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第三章 明巴
5 お披露目された
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女性陣はステージの近くにいた。
由香子は、一段と若やいだ格好をしていて、現役女子大生にしか見えない。明巴も雪も服装とメイクで周囲に溶け込んでいる。
フタケは、広場にいたのだが、一旦正門まで戻ってみたのだ、と言い訳した。
「あなたたちが待たせるから、ミスコンに誘われたじゃないの」
ミス文化祭かミス大学か何か、美人コンテストに出場するよう誘われたようである。さりげなく自慢している。
「出たら優勝間違いにゃあわ」
「ほかの子たちに悪いわ」
由香子はフタケのお世辞をさらりと受け流した。人目を気にしてか、明巴と雪は女同士2人並んでいる。由香子はフタケと並んではいるものの、距離をおいていることで、周囲を警戒していると知れた。
「それじゃあ早速、権堂グループの研究を見に行きましょう」
「企業じゃなくて、一応大学の研究だよ」
真っ先に遥華の元へ行くことになった。俺はまた実験の時のことを思い出して、顔が熱くなる気がした。
「ええと、こっちの方だわ」
案内図を辿りつつ、フタケが言う。
遥華の研究が展示されている場所は、以前俺が案内された場所とは違っていた。
少なくとも、恥ずかしい映像をそのまま流される心配はなさそうだ。俺は内心胸を撫で下ろした。
展示室は、学部の建物の一室にあった。
「ようこそいらっしゃいました」
入り口をくぐる前から、白衣を着た遥華に出迎えられた。
真面目な学問の展示には、広場ほど人がおらず、来客は俺たちだけである。
遥華は最後に会ったときと全く変わっていなかった。気さくな調子で、しかし距離を保って、フタケやコトリとも当たり障りのない挨拶を交わした。
女性陣にも、そつなく応対し、由香子たちも同じように返していた。大人同士のやり取りといった感じである。平和な光景なのに、見えない緊張を感じてしまうのは、俺が後ろめたいせいだろうか。
展示室は広い部屋で、壁には説明文がパネルに表示されていた。部屋の半分は相撲の土俵のような台で占められていて、残り半分の端には、大型スクリーンがあった。
その前には片方だけの手袋が、たくさんのコードにつながれて置いてある。
「あちらは、また別の研究室の展示。ロボット同士対戦をすることになっているの。まだ調整が終わらないそうよ。ロボットをお見せできないのが残念ね」
俺を含めた男性陣が露骨に残念な顔つきになる。ロボット同士が戦うところを見てみたかった。
女性陣はロボット対決には一向興味を示さなかった。
「では、あちらが権堂さんの研究ですか」
由香子が手袋を指差した。遥華は頷いた。
「パソコン画面上で仮想現実として体験した感覚を、実際に再現する装置です。まだ片手分しかお見せできないのですが」
一般向けならば妥当な線であろう。俺が体験したような装置は、とても見せられまい。一行は装置の前に移動した。遥華が俺たちを見回す。
「どなたか試してご覧になりますか」
「手を入れるんでしょう?」
互いに顔を見合わせた。雪が心配そうに聞く。俺は体験しても構わなかったが、ここで積極的に手を挙げたものかどうか。
「滑りをよくするためにクリームを塗りますが、手あれの心配はありませんよ。終わったら洗って落とします」
遥華が励ますように言った。最初に声を発した雪が、試してみることになった。
言われたようにクリームを塗り、手袋に手を入れる。
遥華があちこち点検した後、スイッチを入れた。パソコンは既に電源が入っていたようで、暗い画面が音もなく明るくなった。
遥華がキーボードを叩くと、さらに画面が切り替わる。
学校でよく見かけるような、グレーのスチール製の机が出てきた。机の上には、いくつか物が載っている。写真に見えた。
