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151 イベント 戦車試乗
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ハルは久しぶりに陸上自衛隊の駐屯地創立記念祭を見学に来ている。
この駐屯地には方面隊の混成団が所属している。
混成団とは、団本部と普通科連隊(即応予備自衛官を含む)、各教育大隊(新隊員教育や陸曹候補生教育など)の主に3つの部隊で編成されている。かなり広範囲に渡って統括されているため、遠くの駐屯地からもいろいろな車両や部隊が参加している様子だ。
その他にも、同じ県内にある航空自衛隊や、陸上自衛隊でも他の部隊からもたくさん車両が来ていて、働く乗り物が大好きなハルは楽しみしかない。
初めて来た駐屯地なので、観閲行進や訓練展示を見学するには端っこしか場所取りはできなかった。
入隊して約一ヶ月の新人隊員たちによる行進や自衛隊体操を応援し、訓練展示で特科部隊や普通科部隊の勇姿にカメラを向ける。
特に、去年戦車大隊が廃止となり、偵察戦闘大隊へと生まれ変わった部隊には新たに16式機動戦闘車が配備されてから初めて訓練展示に参加している。
部隊マークも過去の舞台の流れをくむものの一新され、ピカピカだ。
74式戦車を愛するハルとしてはちょっと寂しいが、自衛隊を応援する気持ちは変わらない。
装備品展示を見学している間に、戦車試乗が始まった。
聞き慣れた74式戦車のエンジン音が聞こえてくる。
ハル「いつまでも見ていられるし、いつまでも聞いていられるわ~」
ハルは、グラウンドを回る戦車をニコニコと眺めながら、戦車の乗り場に向かって歩いていた。
ハル「あれ?豊田さん?」
乗り場近くの木陰で戦車を眺めている人に見覚えがある。
元自衛官で元戦車乗りで、モデラーの豊田だ。
ハル「こんにちは!豊田さん、ご無沙汰してます。」
豊田「おぉ!こんにちは!もしかしてとは思っていたが佐藤さんも来ていたのか!」
豊田は関係者でおよばれしていたのか?と思ったが、そうではなかった。
豊田「あと一年で74式戦車も運用が終わるからな、最後にこれ…」
と、取り出したのは戦車試乗券だ。
豊田「現役を引退してから、色んな人に声をかけて戦車に乗ってみないか?と引率してきたが、私自身は一度も乗ってこなかったんだよ。これが最後かもしれないと、今日は思い切って試乗しようかとね。」
ハル「そうでしたか!」
豊田「今日来ている隊員たちも若手ばかりで、隊友会でも顔なじみじゃないから…」
豊田は、ちょっと恥しそうにしながらヘルメットを被り、戦車の後ろに乗り込む。
ハルはその姿を、記念にとスマホで撮りまくった。
エンジン起動、手すりに捕まり、グラウンドを一周。
あっという間。
降りてきた豊田は、戦車から目を離さない。
豊田「いや~、乗り心地は中も外も同じだったな。久しぶりに乗ったら昔の感覚が思い出せるかと思ったが、そうでもなかったなあ…」
風が気持ちいい。
戦車のエンジン音も心地良い。
豊田「最近昔の仲間や後輩が先に逝ってしまうことが続いて、最後に会ったとき何を話したか?と考えてしまうんだよ。私はありがとうと伝えてきただろうかと。
まあ、そういう歳になったということだから、『あの時やっておけばよかった』と後悔しないように…若いときは考えもしなかったが、やっとそんな気になったところだ。
だから、佐藤さん、今日会えて嬉しかったよ、ありがとう!」
ハル「はい!こちらこそ、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
また次のイベントでも会えることを楽しみにしています。
この駐屯地には方面隊の混成団が所属している。
混成団とは、団本部と普通科連隊(即応予備自衛官を含む)、各教育大隊(新隊員教育や陸曹候補生教育など)の主に3つの部隊で編成されている。かなり広範囲に渡って統括されているため、遠くの駐屯地からもいろいろな車両や部隊が参加している様子だ。
その他にも、同じ県内にある航空自衛隊や、陸上自衛隊でも他の部隊からもたくさん車両が来ていて、働く乗り物が大好きなハルは楽しみしかない。
初めて来た駐屯地なので、観閲行進や訓練展示を見学するには端っこしか場所取りはできなかった。
入隊して約一ヶ月の新人隊員たちによる行進や自衛隊体操を応援し、訓練展示で特科部隊や普通科部隊の勇姿にカメラを向ける。
特に、去年戦車大隊が廃止となり、偵察戦闘大隊へと生まれ変わった部隊には新たに16式機動戦闘車が配備されてから初めて訓練展示に参加している。
部隊マークも過去の舞台の流れをくむものの一新され、ピカピカだ。
74式戦車を愛するハルとしてはちょっと寂しいが、自衛隊を応援する気持ちは変わらない。
装備品展示を見学している間に、戦車試乗が始まった。
聞き慣れた74式戦車のエンジン音が聞こえてくる。
ハル「いつまでも見ていられるし、いつまでも聞いていられるわ~」
ハルは、グラウンドを回る戦車をニコニコと眺めながら、戦車の乗り場に向かって歩いていた。
ハル「あれ?豊田さん?」
乗り場近くの木陰で戦車を眺めている人に見覚えがある。
元自衛官で元戦車乗りで、モデラーの豊田だ。
ハル「こんにちは!豊田さん、ご無沙汰してます。」
豊田「おぉ!こんにちは!もしかしてとは思っていたが佐藤さんも来ていたのか!」
豊田は関係者でおよばれしていたのか?と思ったが、そうではなかった。
豊田「あと一年で74式戦車も運用が終わるからな、最後にこれ…」
と、取り出したのは戦車試乗券だ。
豊田「現役を引退してから、色んな人に声をかけて戦車に乗ってみないか?と引率してきたが、私自身は一度も乗ってこなかったんだよ。これが最後かもしれないと、今日は思い切って試乗しようかとね。」
ハル「そうでしたか!」
豊田「今日来ている隊員たちも若手ばかりで、隊友会でも顔なじみじゃないから…」
豊田は、ちょっと恥しそうにしながらヘルメットを被り、戦車の後ろに乗り込む。
ハルはその姿を、記念にとスマホで撮りまくった。
エンジン起動、手すりに捕まり、グラウンドを一周。
あっという間。
降りてきた豊田は、戦車から目を離さない。
豊田「いや~、乗り心地は中も外も同じだったな。久しぶりに乗ったら昔の感覚が思い出せるかと思ったが、そうでもなかったなあ…」
風が気持ちいい。
戦車のエンジン音も心地良い。
豊田「最近昔の仲間や後輩が先に逝ってしまうことが続いて、最後に会ったとき何を話したか?と考えてしまうんだよ。私はありがとうと伝えてきただろうかと。
まあ、そういう歳になったということだから、『あの時やっておけばよかった』と後悔しないように…若いときは考えもしなかったが、やっとそんな気になったところだ。
だから、佐藤さん、今日会えて嬉しかったよ、ありがとう!」
ハル「はい!こちらこそ、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
また次のイベントでも会えることを楽しみにしています。
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