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第三章 出現
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シャラーラが席を立つ。ヴァルスとリズワーンも続く。周囲の観客は、席を立ったり手を振ったりして動いていた。
三人が退出するのを、気に留める者はいない。
「師匠!」
競技場の外へ出た彼女は、去り行くラトーヤの背中に呼びかけた。彼は立ち止まり、振り返って頷くと、再び歩き出す。
その歩みは緩やかに見えるのに、急ぐ三人の足は追いつかない。
「この方向は‥‥もしかして」
シャラーラは、その後ひたすら師の背中を追いかけた。リズワーンも無言で後を追う。
「家へ帰る方向じゃないね」
ヴァルスが言う。競技場の外は、ほとんど人気がない。店と呼べるような建物は、軒並み鎧戸を下ろしている。
見かけるのは、オランに到着したばかりらしい旅人か、急用で出歩く者ばかりである。威勢の良い印象がある露天商も、今日は暇そうだった。
ついに、師弟はオランを囲む壁から外へ出た。こちらの外側には、小さな家がまばらに立つばかりで、遠くへ伸びるような道は見当たらない。
訳はすぐに知れた。
墓地があった。
見通しの良い平地に、様々な形の墓標が並ぶ。
ラトーヤは、歩を緩めることなく、墓の間へ入って行った。後からシャラーラ、リズワーン、ヴァルスも続いた。
彼女の師が止まったのは、小さな墓石が二つ並んだ墓の前である。彼はその傍に立ち、三人が追いつくのを待った。
「よく戻ったね。そちらは、ご友人かな」
「旅の仲間です」
ラトーヤは、この世のものとは思えない美貌の持ち主だった。ヴァルスと変わらない若さと、シャラーラを育てた年月と経験を窺わせる落ち着きが同居して、不思議な佇まいである。
美醜に疎いリズワーンでも、彼の特異な美しさは感じ取れた。
「初めまして。わたくしは、ラトーヤ。シャラーラを支えてくれて、ありがとう」
「そ、そんな。当然のことです、はい」
恐らくラトーヤの美貌に圧倒され固まっていたヴァルスは、名乗るのも忘れて照れる。
リズワーンは、沈黙を守った。ラトーヤが話しかけたのが、自分ではないような気がした。
彼は、呼び寄せられた身である。仲間、とは違う。
「エル。ここは、君の両親が眠る場所だ」
「ああ」
シャラーラは、ふらふらと墓前に近づき、膝から崩れるようにして、両手をついた。形の良い天然石を台座の上に置いただけのそれは、周囲と比べ人の手が入っていることを感じさせた。
その墓石を、彼女が頭を撫でるように触れる。
残る三人は、シャラーラを見守る形となった。
二人分の石に均等に触れた後、彼女は座ったまま振り向いた。ラトーヤをまっすぐに見つめる。
「師匠。わたしはエルフのリズワーンを連れて参りました。これで、約束の条件が揃いました。お話を、聞かせてください」
ラトーヤは直接弟子に応えず、リズワーンを手招きした。考えるより前に、体が動いた。
彼はラトーヤと向かい合うようにして、シャラーラと、その両親の墓の前に立った。
「リズワーン」
ヴァルスと同様、彼も自己紹介をしていない。だが、ラトーヤが名前を知っていることを、不思議には思わなかった。彼は、相手の目を見返した。
途端に、周囲の景色が消えた。地上にラトーヤと二人、ただ立っている。
彼の姿もまた、リズワーンにはほとんど溶け消えるように感じられた。同時に、透明な瞳に引き込まれる。
「時は満ちた。わたくしたちは、なすべきことを為す」
ラトーヤの声が頭の中に響くと、リズワーンの前に、見覚えのある景色が立ち現れてきた。
戦で荒れ果てた、故郷の森。
