人生前のめり♪

ナンシー

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110 イベント(基地見学)

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ハルの友人である美希は、基地モニターとしての研修で、航空自衛隊の基地に来ていた。
正門横の駐車場で他のモニターと挨拶をしながら指定の時間を待ち、広報の人に案内されて、広報館にあるブリーフィングルームまで移動する。
そこで広報班長が当日の流れを説明してくれたり、時間まで待機したり、アンケートや感想を書いたり、喫食体験があるときはその料金を支払ったりするのだ。(食事は隊員と同じく予約制で自腹です。)

広報班長は茶臼一尉。現役のF-15パイロットと広報の兼任をしている。
因みに、タッグネームは『ブラウン』…名字の茶臼→茶色→ブラウンらしい。…意外と単純だと美希が思ったのは内緒である。


集合の後、隊員の運転するマイクロバスに乗り、基地内を見学。
ハルと一緒に一度だけ別の基地の航空祭に行っただけの美希には、基地の中を解説付きで見学するのは新鮮だった。
例えば、エプロン地区(航空機の駐機・移動などする場所)に車輌で入るときは必ずタイヤに石などの異物が挟まっていないか、チェックをする。
航空機のエンジンに異物が入り破損するのを防ぐためである。

今回は、普段見ることのできない会計課とか、物資の倉庫とか、食堂の裏側とかの見学で、パイロットだけが仕事ではないのだと、しみじみ思った。


その日の夜、美希はハルに、研修であったことを報告していた。

美希「基地って言っても、大きな会社か大学みたいな感じもして、普通なところは普通なのが、意外というか当たり前というか…上手く言えないんだけどね。」

ハル「うん、自衛官さん達も同じ人間だもんね。生活があって、ご飯食べて、お給料貰って…ってところ?」

美希「そう。そんな当たり前のこと、航空祭でかっこいいな~って思ってるだけじゃ分からなかったかも。」

ハル「うん。タカさんがよく言うのがね、『入り口は何でもいい。僕達を知ろうとしてくれてありがとう。応援してくれてありがとう。』って。」

美希「分かる…広報さんに、『モニターさんは広報の仲間だと思っています。ですから、禁止事項だけ気をつけてくれたら、SNSでも知り合いに話すのでも何でもいい、経験談をどんどん広めてくださいね。』って言われたのだけど、そういうとこなのかな。
でも、なんだか責任重大よね。」

ハル「うーん、そんなに難しく考えなくてもいいような…。
自衛隊についていろいろ知ってくださいねっていうのがモニター制度だと思うから。
でもまあ、禁止事項さえちゃんと守れば。」

美希「それ!以前見学で、ダメだというのに写真を流出した人もいたらしくって、それ以来厳しくなったこともあるんだって!」

ハル「それダメだよね!基本ルールは、お仕事の邪魔はしない。まずそれだけは、絶対。」

二人はうんうん、と頷きあう。


ハル「あとはね…、やっかみというか出る杭は打たれるというか…関係ない人から文句言われたり、古株の教えたがりに目を付けられたりしないようにね。」

美希「なにそれ?怖い…。」

ハル「うん…。どの世界にも、マイナスなこと言う人はいる訳。私も『ミーハー!』って知らない人に罵られたことあるの…。」

美希「え、ひどい!晴和はミーハーじゃないもん!ガチマニアだもん!」

ハル「え?そこ?(笑)しかも、どこで覚えたの、その言葉(笑)」

美希「広報さんに、モニターのきっかけを作ってくれた晴和のこと自慢したら、『ガチマニアですねえ、ありがたいな』って言ってくれたもの!」

ぷんぷん憤慨しながら、ハルのことをそんなふうに話してくれる美希の存在が、とても嬉しくて、擽ったくて。
ハルは、今も思い出すと痛みがぶり返しそうな、知らない誰かに一方的に投げつけられ、傷つけられた苦い記憶よりも、自分自身を知った上で自慢してくれる友人の気持ちを大事に受け止めればいいのだと思った。

それにミーハーでもなんでも、一般人が自衛隊に対して興味を持って正面から向き合うきっかけを、広報は作りたいんじゃないかと思っている。
タカさんが言うように入り口はなんであれ。

ハル「何かあったら、相談してね。もちろん、広報さんに聞くのが一番だとは思うけど。」

美希「ありがとう!空だけじゃなくて、海や陸にも興味出てきちゃったの。色々教えてね(*^^*)」

ハル「コチラこそ(*^^*)」
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