人生前のめり♪

ナンシー

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66 日常 (葛藤)※ちょっぴりシリアス注意

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ハルさんとL○NEで仲違いをしてから、全く連絡をとらないまま、2週間が過ぎた。

共通の友人もいるため、この2週間の間に彼女が立山でテン泊したとか、自衛隊のイベントに参加したとかいう情報だけが、ちらほら伝わってきた。

彼女がL○NEで伝えようと言葉を尽くしてくれたこと。
僕の選んだ言葉が彼女を傷つけたこと。
…その時の僕は彼女を傷つけても構わないと思っていた。
自分が悪者になればいいだけ、そう考えたのは傷つけても伝えたい事があると思っていたからだ。

でも、今は少し後悔している。
彼女はとても繊細で、他人への心配りが出来る人だ。
いつだって謙虚で、物事を真摯に受け止めて、丁寧に考えて行動する人でもある。
謙虚すぎて、もっとリーダーシップを取ってもいいのにと思う時もある。
今回のことだって、きっかけはそこだった。

彼女が計画した山行について、僕に聞くのはいいが、計画を立てたならリーダーとしての責任を持ってリードすればいいのに…無責任?甘え?それは駄目だって思ったら、突き放すような言葉を投げつけていた。
あとはどんどん話がずれて、結局は擦れ違ってしまった。

最後まで彼女が譲らなかったのは『感情論でなく理解しあいたい』というところ。
僕はそこには触れず、僕のやり方を押し通そうとした…。
僕が『そうですか』と返した言葉を最後に返信は来なくなった。

以来、なんの連絡も来ない。
毎日のように交わした朝の挨拶やお休みの言葉もない。
反論できないような言葉を選んで送ったのは僕だから、この結果は当然のこと。

でも、僕からは連絡したくない。
怖いからだ。

元々、僕がいなくても、友達も多いし、人見知りもしない。
山へも一人で登るけど、なんの心配もいらない。
自由で、のびのびしていて、好きなことをして笑っている…僕がいなくても、友人から聞く彼女のしていることや生き方は変わらない。

僕「そうか、僕は悔しいんだ。」

ハルさんは依存なんかしていない。
今回の件でも、僕のことを思って相談してくれていたのに、彼女の計画に僕の予定がどうしても合わないことに苛々が募った。
行こうと誘ったのは僕なのに、行けなくなると彼女は計画を変更したり無為な時間を過ごしたりすることになる。
彼女と会う予定を覆すのはいつも僕の方だ。そのたび彼女に我慢を強いるけど、彼女は受け入れてくれる。

彼女は強い。その強さは優しさからきているからこそ、僕はその強さに憧れる。
僕自身はどうだ?
弱くはないと思う。では僕の強さはどこから来るのだろう?肉体を鍛え、過酷な訓練や災害派遣を経て、強くなった…その根底にあるのは…自己満足?

自立した彼女に対して歯痒いとか羨ましいとか僕ばっかり迷惑かけてとか…結局自己顕示欲?彼女に頼られたい、尊敬されたい、一緒にいたいのにいられない…そんなちっぽけな独占欲が恥ずかしくて、悔しいのだ。

僕は彼女を傷つける。そう思ったら、僕から連絡することはできなくなった。
情けない。
わかってるけど、僕から連絡して、嫌がられることが怖い。
何度も連絡しようとしたけれど、できなかった。
でも、心の何処かで、ハルさんが許してくれることを期待している。
そして…どうやって謝ろうか、ずっと考えている。
弱いなぁ…。


3週間目…ハルさんからL○NEが来た。

ハル『一度、あいませんか?』

ものすごく考えて、悩んでくれたのだと思う。
貸していた物を返したいとか、けじめをつけたいとかかもしれない。
でも、チャンスをくれたハルさんに、僕は誠心誠意気持ちを伝えようと思う。

僕『会ってください。』







僕「ごめんなさい。嫌な思いをさせて、本当にごめんなさい。」

ハル「…。」

会って最初に謝った僕に、彼女は泣きそうな、困った顔をして、何も言わなかった。
僕も泣きそうだったのは、ハルさんにはバレバレだったと思う。

会えなかった間の、僕の話を聞いてくれた。
立山やイベントに行った話をしてくれた。
一緒にご飯を食べた。
でも、まだぎくしゃくするのは自業自得で、僕の責任だ。


僕「今日はありがとう。」

帰り際、そういった僕にハルさんはやっぱり困ったような笑顔を向けた。
二人の関係を、もう一度作り上げていかなくちゃ。
僕は、もっと強くて優しい、大きな人になりたいなぁ。
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