亡くなった友の顔、顔、顔。古代遺跡。少年のユーニアス。
ラトーヤ。彼は、初めて会った何十年も前から、全く変わらぬ姿であった。
リズワーンの故郷は、戦で失われた。
ユーニアスのいた村に長く止まったのは、親しくなった人間の故郷だったからである。それも、彼の死去に耐えられず、捨てるつもりで離れたのだ。
倒れるまで旅を続け、目覚めた彼の前にいたのが、ラトーヤだった。
体が回復してからも、リズワーンは彼の元に留まった。その頃も彼は方々から助言を求められる身の上であったが、家を持たない旅の空であった。
ラトーヤはリズワーンに詮索をせず、彼と共にいることで、誰もリズワーンについて詮索しなかった。それが彼には落ち着ける環境だった。
ある夕方、オランへ向かう山道を、二人で急ぎ歩いていた。先方の都合で、出立が遅れてしまったのだ。
日が落ちれば、城門が閉まる。その頃、城壁の外側に村はなく、閉め出されれば野宿をしなければならなかった。
山賊の噂が絶えない道だった。門内へ入りさえすれば、たとえ軒下でも、山の中よりはるかに安全な寝床が得られる。
黙々と歩を進める二人の足が、同時に止まった。
前方に、賊の一団が見えた。彼らはこちらには気づかず、他の誰かを囲んでいた。隙間から見えるのは、人間の夫婦のようである。
「おらおら。有り金全部よこせって言っているんだよ」
「ケチケチするな。命の方が、大事だろ」
脅しの声が、離れたこちらまで聞こえてきた。たそがれ時の暗さで、彼らはリズワーンたちには気づいていない様子だった。
ラトーヤが無言で歩を進める。距離を縮め、魔法を使って彼らを助けようとしている。リズワーンも同じ考えで、前へ進んだ。
ぱたり、とラトーヤが倒れた。胸に矢が突き刺さっていた。その音で、彼らが振り向く。弓を持つ者はいない。他にも仲間がいたのだ。
「うわあお! エサが増えたぜ」
全ては一瞬だった。注意が逸れたと見た夫婦は、逃げようとしていた。隣には倒れたラトーヤがいた。前方の賊は、今にもこちらへ襲い掛かろうとしている。他に矢を射た仲間がいる筈だが、位置が掴めない。
リズワーンは、攻撃魔法を最大範囲で放った。
効果は絶大であった。
少し離れた木が燃え上がったかと思うと、どさりと落ちて来たのは、山賊だった。弦の切れた弓を握ったままだった。
襲いかかってきた賊も、ばたばたと倒れ伏した。
「ぐっ」
ラトーヤは生きていた。矢は急所を外していたが、射られた衝撃で意識が遠のいただけだった。
助け起こすリズワーンに、彼は尋ねた。
「襲われた人たちは?」
はっとして、倒れた賊の群れを見る。暗くてよくわからないが、生き物の気配がした。
差し当たり動けるよう傷を治したラトーヤと共に、近づくと、逃げたと思った二人もまた、倒れていた。
やはり、夫婦のようだった。
「ふにゃ、ふにゃ」
「むう。これは」
ラトーヤが唸り、足元から何かを抱き上げた。赤ん坊だった。妻は妊婦で、今しがたの衝撃により出産したのだった。
「ああっ。何ということを」
リズワーンの体から力が抜けた。
「立て。まず、この子を救わなければならない」
座り込む彼に、ラトーヤが命じた。初めて聞く厳しい声だった。彼は言われるがまま、魔法を使い、体を動かした。
ラトーヤは、赤ん坊を乳児院に預けず、自ら世話をした。もらい乳をしやすいよう、街中に部屋も借りた。
赤ん坊を育てるために、仕事も断った。どうしても断り切れない時には、他の人に世話を頼んで出かけた。
リズワーンは、あれ以来、地に足がつかない心地でいた。
数百年生きてきた。戦で人が死ぬのも、散々見てきた。戦に加わって、人を殺したこともある。今更、誤って人を死なせてしまったことで傷つくような、綺麗な体でもない。
私は人を殺したのだ。
