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淡雪とハブとマングースの戦い
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スタンドカラーシャツの上に膝下まである黒地に銀糸で縁取りをされた上着を羽織った直江と濃紺のタイトなスーツを着た千秋が並び立つ。
一見すると美男美女が並び立ち、薔薇とパステルカラーを背景にした恋愛物語の世界に誘われそうなんだけど・・・
どうも二人から醸し出される雰囲気が剣呑過ぎて、雷鳴轟く闇黒を背景にハブとマングースの戦いが連想させられる。
美男美女が並んでるのになぜだ?
解せぬ。
「貴殿は・・・」
「大公様には拝謁を賜わります由、光栄に存じます。私は中和泉商会にて会長をしております中和泉 智秋と申す者でございます」
「中和泉の・・・此度、淡雪ひいては当家に尽力してくれたことに礼を申し上げる」
直江が頭を下げた!
千秋が智秋と名乗った?
直江が礼を言ったことにも驚いたが、千秋が智秋と言ったことにも驚いた。
驚きで言葉がでない。
千秋が智秋と名乗ることは滅多にというか、ほぼないといってもよく、名乗る時は商会の力を賭してでも成し遂げたい時だけだ。
千秋、何を成し遂げたいんだろう・・・独占販売権の獲得かなぁ。この領地の販路を一手に引き受けるとなると巨額の利益見込めるもんな。
流石は大手商会の経営者の千秋だよ。チャンスは根こそぎ掴むのな。
それにしても直江のお礼を言っている姿なんて、ここに来て初めて見た。
都築のお籠り摘発の一件から挨拶程度はするようになったけど、挨拶だけだし。
意外~、お礼言えるんだ。
変にプライド高そうだから頷いて終わりか、あたり前だみたいな態度摂るのかと思ってたから新鮮。ギャップがあり過ぎて、なぜだか可愛く見えるから不思議だわ。
「一商会が淡雪様、いえ、淡雪を手助けをしただけですので」
「欺瞞だな・・・それだけではないだろう」
「わかりましたか。そうですね、淡雪だからこそと、言ったほうがいいですね」
「淡雪・・・」
直江が眉を顰めた。
「すみません、小さな頃からの付き合いですので、つい、いつも通り淡雪と呼んでしまいました」
?・・・まぁ、親友だからね。様付けでは呼ばないよね。フツー。
それでどうして直江の眉間の皺が深まるのだろう。
不思議だ。
あれか!直江、友達少なそうだし、羨ましいのか?
「・・・それで、これからどうすると?」
「取り返しますよ。鳶に油揚げをさらわれたまま大人しくするのは、性に合いませんからね」
千秋は直江を前に不敵に笑う。
その笑いが意味ありげで、いつもと違う千秋にドキリとした。
千秋が凛々しい大人男に見える。
「不愉快だな」
直江の声に嫌悪感が籠もる。
「短絡的発令に私はもっと不愉快でしたよ」
「だが、これは決まった事だ」
「翻してみせますよ」
「体面に賭けて、逃がす気はないが」
「体面に拘る貴方には渡しませんよ」
「お手並みを拝見しよう」
「その余裕が続くことを祈ってますよ」
ハブとマングースどころじゃない。
一触即発の雰囲気に僕は引いた。
口を挟むことができない殺伐感に呆然とする。
どうしてこうなったんだろう?
さっぱりわからないイミフな会話に首を傾げるばかりだよ。
呆然としている僕の袖を晴がクイクイと引っ張った。
「淡雪様~なんですか~この修羅場は」
「修羅場?」
「えっ?何にも感じないんですか?鈍感過ぎです~」
「失礼な。殺伐とした雰囲気位察知してるって」
「・・・」
晴が冷やかな目をした。
何故に?
「わかんないならいいです~馬に蹴られたくないですし~」
馬に蹴られるって、他人が恋愛事に首を突っ込んでバカをみることだったな。この会話の流れで何処にそんな要素があったと?