「どれでも好きな物を触ってください」
「あ、これ動かしていいんですか」
戸惑いながらも雪は手袋をつけた手を持ち上げた。写真と見えた中に、人の手が現れた。雪が手を動かすにつれて、画面上の手も動く。雪は白木の積み木を掴んだ。
「あっ。凄い」
「どうしたの」
由香子が尋ねる。雪はぱっと手を離した。積み木は落ちて、乾いた音を立てた。
「ちゃんと触った。じゃあ、これは?」
雪は赤いゴムまりを、むんずと掴んだ。ぱっと表情が明るくなる。
「面白~い。ちゃんとゴムでできているのが、わかるわ」
ぐにょぐにょとゴムまりを握る。握ったゴムの感触が手袋を通じて再現されるらしい。パッとゴムまりを離すと、跳ねて机の外へ消えてしまった。
もう雪にためらいはない。続いて陶製のコーヒーカップに手を伸ばす。把手があるのに、それを避けて本体を持った。
「熱いっ」
中には湯気の立つコーヒーが入っていた。手を離れたカップは机の端に当たり、粉々に割れた。破片はきれいに机から落ちた。
「すご~い。面白いわ、これ」
雪は手袋を脱ぐのが惜しそうだった。雪が本気で面白がっているのが通じたらしく、遥華も楽しそうだ。
「カップの破片を飛ばしたのは、触らせないためかしら」
これまで黙って様子を見ていた明巴が口を開いた。遥華は明巴を見、微笑を浮かべた。
「ええ。破片を皮膚が切れるまで握りしめようとする人がいるかもしれないから。熱いコーヒーも、人によっては設定を変える必要があるかもしれませんね」
「面白いわね」
俺は何故かドキドキした。しかし、何も起こらなかった。
ともかくもフタケは義理を果たすことができた。俺たちは、展示室を後にした。
「お腹すいたと思ったら、もうお昼なのね」
雪が時計を見て言った。急に、あちこちから漂う食べ物の匂いが、美味しそうに感じられた。女性陣はどうするどうすると話し合いを始める。男性陣に選択の自由はない。
「ここで何か珍しい物でも食べていきましょう。足りなかったら、後でケーキか何か甘い物を食べたらいいわ」
由香子の意見で、その辺に立ち並ぶ屋台を物色する。パンフレットを見て明巴が言う。
「アジア料理の店というのがあるわ」
「いいかも」
それは留学生のグループが企画した店で、屋台ではなく、教室を借りていた。
行ってみると、本格的な香辛料の匂いが教室の外まで漂っている。、
生春巻やミーゴレン、ナシゴレン、トムヤムクン、チャイ、ラッシーといった普段聞かない料理名が、それぞれの料理の説明とともにメニューにあった。国旗と国名も添えてある。
写真付きのメニューでイメージしやすく、助かった。6人で行ったので、俺たちはいろいろな料理を注文して、みんなで取り分けることにした。
由香子と明巴は海外旅行の経験があった。フタケはハワイに何度か家族で行ったことがあるという。残り3人は海外経験がなく、こうした料理を食べるのも初めてのことであった。
「美味しい。焼そばより美味しいわ、これ」
ミーゴレンかナシゴレンのどちらかを食べた雪が声を挙げた。どちらかが焼そばみたいなもので、どちらかがチャーハンみたいなものである。メニューを下げられてしまったので、もう俺にはわからなかった。
近くで給仕する留学生が、嬉しそうに微笑むのが見えた。俺も一通り食べてみた。見た目は日本の料理と似ていても、調味料が違うのだろう、初めての味だ。
料理の中に入っている、ひどく特殊な香味の葉っぱが苦手だった。
形容し難い味。その葉っぱを除けば、なかなか美味だった。ヨーグルト風味の飲み物であるラッシーは気に入った。
安い値段でお腹いっぱいに食べることができた。
俺たちは腹ごなしにぶらぶら歩きながら、なんとなく出口の方へ向かった。満腹感で気が緩んだのか、由香子とフタケだけでなく、雪はコトリと並び、明巴は俺と並んで歩いていた。さすがに腕を組むことまではしない。