何の罪もない人を。殺すつもりもなく、殺したのだ。それは、殺そうとして殺したよりも、一層罪深いように思われた。
気づけば、赤ん坊を泣かせたまま放置し、ぼんやりしていたこともしばしばあった。それでこそ、ラトーヤが世話の者を別途頼んだのである。
「私は何の役にも立たない」
何度目かに気づいた時、目の前にラトーヤがいた。初めて会った時と同じだった。リズワーンは、ベッドへ寝かされていた。
「君が、罪の意識に苛まされていることを知っている」
ラトーヤは言った。部屋の中が、妙に静かだった。
「エルは?」
「眠ったところだ」
ラトーヤの背後に見える天井が、ぐるぐると回り始めた。リズワーンは目を閉じた。
「このまま苦しみながら死んでいくのも一つの償い方ではあるが、彼女にとっても、君にとっても、それでは短すぎるかもしれない」
彼の意識があるのを知ったように、ラトーヤの声が続く。
「わたくしは、エルを育て上げることを、一つの償いと決めた。今の彼女には、求める償いを知る能力が不足している。彼女が自身の力で立てるようになった時、わたくしたちが果たすべき償いを数え上げることもできるだろう」
「だから、リズワーン」
ラトーヤの声が、急に優しくなった。リズワーンの体は、勝手に弛緩する。彼は目を開けようとして、瞼を急に重く感じた。
「エルが、わたくしたちを糾弾できるようになるまで、君は生き延びる義務がある。時が来るまで、君の記憶を封じよう。目覚めたら、ここを去り、安心できる場所で迎えを待つと良い」
彼の声が遠くなる。リズワーンはそのまま眠りに落ちたようだった。
目覚めた時、彼は旅立つことを、ラトーヤに告げた。
「西の端に、昔の知り合いがいる村がある。そこを訪ねようと思う」
その時、リズワーンの念頭にあったのは、亡くした彼ではなく、若いユーニアスだった。
「いいね。いつか、また会う日まで、無事に過ごしてくれ」
ラトーヤは、穏やかに微笑んだ。
部屋の隅に、赤ん坊が眠っていた。
三人が退出するのを、気に留める者はいない。
「師匠!」
競技場の外へ出た彼女は、去り行くラトーヤの背中に呼びかけた。彼は立ち止まり、振り返って頷くと、再び歩き出す。
その歩みは緩やかに見えるのに、急ぐ三人の足は追いつかない。
「この方向は‥‥もしかして」
シャラーラは、その後ひたすら師の背中を追いかけた。リズワーンも無言で後を追う。
「家へ帰る方向じゃないね」
ヴァルスが言う。競技場の外は、ほとんど人気がない。店と呼べるような建物は、軒並み鎧戸を下ろしている。
見かけるのは、オランに到着したばかりらしい旅人か、急用で出歩く者ばかりである。威勢の良い印象がある露天商も、今日は暇そうだった。
ついに、師弟はオランを囲む壁から外へ出た。こちらの外側には、小さな家がまばらに立つばかりで、遠くへ伸びるような道は見当たらない。
訳はすぐに知れた。
墓地があった。
見通しの良い平地に、様々な形の墓標が並ぶ。
ラトーヤは、歩を緩めることなく、墓の間へ入って行った。後からシャラーラ、リズワーン、ヴァルスも続いた。
彼女の師が止まったのは、小さな墓石が二つ並んだ墓の前である。彼はその傍に立ち、三人が追いつくのを待った。
「よく戻ったね。そちらは、ご友人かな」
「旅の仲間です」
ラトーヤは、この世のものとは思えない美貌の持ち主だった。ヴァルスと変わらない若さと、シャラーラを育てた年月と経験を窺わせる落ち着きが同居して、不思議な佇まいである。
美醜に疎いリズワーンでも、彼の特異な美しさは感じ取れた。
「初めまして。わたくしは、ラトーヤ。シャラーラを支えてくれて、ありがとう」
「そ、そんな。当然のことです、はい」
