り出した。

 ぬちゃっ、ぬちゃっ。

 俺を包む彼女の中は、温かく濡れていた。その壁が、俺にまとわりつき、奥へ奥へと誘い込む。

 「ああっ。この感じ。久しぶりっ」

 俺の上で、彼女が弾む。ぽよん、ぽよん、と乳房が跳ねる。思わず手を伸ばした。


 二発もヤってしまった。子種も、存分に注ぎ込んだ。

 「信頼できて、後腐れのない人を、探していたんです」

 帰り支度をしながら、ウィロウが説明した。

 「結婚を迫られても困りますし、同じ村の中で揉めたら、気まずいですからね」

 やっぱり俺は、村の仲間とは認定されていないようだ。
 種族も違うし、こちらも求めてはいない。
 用があれば、互いに行き来する。そのぐらいの距離感で丁度良い。


 彼女が俺の家を出たのは、午後を回っていた。背負い籠は、空のままである。
 留守番のボブに、何て言い訳するつもりだろう。俺の知ったこっちゃないが。

 「もし、いなかったら、またお願いしますね」

 彼女は、満ち足りた顔で帰っていった。


 ウィロウ夫人の塗り薬は、とてもよく効いた。俺の薬知識は自己流で、とても本職には及ばないのだ。
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