「ユ、フジノ、くん?」
正面から名前を呼ばれ、俺は沿道の屋台から視線を戻した。
磯川霞が、1人で立っていた。
高校の同級生である。夏に同級会で再会した時には様子がおかしかったのだが、室越棗の件を聞けば無理のないことだった。
霞と棗は仲が良かったのだ。そういえば、こちらの大学に進学した、という話を聞いた覚えがある。
「磯川って、ここだったんだっけ」
霞の顔がたちまち曇る。
「言ったでしょう。今日はデートなの? 浪人中に余裕なのね」
「ユーキ、こちらはどなたかしら」
明巴が尋ねながら、腕を思い切り俺に絡ませてきた。俺は動悸を抑えながら、霞を高校の同級生と紹介した。
明巴のことをどのように紹介しようかと迷う間もなく、彼女は自己紹介した。
「初めまして。私は梶尾明巴。俺の学力は私が保証するわ。受験生もたまには息抜きが必要なのよ。でも、そろそろ帰って勉強しないと。折角お会いできたのにお話もできなくて残念だけど、これで失礼するわね。お元気で」
一気に言い終えるなり、俺の腕を引いて歩き出した。
霞は追ってこなかった。フタケたちが大分先まで行っていたのを、明巴のおかげでどうにか追いついた。
雪とコトリは、俺たちが消えたことに途中から気付いていた。
「いや~ん。2人きりでどこかへ消えるなんて、大胆ねって言ったところなのに」
「あれ。ユーキたち、どこかへ行っとったんだ」
由香子とフタケはまるきり気付いていなかった。その日は現地解散ということで、正門のところで俺たちは女性陣と別れた。
「ところで、途中ユーキたち、どこへ行っとったんだわ?」
電車を待っている間に、フタケが尋ねた。俺が霞と出くわした顛末を話すと、フタケが軽く目をみはった。
「へえ、梶尾先生も大胆だな。おみゃあ、本気で惚れられたんじゃにゃあか」
「ふーたは女神のこと、本気じゃないのか」
コトリがびっくりして訊いた。フタケはにやにや笑った。
「俺はそんなドジは踏まんよ」
「そうなんだ」
納得のいかない様子でコトリが呟く。雪のことを、真面目に考えているらしかった。
由香子は、一段と若やいだ格好をしていて、現役女子大生にしか見えない。明巴も雪も服装とメイクで周囲に溶け込んでいる。
フタケは、広場にいたのだが、一旦正門まで戻ってみたのだ、と言い訳した。
「あなたたちが待たせるから、ミスコンに誘われたじゃないの」
ミス文化祭かミス大学か何か、美人コンテストに出場するよう誘われたようである。さりげなく自慢している。
「出たら優勝間違いにゃあわ」
「ほかの子たちに悪いわ」
由香子はフタケのお世辞をさらりと受け流した。人目を気にしてか、明巴と雪は女同士2人並んでいる。由香子はフタケと並んではいるものの、距離をおいていることで、周囲を警戒していると知れた。
「それじゃあ早速、権堂グループの研究を見に行きましょう」
「企業じゃなくて、一応大学の研究だよ」
真っ先に遥華の元へ行くことになった。俺はまた実験の時のことを思い出して、顔が熱くなる気がした。
「ええと、こっちの方だわ」
案内図を辿りつつ、フタケが言う。
遥華の研究が展示されている場所は、以前俺が案内された場所とは違っていた。
少なくとも、恥ずかしい映像をそのまま流される心配はなさそうだ。俺は内心胸を撫で下ろした。
展示室は、学部の建物の一室にあった。
「ようこそいらっしゃいました」
入り口をくぐる前から、白衣を着た遥華に出迎えられた。
真面目な学問の展示には、広場ほど人がおらず、来客は俺たちだけである。
遥華は最後に会ったときと全く変わっていなかった。気さくな調子で、しかし距離を保って、フタケやコトリとも当たり障りのない挨拶を交わした。
女性陣にも、そつなく応対し、由香子たちも同じように返していた。大人同士のやり取りといった感じである。平和な光景なのに、見えない緊張を感じてしまうのは、俺が後ろめたいせいだろうか。