恐らくラトーヤの美貌に圧倒され固まっていたヴァルスは、名乗るのも忘れて照れる。
リズワーンは、沈黙を守った。ラトーヤが話しかけたのが、自分ではないような気がした。
彼は、呼び寄せられた身である。仲間、とは違う。
「エル。ここは、君の両親が眠る場所だ」
「ああ」
シャラーラは、ふらふらと墓前に近づき、膝から崩れるようにして、両手をついた。形の良い天然石を台座の上に置いただけのそれは、周囲と比べ人の手が入っていることを感じさせた。
その墓石を、彼女が頭を撫でるように触れる。
残る三人は、シャラーラを見守る形となった。
二人分の石に均等に触れた後、彼女は座ったまま振り向いた。ラトーヤをまっすぐに見つめる。
「師匠。わたしはエルフのリズワーンを連れて参りました。これで、約束の条件が揃いました。お話を、聞かせてください」
ラトーヤは直接弟子に応えず、リズワーンを手招きした。考えるより前に、体が動いた。
彼はラトーヤと向かい合うようにして、シャラーラと、その両親の墓の前に立った。
「リズワーン」
ヴァルスと同様、彼も自己紹介をしていない。だが、ラトーヤが名前を知っていることを、不思議には思わなかった。彼は、相手の目を見返した。
途端に、周囲の景色が消えた。地上にラトーヤと二人、ただ立っている。
彼の姿もまた、リズワーンにはほとんど溶け消えるように感じられた。同時に、透明な瞳に引き込まれる。
「時は満ちた。わたくしたちは、なすべきことを為す」
ラトーヤの声が頭の中に響くと、リズワーンの前に、見覚えのある景色が立ち現れてきた。
戦で荒れ果てた、故郷の森。
亡くなった友の顔、顔、顔。古代遺跡。少年のユーニアス。
ラトーヤ。彼は、初めて会った何十年も前から、全く変わらぬ姿であった。
リズワーンの故郷は、戦で失われた。
ユーニアスのいた村に長く止まったのは、親しくなった人間の故郷だったからである。それも、彼の死去に耐えられず、捨てるつもりで離れたのだ。
倒れるまで旅を続け、目覚めた彼の前にいたのが、ラトーヤだった。
体が回復してからも、リズワーンは彼の元に留まった。その頃も彼は方々から助言を求められる身の上であったが、家を持たない旅の空であった。
ラトーヤはリズワーンに詮索をせず、彼と共にいることで、誰もリズワーンについて詮索しなかった。それが彼には落ち着ける環境だった。
ある夕方、オランへ向かう山道を、二人で急ぎ歩いていた。先方の都合で、出立が遅れてしまったのだ。
日が落ちれば、城門が閉まる。その頃、城壁の外側に村はなく、閉め出されれば野宿をしなければならなかった。
山賊の噂が絶えない道だった。門内へ入りさえすれば、たとえ軒下でも、山の中よりはるかに安全な寝床が得られる。
黙々と歩を進める二人の足が、同時に止まった。
前方に、賊の一団が見えた。彼らはこちらには気づかず、他の誰かを囲んでいた。隙間から見えるのは、人間の夫婦のようである。
「おらおら。有り金全部よこせって言っているんだよ」
「ケチケチするな。命の方が、大事だろ」
脅しの声が、離れたこちらまで聞こえてきた。たそがれ時の暗さで、彼らはリズワーンたちには気づいていない様子だった。
ラトーヤが無言で歩を進める。距離を縮め、魔法を使って彼らを助けようとしている。リズワーンも同じ考えで、前へ進んだ。
ぱたり、とラトーヤが倒れた。胸に矢が突き刺さっていた。その音で、彼らが振り向く。弓を持つ者はいない。他にも仲間がいたのだ。
「うわあお! エサが増えたぜ」
全ては一瞬だった。注意が逸れたと見た夫婦は、逃げようとしていた。隣には倒れたラトーヤがいた。前方の賊は、今にもこちらへ襲い掛かろうとしている。他に矢を射た仲間がいる筈だが、位置が掴めない。
リズワーンは、攻撃魔法を最大範囲で放った。
