異世界二周目に入ったので、前々世はロンダリングされました。今度は自重しません。

在江

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 決してエルフのパイずりに負けたせいではなく、俺たちは最終的に、首都の魔法学院へ連れ込まれた。

 大まかな時間の流れには逆らえない、と諦める。

 魔法学院長に闇魔法の使い手とバレ、攻撃を喰らったりした挙句、今回は最初から研究科の助手として採用された。
 ダークエルフは研究生の扱いである。当然、住む建物が違う。わかってはいたが正直、だまされた感が強い。

 何せ、巨乳金髪エルフも助手なのだ。同じ建物に住み、コンドーム代わりのさやを入手するのも、彼女のつてである。
 ダークエルフよりも金髪巨乳に使う機会が、圧倒的に多かった。

 彼女はセックスの時にやたら喋る癖があって、折角の超絶技巧を存分に堪能しきれないのも、不満だ。
 ただし、それは他の職員や生徒に対して偽装する効果もあり、強く拒否できないのだった。


 ダークエルフとは、外出先で致すことにしている。真面目に過ごした一周目では気付かなかったが、この世界にもラブホテルみたいな、連れ込み宿が存在していた。
 時間貸しの昼寝部屋である。

 最初に入った時は、悪いことをしている訳でもないのに、妙に緊張したが、今では慣れた。

 「んんんっ」

 互いに唇を貪り合い、時間を惜しんで、そのまま浴室へ移動する。
 服を脱ぐ合間にもキスを繰り返し、シャワーを浴びながら一発。
 ベッドへ移動する。

 昼寝部屋は、時間制なので、滞在時間を延長させようと、様々な工夫を凝らしている。
 寝具がふかふかだったり、安眠ハーブが置いてあったり、スケスケの服や、逆に華やかなドレスの貸し出しもある。
 メイド服がないのは、利用者には珍しくないからである。ドレスは、お貴族様プレイに使うようだ。
 俺たちは、時間を惜しんで、ほとんど使わない。ひたすら抱き合っている。

 「すっかり、俺の形に馴染んだな」

 中へ挿れたまま、ベッドへ横たわり、キスしたり舐めたり、じゃれついたりする。
 ダークエルフが恥ずかしがりつつも、自ら腰をうねらせて、快楽を増す様を、楽しむのだった。

 「ご主人様、好きです」

 自ら舌を差し入れ、腰を擦り付ける。俺も舌で応じ、より硬くなったモノを突き入れた。

 「ああ、もっと。もっと、下さい」
 「くれてやろう」

 ぱん、ぱん、ぱん。
 ぐちょっ、ぐちょっ、ぐちょっ。

 「いいっ。イ、イクッ」
 「うん。イって」

 寝るためだけの部屋に、響く嬌声。
 時間の許す限り、何回でも交わるのだった。


 王都に来てから、気になることがあった。
 俺が召喚したダークエルフの中身だ。

 中身だけ召喚したら、元々それが入っていた体は抜け殻。用済みの外側は消滅するか、死体となる筈なのに、何の騒ぎも起きていない。
 旅の間は僻地へきちにいたから、情報が入らなくても気にならなかった。

 魔法学院も全寮制で世間から隔離されてはいるものの、首都にある。
 俺の召喚が成功したら、何らかの噂ぐらいは立つ筈だった。それが、探りを入れても全く痕跡がない。

 俺の召喚者は、俺自身ではなく、俺の一部を手に入れて、そこから俺の体を作り出したと言っていた。
 俺は、召喚したい人の一部を持っていなかった。入手する機会はあったのに。
 時が巻き戻って二周目を生きると知らなかったとはいえ、失策だった。

 『お前と関わりのある者を召喚できる。縁が強ければ強いほど、成功率は高い』

 神の言葉が蘇る。俺は、誰を召喚したのだったか。
 召喚前の世界にいた俺の妻、俺の妻にそっくりなこの世界の高貴な方。

 その瞬間、どちらを強く念じたのか、自分でもよく思い出せなかった。

 「あはは。こじらせているわねえ。ちなみに、誰を召喚したつもりだったの?」

 俺の直属上司である教授に相談すると、かなりウケたみたいだった。遠慮なく大笑いされた。
 話し方からは想像できないが、見た目は宝塚の男役みたいにゴージャスなエルフで、男性である。

