人生前のめり♪

ナンシー

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126 日常(装備品 テッパチ)

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駐屯地。
始業前の職務室、自分のデスクに向かう僕の耳に聴こえてきたのは…謎の唄だ(;´Д`)

生田「ふんふんふふ~ん♪おでこちゃ~ん♪」

僕「…」

生田「ふふ~ん♪可愛いおでこちゃ~ん♪」

僕「えぇーと?その歌は何かなぁ?(•᎑•)」

生田「あ!お早うございます!愛の歌ですよー!」

僕「…お早うございます。堂々と返答されるとは思わなかったなぁ。」

鼻歌を歌いながらご機嫌な様子で書類の仕分けをしている後輩を前に、僕は朝から項垂れた。
隣りには、真っ赤になって笑いを堪える植野と、爆笑している須賀さんや香山がいる。
皆の目線が、僕の額の絆創膏にチラチラ注がれるから、もう本当にいたたまれない気持ちになる。
屋内だけど、帽子かヘルメットテッパチ被って過ごしたい。

R黒田「お早うございまッス!」

そこに元気に現れたワンコを、睨みつけた僕は悪くないと思うんだ。
すべての原因はワンコにある。

僕「ワンコ、ウチの今日の訓練、フル装備に変更だからね。」

R黒田「え?はい!変更ッスね。」

僕「稼業後のトレーニングも、フルコースで付き合ってもらうからね。」

R黒田「は、はい!あれ?なんで急に地獄のフルコース??」

今日の訓練には、来月行われる100km徒歩行進のトレーニングが組まれている。
まずは軽めの装備で体を慣らそうかとも考えていたけれど、本番と同じ装備で15kg…いや、錘もプレゼントしよう、そうしよう。
25kgのフル装備だ♪早速朝礼後にはおもり拾いに行くんだ♪

まだ爆笑している香山達にもフルコースに付き合ってもらおう。いやしかし、トレーニングが大好物の香山を喜ばせてしまうかと思えば更に苛つく…。書類仕事でも回して運動させない方がいいのか?

須賀「『おでこちゃん』の傷も大したことがなかったってことで、快気祝いの特訓だな。」

香山「ワンコ、お前の口の軽さが業務に差し障らないことだけが救いだ(笑)」

植野「いや、充分差し障ってますよー。キツイ訓練に変更なんてー。」

生田「うわー、ブラック岡部さん降臨~!
でも、辛くてもうダメだと思ったら『おでこちゃん』って唱えれば笑顔で乗り越えられますよ、きっと!」

R黒田「あ!」

両手で口を抑えるR黒田。
やっと気づいたか、駄犬め。
ハルさんとワンコとクライミングに行き、落石で怪我をしてから4日目。休日明けから2日目。たった2日なのに…

僕「…部隊内での僕の呼び名が、『おでこちゃん』になっているのは、なぜかなぁ(•᎑•)」

R黒田「はい!あの時彼女さんが『タカさんの可愛いおでこちゃんに傷が~』って…」

僕「そこじゃない!!」

なんでそう答えるんだか!
いや、事実はそうなんだけど、問題はそこじゃない。

確かに、僕の怪我した額を見ながら『タカさんの可愛いおでこちゃんに傷が~』ってハルさんがえぐえぐ泣いていたのは、小さい女の子みたいで可愛かった。
なかなか泣き止めなくて、珍しく弱っているハルさんが、人前でもへにょへにょとくっついてきたのも可愛かった。

でも、『おでこちゃん』なんて初めて言われて、可愛いなんて。
おでこが可愛いのか?それとも僕、おでこ広い?
…そう言えば、74式戦車についても、あのおでこの丸いフォルムが可愛いとか言っていた、それと同じなのか?
彼女の感性がわからず、喜んでいいのかどうか戸惑っていた僕。

そこに追い打ちをかけるように、部隊内にその時の話が広まった現状。しかも昨日の今日で!
その現場にいたワンコが、きっと僕の怪我について聞かれるがまま悪気もなくすべて話したんだろう。
『守秘義務』って百回書き取りさせたい。

僕「ぷちパニックしてた彼女の事まで、ワンコが話すんじゃないよ、もう。」

香山「なんだ?自分で惚気たかったのか?」

生田「愛されてますね!」

僕は、頭を抱える。
そこに、真面目な須賀さんの声が掛けられた。

須賀「次はヘルメットテッパチ被って行け。」

だから、そこじゃない…。
たくさんおもり拾ってこよう、うん。
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