人生前のめり♪

ナンシー

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108 イベント(富士総合火力演習 その4)

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富士総合火力演習本番当日。
僕とハルさんは、指定の駐車場に到着したあと、東富士演習場に向かうシャトルバスに乗っていた。
前評判で、かなり早い時間から混雑すると聞いていたのだが、それほどではなかった。

僕「徹夜は禁止されたと言うし、現場も入れないよう封鎖されているみたいだし…0500待機で1台目のバスに乗れたのだから、いろいろ改善されてきているのかな?」

ハル「これなら、公共交通機関で来て、駅からはタクシー相乗りすれば、駐車券のある人とそんなに差はなさそうですね。徹夜組がいるとそれを見守る隊員さんが必要そうだし…そういうの、なくなればいいですね…。」

僕「そうだね。ただし、帰りのシャトルバスは駅に向かうほうが混みそうだけどねぇ。」

周りの状況を見ながら、会場に着くシャトルバスを降りると、人の波が向かう方へ歩き出す。
高く組まれた巨大なスタンド席、色とりどりの幟が立つ出店、そして富士山。

笑顔でつい歩みが早くなるハルさんの後ろを僕も着いていく。
会場内への入場は始まっていたので、まずは場所取り…チケットのナンバーでスタンド別、もしくはシート別に席は別れているものの、早い者順に席は詰められていく。どこがいい!とわがままは言えず、チケットを見せ誘導に従って前の人に続いて席を詰めていくのだ。

僕たちの席は、CP司令本部や放送席、報道や偉い人の座るスタンドからは一番離れた端のスタンドではあるが、余裕で最上段に座ることができた。

ハル「凄い!最上段でちょうど通路真ん前!」

僕「これは特等席だねぇ。
 CP司令本部から一番離れてる端っこのスタンドとはいえ…ラッキーだね。」

ハル「ふふふ…こちらの方が後ろ姿だけでなく向かってくる姿や横から見えます!しかも目の前に陣地展開されるので大迫力なのですよ~♪」

僕「なるほど♪演習を真後ろから見るより真横からって、僕もなかなか見ない角度ですよ。」

総火演の開始時刻は1000だが、0630には試射が始まる。
もちろん、食事や買い物もできるし、あっという間に時間が過ぎていく。

ハルさんは試射を食い入るように見ている。それを見ていた僕は、感心してしまった(•᎑•)
なぜならハルさんは、次に射撃をする車輌がどれなのか、見分けている様子だったからだ。
例えば、一列に並んでいる10式戦車、MCVなどは、小隊ごとに分かれて順番に射撃している。だが、知らない人が見ると、ただ一列に並んでバラバラに撃っているようにしか見えない。

僕「ハルさんは、次にどれが射撃するか、分かってるよね?」

ハル「え?だいたいですけど。それぞれチーム毎に順番に撃ってますよね?」

僕「うん、そうだね(笑)」

やっぱり。
なんて言うか、理を見抜いてる?面白いなぁ。

試射の時間が終わり、整備車輌が一斉に演習場をならしていく。
徹底的に整備する働く車を、ハルさんはやっぱりキラキラ眺めていた。


女性自衛官がこちらに登ってくる…え?あれは芳川さん?!
この春から富士学校に異動になった芳川さんだ!!
こんな大人数の中から僕を見つけた?
芳川班長がニコっと笑って声を掛けてくる。

芳川「佐藤さ~ん!こんにちは♪」

僕「エ?!Σ(゚Д゚)」

ハル「あ!お早うございます!お久しぶりです!団予行の件ではお気遣いありがとうございました!」

芳川さんこそが、ハルさんに団予行のチケットがあると声をかけてくれたという、中の人だった。
女性自衛官だったのかε-(´∀`*)ホッ。
というか、世間は狭いです、まさかの芳川班長💦

まさかの知り合いがハルさんの知り合いだったなんて、僕は言葉も出ない。それでも必死で取り繕って挨拶だけは済ませた。
芳川さんは、にっこり笑って何も追求せずにいてくれた…怖い…いや、気遣いのはずだ、怖くない…(・・、)

二人は笑顔で僕に断りを入れると、席を離れていった。積もる話もあるのかな。楽しそうだ。
ハルさんの人脈は侮れません((((;゚Д゚))))

…お互いお土産を交換し、話をしてきました~!と戻ってきたハルさん。
以前芳川班長が広報担当をしていたときに、お世話になったことがあるとのことだった。
そして、班長の旦那さんが教導団に異動になり、その後彼女も今年富士学校に異動に…そこは僕も知っている…そして現在に至る。

僕「えっと、…」

ハル「あ、旦那さんにもご挨拶できましたが、今はCP司令本部のテントに。冗談ですけど、後で遊びにおいで~って言われました(笑)」

ぅわお。
総火演の指揮されているんですか。
そんな人と知り合いとは、やはりハルさんは侮れない(笑)

でも、これだけは言っておこう。
彼女はチケットを強請ったり何かを融通して欲しいと我儘を言ったことは決してしない。
彼女たちとは友人であり、コネだと思っていないし、僕が中の人だということを言いふらしたりもしない。
ただ、僕たちを応援してくれる。それだけだ。
そんな彼女だからこそ、声をかけてもらえるんだろうなあ。

本当にハルさんは、自慢の彼女です♪
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