嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?

猫桜

文字の大きさ
上 下
43 / 50

淡雪、後宮回避に対策を練る・・・

しおりを挟む
 1.持病のしゃくのため伺候できないのでと断る。
 2.当日、腹痛になりやむを得ず、お断り。
 3.不慮の事故により伺候することができなかった。
 4.文が届かなかったので、知らなかった。
 5.潔くバッくれる。
 6.私は誰?ここは何処?突発性記憶障害になる。
 7.不本意だが、仕方なく伺候する。

 返事を出す前に対策を!と僕は思いつくままに書き出し、都筑達を呼び集めた。

「どう思う?」

「どうといわれましても・・・大公閣下は何と?」

「あっ、直江ね。青髭鬼元帥の策は過激だったぞ。”人的被害のない帝都の何処だかに爆薬しかけるか“とぽつりと漏らしてたよ。直江、基本、敵は殲滅の人物だからね」

「ば、馬鹿か?」

 思わず、身分も忘れて口をついたな都筑。
 うん、わかるよ、その気持ち。
 僕も言っちゃったもん。

「光顕が止めたよ」

「ああ、流石は補佐役・・・」

「混乱を制圧し、帝都を占拠できるだけの兵力がないからって」

「淡雪様~、それは~兵力が揃ってたら~躊躇なく爆破してたということですか~」

「武人、恐るべしだよ」

「・・・」

「直江に比べたら僕のこの案は、平和的だと思わない?」

 都筑が何とも言えない表情かおをする。
 九重は眉を顰め、顳かみを押さえている。
 晴は空を仰いでいた。

「申しあげても?」

 と九重がいう。
 僕は頷く。

「淡雪様、いつから持病の癪が?」

「文が届いた瞬間から発病した」

「さようですか・・・恐れながら、1と2でごさいますが、お医師を差向けられたらどうなさるおつもりですか?すぐに仮病とバレますよ」

「そこは来栖家お抱えの洪庵こうあん医師に・・・」

「無理ですよ~淡雪様稀に見る健康優良児で~食べ過ぎ以外で~診てもらったことないじゃないですか~」

「それに、そんなことは頑固一徹~曲がった事が大っ嫌いな洪庵医師《せんせい》がしませんよ」

 だめか・・・都筑のいうとおり、頑固爺さんだもんな。
 それに、こんなこと頼んだら、正座のうえ、小一時間は説教されるおのが姿が目に浮かんだ。
 黙って1と2に取消し線を引いた。
 しかめっ面をした都筑が

「4と5ですが、これも無理ですね。使者から直接渡された文ですよ。渡さなかったとなれば、受取った者を処罰しなければなりませんし、家人の質を疑われ、いい恥です。しかも、皇妃様からとなると軽くて遠島、下手をすれば死罪ですよ。また、バッくれるなど論外です」

 そこまでは考えなかった。渡さなかっただけで罪人って怖っ。
 たかが文、されど文・・・
 冤罪を作るわけにはいかない。
 これもダメかと取消し線を引いた。

「6ですが~淡雪様~いつも怒った近江さん相手に~されますから説得力ないです~」

「いつもやってるから、真実味があるとは思わない?」

「思いません~」

「やり過ぎると通用しないということをご存知ですよね」

「貴方の頭の中の構造を見てみたいものですよ」

 3人から半ば呆れ混じりに言われた。
 しぶしぶ6にも取消し線を引いた。
 残ったのは3と7か。
 7はないとして、3はいけそうじゃないか?

「3の不慮の事故ですが、これもありえませんね」

「何でだよ」

「よろしいですか、淡雪様。皇居に伺候、参内することが決まっている場合、何事も滞りなく、速やかにが大前提です。吉方を選び、穢れを避け、万が一穢れに遭った場合は参内を控えるなどは最早、昔のこと。国の中枢にいる方々以外は大事故、大災害、敵からの侵攻、肉親の生死が係わっている時を除き参内、伺候するのが努めです。帝都に爆薬を仕掛け、参内しないなんてことは以ての外ですからね」

 都筑が眼鏡を押し上げていった。

「まぁ、災害に戦争、どれも起きそうにありませんわね」

「あっ、でも~旦那様が~お餅を喉に詰まらせたならありかも~」

「父上ならなくもない。お芋でもイケるかも・・・」

 頷く晴。
 よし、ここは父上が喉に何かを詰まらせたということにしてだな・・・

「新年の年寄りでもあるまいし。それにですね、やんごとなき処からお見舞がきたらどうするんですか」

「・・・」

「結果、残ったのは7ですわね」

「それが一番避けたいんじゃないか」

「淡雪様、人間、諦めが肝心ですわよ」

「下手な考え休むに似たり」

「案外~楽しいかもです、淡雪様~」

 楽しくなんかあるもんか、あんな取澄ました人種がうようよいるところ。気疲れしかないやい。
 このままでは行くしかないのか?どうする淡雪。
 嫌だ~、行きたくないよ~。
 なんだってこう次から次に厄介事が起きるんだよ。
 男の厄年?大殺界?天中殺?何かに取り憑かれたのか?
 ふぇ~ん、神様、仏様、御先祖様、寄進にお布施、供養するからどうにかしてください~。
 僕は苦しいときだけの神頼みをしてみたが、なんの応えもなく・・・地面に埋まり込みそうだ。
 そんな僕を他所に、九重が都筑にいう。

「そうなると、御品が必要ですわね」

「御品か・・・下手な物は持っていけないうえに、それぞれの御方用に用意をしなければならないからな」

「今からだと、時間がありませんわ」

「宛ならあります~」

「晴、本当か!?」

「お任せください~、ね、淡雪様~」

 晴が僕に振ってきた。
 えっ?なに?どういうこと?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...