展示室は広い部屋で、壁には説明文がパネルに表示されていた。部屋の半分は相撲の土俵のような台で占められていて、残り半分の端には、大型スクリーンがあった。
その前には片方だけの手袋が、たくさんのコードにつながれて置いてある。
「あちらは、また別の研究室の展示。ロボット同士対戦をすることになっているの。まだ調整が終わらないそうよ。ロボットをお見せできないのが残念ね」
俺を含めた男性陣が露骨に残念な顔つきになる。ロボット同士が戦うところを見てみたかった。
女性陣はロボット対決には一向興味を示さなかった。
「では、あちらが権堂さんの研究ですか」
由香子が手袋を指差した。遥華は頷いた。
「パソコン画面上で仮想現実として体験した感覚を、実際に再現する装置です。まだ片手分しかお見せできないのですが」
一般向けならば妥当な線であろう。俺が体験したような装置は、とても見せられまい。一行は装置の前に移動した。遥華が俺たちを見回す。
「どなたか試してご覧になりますか」
「手を入れるんでしょう?」
互いに顔を見合わせた。雪が心配そうに聞く。俺は体験しても構わなかったが、ここで積極的に手を挙げたものかどうか。
「滑りをよくするためにクリームを塗りますが、手あれの心配はありませんよ。終わったら洗って落とします」
遥華が励ますように言った。最初に声を発した雪が、試してみることになった。
言われたようにクリームを塗り、手袋に手を入れる。
遥華があちこち点検した後、スイッチを入れた。パソコンは既に電源が入っていたようで、暗い画面が音もなく明るくなった。
遥華がキーボードを叩くと、さらに画面が切り替わる。
学校でよく見かけるような、グレーのスチール製の机が出てきた。机の上には、いくつか物が載っている。写真に見えた。
「どれでも好きな物を触ってください」
「あ、これ動かしていいんですか」
戸惑いながらも雪は手袋をつけた手を持ち上げた。写真と見えた中に、人の手が現れた。雪が手を動かすにつれて、画面上の手も動く。雪は白木の積み木を掴んだ。
「あっ。凄い」
「どうしたの」
由香子が尋ねる。雪はぱっと手を離した。積み木は落ちて、乾いた音を立てた。
「ちゃんと触った。じゃあ、これは?」
雪は赤いゴムまりを、むんずと掴んだ。ぱっと表情が明るくなる。
「面白~い。ちゃんとゴムでできているのが、わかるわ」
ぐにょぐにょとゴムまりを握る。握ったゴムの感触が手袋を通じて再現されるらしい。パッとゴムまりを離すと、跳ねて机の外へ消えてしまった。
もう雪にためらいはない。続いて陶製のコーヒーカップに手を伸ばす。把手があるのに、それを避けて本体を持った。
「熱いっ」
中には湯気の立つコーヒーが入っていた。手を離れたカップは机の端に当たり、粉々に割れた。破片はきれいに机から落ちた。
「すご~い。面白いわ、これ」
雪は手袋を脱ぐのが惜しそうだった。雪が本気で面白がっているのが通じたらしく、遥華も楽しそうだ。
「カップの破片を飛ばしたのは、触らせないためかしら」
これまで黙って様子を見ていた明巴が口を開いた。遥華は明巴を見、微笑を浮かべた。
「ええ。破片を皮膚が切れるまで握りしめようとする人がいるかもしれないから。熱いコーヒーも、人によっては設定を変える必要があるかもしれませんね」
「面白いわね」
俺は何故かドキドキした。しかし、何も起こらなかった。
ともかくもフタケは義理を果たすことができた。俺たちは、展示室を後にした。
「お腹すいたと思ったら、もうお昼なのね」
雪が時計を見て言った。急に、あちこちから漂う食べ物の匂いが、美味しそうに感じられた。女性陣はどうするどうすると話し合いを始める。男性陣に選択の自由はない。
「ここで何か珍しい物でも食べていきましょう。足りなかったら、後でケーキか何か甘い物を食べたらいいわ」
由香子の意見で、その辺に立ち並ぶ屋台を物色する。パンフレットを見て明巴が言う。