 俺はこの教授に、闇魔法の研究と称して人体実験をさせられている。お陰で闇魔法の扱い方も学べてはいる。

 「言えません」

 エルフらしく、人を人とも思っていない部分が垣間見えるものの、教授は有能で、信頼できる相手だった。

 だから、教授には、かなりの事を知らせているが、この世界の誰を召喚したのかまでは、流石さすがに言えなかった。そして時間遡行そこうの話も、していない。

 「本人に聞いてみるしか、ないでしょ。記憶を消したと言っても全部じゃないんだから、手がかりはあると思うわ。質問の仕方を考えることね」

 教授は、無理に聞き出そうとはしなかった。


 教授の助言に従って、週末、ダークエルフを学院外に連れ出した。学院内だとなかなか二人きりになれない。

 学院生がなかなか来ないような、やや高級な店を選んで入る。毎月給料を貰っても、普段は寮生活で使い道がなく、懐は暖かい。

 「二人きりで、素敵なお店に入れて嬉しいです」

 目先の変わった料理に舌鼓したつづみを打ちながら、喜ぶダークエルフ。俺の好みの外見であるばかりでなく、慎ましやかな態度も好ましい。

 ただ、珍しさからか、外を連れ歩く度に、男性の視線を集めてしまう。今も、男性客やウエイターがちらちらと視線を送ってくる。首都にきてから、特にひどい。

 彼女は、他の男性には一切、目もくれない。気付いてないのか。

 「俺に呼び出される前の記憶って、覚えている?」

 早速、質問を始めた。

 「自分のことは、わかりません。神様たちが話をしていたことは、覚えています」

 ダークエルフは、予想の斜め上を行く返答をした。

 「何て?」

 「賭け事? 私とご主人様のことで」

 「暗黒神と‥‥」

 「光の神です」

 賭け事の内容は、聞かせてもらえなかったという。それは、そうだろう。

 気になることが、増えてしまった。
 神々の賭け事と、俺が召喚した中身の正体と、どういう関連が?
 次に神々と直接対話する機会は、死ぬ時ぐらいだろう。

 俺の契約は極々ごくごく例外的なものだ。とりあえず、疑問は脇に置く。

 「まあいい。俺の言っているのは、それよりさらに前のこと」

 「この世界に来る前の話ですか」

 「ん?」

 「勇者様がいらした日本という国に、私もいたような気がするんです」

 「え」


 それから食事の味がわからなくなった。
 顔色も変わったらしく、体調を心配された。

 どうにか必要なことを聞き出しつつ食事を終え、いつもなら昼寝部屋を借りて抱くのに、そのまま学院へ戻ることにした時も、不満どころか気遣われた。

 寮の自室へ引きこもって考える。すぐに帰ろうとするダークエルフをなだめつつ、補足で質問した。

 結果、彼女の中身は俺が召喚したかった人ではないことが、確実になった。
 それどころか、俺をこの世界に召喚した奴らしいことが、ほぼ確定してしまった。

 俺の召喚者。同じ世界から来た女だが、この世界に転生してからは、人外か男の姿しか見ていない。暗黒神との契約満了によって、この世から消えた筈だった。

 時が戻り、肉体も、存在自体がなかったことになっている。奴が向こうの世界で死に、ダークエルフへ入ったと考えると、魂の差し引きは合っている。

 元々俺が望んで、この世界へ来た訳ではない。それでも今は、新しく生き直そうとしている。

 きっかけをくれた召喚者に、今更の恨みはない。
 ただし、その召喚者の転生前の女に、特段の好意もない。ほぼほぼ、見知らぬ他人なのだ。

 それが、愛しい妻のように、俺に好意を示してきたことに、もやもやした気持ちがあった。


 「あのっ」

 声に顔を上げると、研究科の助教授がドアから顔を出していた。

 「ごめんなさい。ノックしてもお返事なかったのに、気配がしたから開けちゃって」

 「いいえ。気付かず失礼しました。どうかなさいましたか」

 「お願いがあるんですけど、入ってもいいですか」

 「どうぞ」

 助教授は、人魚である。今は、人間の二本足で歩いている。
 本来人魚の女性は、繁殖期にしか人間の足を持てない。

 彼女は、薬の力で好きな時に自分の魚と人の下半身を切り替えられるのだ。

 巨乳金髪エルフが言っていた、強力な避妊薬の開発者は、この助教授であった。

 「あのね。今、助手の子が研修会の仕事で忙しくて、貴方にしか頼めないの」

 人魚は青みがかった長い髪を指に絡めながら、ベッドに腰掛けた。俺のすぐ隣である。

 「何でしょう?」

 避妊ではお世話になっているし、直属ではないが一応上司に当たる。まず、話を聞かねば始まらない。

 「今度描く本の資料に使いたいから、お尻の穴を、見せてもらえないかしら」

 「‥‥それは、ちょっと」

 そうなのだ。この助教授も転生者で、前世では香港で薬剤師をしながらも発行する漫画家だった。
 BL。ボーイズラブという、男性同士が愛し合うジャンルの描き手である。

 前回は、俺と男姿の召喚者で妄想したシリーズがヒットをかましたものだから、いろいろ迷惑した。
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