人生前のめり♪

19 イベント（創立記念祭 根性線）

明日は駐屯地の創立記念行事。

僕たちのいる駐屯地の記念行事は『戦車祭』とも呼ばれ、ちょっと有名だ。
なんせ近くに大規模な演習場があるため、日本でも何箇所かにしかない戦車がたくさんある。
戦車部隊もニ部隊常駐し、それらの戦闘訓練展示が、派手に行われる。
そのため『戦車祭』は、例年全国津々浦々から見学者が集まるくらいなのだ。

更に、今年はあるイベントが追加された。
『独身自衛官ふれあいコーナー（笑）』←（笑）って。
ふれあいとは言っても、写真と紹介文（ニックネーム、年齢、所属、趣味など）が飾られているだけなんだけど。

毎年独身率が上がり、彼女もいない、普段は女性と話もしないという自衛官が増えたことを危惧した大隊長が、『制服姿は２割増！』とかなんとか言って、ゴリ押しした企画らしい（汗）

香山「…ふぅ（ため息）」

僕「まあまあ、別に直接触れ合うコーナーでもあるまいし、写真くらいいいんじゃない？」

香山「…だからって、いつの間に撮ったんだ、あの写真」

僕「うちの偵察隊は優秀だからねぇ（笑）
　しかも『趣味…お酒を楽しむ』って間違ってないし。
　そうそう、須賀さんは、ふれあいコーナー近くでウロウロするって言ってたよ♪」

香山「お前はいいよな、彼女できたばっかりで関係ないから。」

僕「うん(^^)危なかった…。」

香山は、アイロン室で明日着る予定の戦闘服にアイロン掛けをしながらため息をついている。
僕はたった今アイロンを掛け終わった戦闘服の根性線をチェック中。
自衛官たるもの身嗜みには気を付けねばならないのは当然だが、創立記念行事のような大々的なイベントになるといつも以上に気を配る。
それが、半長靴磨きとこのアイロン掛けによる根性線。
半長靴は、鏡のようにコンタクトレンズが装着できるくらいピカピカに。
戦闘服の背中にピシッと入れた根性線は、カミソリのように指が切れるくらいキッチリと。
一度ガッツリ濡らした戦闘服を慎重に折るとアイロンに体重を掛けながら完全に乾くまで線をつける。

もう一度ため息をついた香山が、僕の方をちらっと見た。

香山「で、その彼女、招待したのか？」

僕「ん～、そのつもりだったんだけど…避けられたっていうか…。」

香山「なんだ？もうケンカか？」

僕「ん～、ちょっと違うんだよねぇ。最近、どうしても外せない用事があるって言われてて…。調べ物もあるし集中したいからって。」

今回の創立記念行事は、僕が自衛官であることをハルさんに告げるのにちょうどいいタイミングだと思ったんだ。
告白ついでに、ヘリとか働く車が好きなハルさんを戦車祭に招待しよう…って思っていたんだけど、祭の前は僕もリハとか、整備とか忙しいから、L○NEのやり取り程度では取り付く島もなかった…(´・ω・`)

僕「…ふぅ（ため息）喜ぶと思ったんだけどなぁ～。」

香山「案外、一人で来てたりして。」

僕「まさか、来てたら笑うよねぇ（笑）」

香山「お前がいることは知らないんだろ？」

僕「…うん。まだ言えてないんだけど…早く言っちゃえばよかったなぁ。」

香山「だから、言ったろ」

僕「女子と話せないくせに香山のアドバイスはなんで的確なんだろ？」

香山「膨大な数の漫画とラノベの統計によるものだからな」

僕「あー、香山も早くそれを活かせるといいねぇ」

香山「…む。」

これが終われば、しばらく業務も落ち着くはず。
そうしたらゆっくりハルさんに会いに行こう、と思います。
取り敢えずは明日のために、半長靴もしっかり磨いて寝ることにしよう。