「アジア料理の店というのがあるわ」
「いいかも」
それは留学生のグループが企画した店で、屋台ではなく、教室を借りていた。
行ってみると、本格的な香辛料の匂いが教室の外まで漂っている。、
生春巻やミーゴレン、ナシゴレン、トムヤムクン、チャイ、ラッシーといった普段聞かない料理名が、それぞれの料理の説明とともにメニューにあった。国旗と国名も添えてある。
写真付きのメニューでイメージしやすく、助かった。6人で行ったので、俺たちはいろいろな料理を注文して、みんなで取り分けることにした。
由香子と明巴は海外旅行の経験があった。フタケはハワイに何度か家族で行ったことがあるという。残り3人は海外経験がなく、こうした料理を食べるのも初めてのことであった。
「美味しい。焼そばより美味しいわ、これ」
ミーゴレンかナシゴレンのどちらかを食べた雪が声を挙げた。どちらかが焼そばみたいなもので、どちらかがチャーハンみたいなものである。メニューを下げられてしまったので、もう俺にはわからなかった。
近くで給仕する留学生が、嬉しそうに微笑むのが見えた。俺も一通り食べてみた。見た目は日本の料理と似ていても、調味料が違うのだろう、初めての味だ。
料理の中に入っている、ひどく特殊な香味の葉っぱが苦手だった。
形容し難い味。その葉っぱを除けば、なかなか美味だった。ヨーグルト風味の飲み物であるラッシーは気に入った。
安い値段でお腹いっぱいに食べることができた。
俺たちは腹ごなしにぶらぶら歩きながら、なんとなく出口の方へ向かった。満腹感で気が緩んだのか、由香子とフタケだけでなく、雪はコトリと並び、明巴は俺と並んで歩いていた。さすがに腕を組むことまではしない。
「ユ、フジノ、くん?」
正面から名前を呼ばれ、俺は沿道の屋台から視線を戻した。
磯川霞が、1人で立っていた。
高校の同級生である。夏に同級会で再会した時には様子がおかしかったのだが、室越棗の件を聞けば無理のないことだった。
霞と棗は仲が良かったのだ。そういえば、こちらの大学に進学した、という話を聞いた覚えがある。
「磯川って、ここだったんだっけ」
霞の顔がたちまち曇る。
「言ったでしょう。今日はデートなの? 浪人中に余裕なのね」
「ユーキ、こちらはどなたかしら」
明巴が尋ねながら、腕を思い切り俺に絡ませてきた。俺は動悸を抑えながら、霞を高校の同級生と紹介した。
明巴のことをどのように紹介しようかと迷う間もなく、彼女は自己紹介した。
「初めまして。私は梶尾明巴。俺の学力は私が保証するわ。受験生もたまには息抜きが必要なのよ。でも、そろそろ帰って勉強しないと。折角お会いできたのにお話もできなくて残念だけど、これで失礼するわね。お元気で」
一気に言い終えるなり、俺の腕を引いて歩き出した。
霞は追ってこなかった。フタケたちが大分先まで行っていたのを、明巴のおかげでどうにか追いついた。
雪とコトリは、俺たちが消えたことに途中から気付いていた。
「いや~ん。2人きりでどこかへ消えるなんて、大胆ねって言ったところなのに」
「あれ。ユーキたち、どこかへ行っとったんだ」
由香子とフタケはまるきり気付いていなかった。その日は現地解散ということで、正門のところで俺たちは女性陣と別れた。
「ところで、途中ユーキたち、どこへ行っとったんだわ?」
電車を待っている間に、フタケが尋ねた。俺が霞と出くわした顛末を話すと、フタケが軽く目をみはった。
「へえ、梶尾先生も大胆だな。おみゃあ、本気で惚れられたんじゃにゃあか」
「ふーたは女神のこと、本気じゃないのか」
コトリがびっくりして訊いた。フタケはにやにや笑った。
「俺はそんなドジは踏まんよ」
「そうなんだ」
納得のいかない様子でコトリが呟く。雪のことを、真面目に考えているらしかった。
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