「けど、いつそんな仲になったんですか、淡雪様~」
「千秋とは子供の頃からだけど?」
「そうじゃあなく~大公様とです~」
「?どんな仲といわれても、此処に来たときとあまり変わりないけど?」
「なら~、変わったのは大公様ですか~」
「ないない。挨拶位しかしないんだし」
晴がため息を吐く。
「恋愛音痴だったんですね~淡雪様~」
何か呟いたが、残念ながら僕には聞こえなかった。
一見すると美男美女が並び立ち、薔薇とパステルカラーを背景にした恋愛物語の世界に誘われそうなんだけど・・・
どうも二人から醸し出される雰囲気が剣呑過ぎて、雷鳴轟く闇黒を背景にハブとマングースの戦いが連想させられる。
美男美女が並んでるのになぜだ?
解せぬ。
「貴殿は・・・」
「大公様には拝謁を賜わります由、光栄に存じます。私は中和泉商会にて会長をしております中和泉 智秋と申す者でございます」
「中和泉の・・・此度、淡雪ひいては当家に尽力してくれたことに礼を申し上げる」
直江が頭を下げた!
千秋が智秋と名乗った?
直江が礼を言ったことにも驚いたが、千秋が智秋と言ったことにも驚いた。
驚きで言葉がでない。
千秋が智秋と名乗ることは滅多にというか、ほぼないといってもよく、名乗る時は商会の力を賭してでも成し遂げたい時だけだ。
千秋、何を成し遂げたいんだろう・・・独占販売権の獲得かなぁ。この領地の販路を一手に引き受けるとなると巨額の利益見込めるもんな。
流石は大手商会の経営者の千秋だよ。チャンスは根こそぎ掴むのな。
それにしても直江のお礼を言っている姿なんて、ここに来て初めて見た。
都築のお籠り摘発の一件から挨拶程度はするようになったけど、挨拶だけだし。
意外~、お礼言えるんだ。
変にプライド高そうだから頷いて終わりか、あたり前だみたいな態度摂るのかと思ってたから新鮮。ギャップがあり過ぎて、なぜだか可愛く見えるから不思議だわ。
「一商会が淡雪様、いえ、淡雪を手助けをしただけですので」
「欺瞞だな・・・それだけではないだろう」
「わかりましたか。そうですね、淡雪だからこそと、言ったほうがいいですね」
「淡雪・・・」
直江が眉を顰めた。
「すみません、小さな頃からの付き合いですので、つい、いつも通り淡雪と呼んでしまいました」
?・・・まぁ、親友だからね。様付けでは呼ばないよね。フツー。
それでどうして直江の眉間の皺が深まるのだろう。
不思議だ。
あれか!直江、友達少なそうだし、羨ましいのか?
「・・・それで、これからどうすると?」
「取り返しますよ。鳶に油揚げをさらわれたまま大人しくするのは、性に合いませんからね」
千秋は直江を前に不敵に笑う。
その笑いが意味ありげで、いつもと違う千秋にドキリとした。
千秋が凛々しい大人男に見える。
「不愉快だな」
直江の声に嫌悪感が籠もる。
「短絡的発令に私はもっと不愉快でしたよ」
「だが、これは決まった事だ」
「翻してみせますよ」
「体面に賭けて、逃がす気はないが」
「体面に拘る貴方には渡しませんよ」
「お手並みを拝見しよう」
「その余裕が続くことを祈ってますよ」
ハブとマングースどころじゃない。
一触即発の雰囲気に僕は引いた。
口を挟むことができない殺伐感に呆然とする。
どうしてこうなったんだろう?
さっぱりわからないイミフな会話に首を傾げるばかりだよ。
呆然としている僕の袖を晴がクイクイと引っ張った。
「淡雪様~なんですか~この修羅場は」
「修羅場?」
「えっ?何にも感じないんですか?鈍感過ぎです~」
「失礼な。殺伐とした雰囲気位察知してるって」
「・・・」
晴が冷やかな目をした。
何故に?
「わかんないならいいです~馬に蹴られたくないですし~」
馬に蹴られるって、他人が恋愛事に首を突っ込んでバカをみることだったな。この会話の流れで何処にそんな要素があったと?
「けど、いつそんな仲になったんですか、淡雪様~」
「千秋とは子供の頃からだけど?」
「そうじゃあなく~大公様とです~」
「?どんな仲といわれても、此処に来たときとあまり変わりないけど?」
「なら~、変わったのは大公様ですか~」
「ないない。挨拶位しかしないんだし」
晴がため息を吐く。
「恋愛音痴だったんですね~淡雪様~」
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