効果は絶大であった。
少し離れた木が燃え上がったかと思うと、どさりと落ちて来たのは、山賊だった。弦の切れた弓を握ったままだった。
襲いかかってきた賊も、ばたばたと倒れ伏した。
「ぐっ」
ラトーヤは生きていた。矢は急所を外していたが、射られた衝撃で意識が遠のいただけだった。
助け起こすリズワーンに、彼は尋ねた。
「襲われた人たちは?」
はっとして、倒れた賊の群れを見る。暗くてよくわからないが、生き物の気配がした。
差し当たり動けるよう傷を治したラトーヤと共に、近づくと、逃げたと思った二人もまた、倒れていた。
やはり、夫婦のようだった。
「ふにゃ、ふにゃ」
「むう。これは」
ラトーヤが唸り、足元から何かを抱き上げた。赤ん坊だった。妻は妊婦で、今しがたの衝撃により出産したのだった。
「ああっ。何ということを」
リズワーンの体から力が抜けた。
「立て。まず、この子を救わなければならない」
座り込む彼に、ラトーヤが命じた。初めて聞く厳しい声だった。彼は言われるがまま、魔法を使い、体を動かした。
ラトーヤは、赤ん坊を乳児院に預けず、自ら世話をした。もらい乳をしやすいよう、街中に部屋も借りた。
赤ん坊を育てるために、仕事も断った。どうしても断り切れない時には、他の人に世話を頼んで出かけた。
リズワーンは、あれ以来、地に足がつかない心地でいた。
数百年生きてきた。戦で人が死ぬのも、散々見てきた。戦に加わって、人を殺したこともある。今更、誤って人を死なせてしまったことで傷つくような、綺麗な体でもない。
私は人を殺したのだ。
何の罪もない人を。殺すつもりもなく、殺したのだ。それは、殺そうとして殺したよりも、一層罪深いように思われた。
気づけば、赤ん坊を泣かせたまま放置し、ぼんやりしていたこともしばしばあった。それでこそ、ラトーヤが世話の者を別途頼んだのである。
「私は何の役にも立たない」
何度目かに気づいた時、目の前にラトーヤがいた。初めて会った時と同じだった。リズワーンは、ベッドへ寝かされていた。
「君が、罪の意識に苛まされていることを知っている」
ラトーヤは言った。部屋の中が、妙に静かだった。
「エルは?」
「眠ったところだ」
ラトーヤの背後に見える天井が、ぐるぐると回り始めた。リズワーンは目を閉じた。
「このまま苦しみながら死んでいくのも一つの償い方ではあるが、彼女にとっても、君にとっても、それでは短すぎるかもしれない」
彼の意識があるのを知ったように、ラトーヤの声が続く。
「わたくしは、エルを育て上げることを、一つの償いと決めた。今の彼女には、求める償いを知る能力が不足している。彼女が自身の力で立てるようになった時、わたくしたちが果たすべき償いを数え上げることもできるだろう」
「だから、リズワーン」
ラトーヤの声が、急に優しくなった。リズワーンの体は、勝手に弛緩する。彼は目を開けようとして、瞼を急に重く感じた。
「エルが、わたくしたちを糾弾できるようになるまで、君は生き延びる義務がある。時が来るまで、君の記憶を封じよう。目覚めたら、ここを去り、安心できる場所で迎えを待つと良い」
彼の声が遠くなる。リズワーンはそのまま眠りに落ちたようだった。
目覚めた時、彼は旅立つことを、ラトーヤに告げた。
「西の端に、昔の知り合いがいる村がある。そこを訪ねようと思う」
その時、リズワーンの念頭にあったのは、亡くした彼ではなく、若いユーニアスだった。
「いいね。いつか、また会う日まで、無事に過ごしてくれ」
ラトーヤは、穏やかに微笑んだ。
部屋の隅に、赤ん坊が眠っていた。
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