嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?

猫桜

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淡雪、悩む

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「なんだって、こんなことになったんだか」

 僕は思わずため息混じりに呟いた。
 まさか、まさかの展開に頭が痛い。
 千秋はいい奴だよ。それは間違いない。何時だって僕に寄り添うようにいてくれるし、僕に危険が及ぶ事以外は全てを肯定して好きにさせてくれる。
 怒ったときは・・・あの整った顔に笑みを浮かべるだけで声すら荒げない。けど、目が笑ってないうえに地の底から湧き上がってくる圧が半端ないからゾッとする。
 で、頭から怒るのではなく、理由を聞き、やんわりと理を説いてくるからその時は反発しても時間を追うごとに猛烈に反省するんだな、これが。
 言いたいこといって、一緒にいると楽しくて自然に息ができる。それが千秋だったんだけどさ。 
 僕は何度目かのため息をあの時を思い出す・・・


 言いようのない深い眼差しで僕を見つめて

「淡雪は私が嫌い?」

 と千秋に問われて僕にどう答えろと?
 嫌いじゃないから困るんだよ
 答えあぐねていたら、千秋が僕の手を取って

「私が淡雪を大公から略奪してもいい?」

 と言われたときには、思わず手を引っ込めてしまった。
 けど、いま思い出してもドキドキして胸のあたりが苦しい。
 千秋の優しげで切なげで燃えるような目に囚われ手を引っ込めるのが精一杯だった。
 千秋の秀麗な顔が近づき、唇に触れかけたとき、

「淡雪様~そろそろ~お帰りにらないと~夕餉に間に合わいませんよ~今日は~お好きな~鴨の照焼きだから~速攻で~帰るとかいってましたよね~」

 危険なな空気を吹き飛ばす晴の声とともに重厚な扉が叩かれた。
 はっとして千秋の胸に手を付いた。

「あ、あのさ、今日はそういうことを話しに来たんじゃないんだけど・・・」

「そうだね。何か邪魔も入ったし・・・」

 そういうと千秋は僕の手に口づけた。

「この返事は、この件が片付いたらということで」

「へっ?」

「忘れないで、淡雪」

「何を」という間もなく、千秋は扉を開け、晴達を部屋に迎え入れた。




 はぁ~っ。僕は何度目かのため息をついた。
 恋愛経験なんてつい最近まで無かった僕にいきなりの高ハードルなんじゃないんですか。略奪愛なんてどこの恋愛小説だよ・・・はぁ~っ

 などど悩んでいても時間は流れるもので、ついに殿上する日を迎えた。



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