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淡雪 再度、離縁計画について考えていると
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「おかえりなさいませ~淡雪様~」
晴の元気な声で出迎えられた。
「いかがでした~」
いかがでしたもどうでしたもない。見ればわかるだろう。いつものように競歩強化練習のおかげで僕はヘトヘトで帰ってきたんだけど。
「あれ~?大公様は?」
「ああっ?」
「いつもなら~大公様に~お姫様抱っこされて~戻ってくるじゃないですか」
「ふふん。いつまでもあると思うな、親と金。僕がいつまでもお姫様抱っこされていると思うなよ。体が馴れてきたもん。はははっ、これで黒歴史、お姫様抱っこは卒業だ!」
高笑いをする僕に晴は呆れた顔をした。
「卒業ですか~本当に~?」
「今の距離ならイケる」
「まぁ、体力が付いたのはいいことですね~逃げられなくて~このまま結婚ともなれば、色々と体力いりますし~」
晴が誂う。
「なんてこと言うんだよ。嫌なフラグを立てるなよ、晴」
「仕方ないじゃありませんか~大公様のお屋敷に来て、早、3ヶ月。一進一退どころか、一日一歩三日で三歩、三歩進んで二歩下がるですもの~」
「くっ」
晴、なんてことを。
事実なだけに言い返せないところが悔しい。
「けど~このまま体力強化で過ごしているだけじゃ~あれよあれよという間にめでたくも華燭の典ですね~」
めでたく華燭の典・・・冗談じゃない。
このままだと青髭鬼元帥の嫁だと!?
何を言ってるんだよ、それを回避するために暗躍してるんじゃないか。
そりゃ、成果は今ひとつ、いや、ほとんどゼロに近いけど。
晴もそれは知っているはずだよね。
「都筑さんもなんだかんだといいつつも、今ではここ西蓮寺家の家令紛いになって差配してますしねぇ~」
そうなんだよ。
あいつ、あのデタラメな帳簿事件以来、総ての帳簿を調査し、無駄な事や効率の悪い事をすぐさま改善した。その成果は絶大で、いまではこの西蓮寺家で一目も二目も置かれている。使用人達も都筑に一々お伺いをたて、都筑の指示のもと働いているといっても過言じゃない。
一体、あいつはどこの家人なんだ。
直江の弱みを握り、離縁に持っていくという計画をコロッと忘れているのではないだろうかとここに至って、本気で心配になってきた。
「淡雪様~、もういい加減に諦めちゃいません?」
「諦めちゃいません」
「往生際悪い~」
「男の一念岩をも通す。必ずや離縁されてみせるもん」
「無駄な足掻きですよ~」
生死がかかってるならとことん往生際悪く、悪足掻きしますよ、人間は。
御上からの命で仕方なく嫁いできた清く正しく美しくをモットーの僕が、なんで無口で情緒欠落者の青髭鬼元帥と呼ばれる直江に殺されなければならないんだよ。おかしいだろう、絶対に。
マジで今後の対策を練り直さねば。
さて、都筑を探し出すかなと思っていたら
「淡雪様っ、大変ですっ!!」
いつもは取り澄ましている都筑がけたたましくドアを蹴破る勢いで部屋に転がり込んできた。
僕も思うところがあったのでぎょっとなって立ち上がり、
「どうした!?何があったんだよ!?まさか、青髭大公が本領発揮して、僕をお手討ちに来たのっ!?」
と叫んだ。
華燭の典とか遅々として進まない計画が頭にあるのでこんな発想しかできない。
都筑はというと、顔を汗だらけにしている。
「それどころじゃないです。いや、少しは関係があるか?」
都筑は首を傾げた。
どっちなんだよ。
「抜かりました、淡雪様。あの本多とかいう武将、財政再建のために手を差し伸べ、一時的に私が家政を預かり、各所に指示したりと忙殺されて他に気が回らないのをいいことにとんでもない計画を進めてたんですよ!あれが、長年横領し、家中に巣食っていた虫を退治してやった私達にする仕打ちかっ!」
物凄い怒りように僕も晴も怯むしかなかった。
恐る恐る
「光顕がどうかしたのかな、都筑。直江と散歩しろとか食事を一緒に摂れとか何かに付けて会わせたがるけどさ、それだけだし。まぁ、こっちは散歩という名の競歩強化練習で最初の二、三日は筋肉痛地獄だったけど」
都筑はもどかしそうに、ちっと舌打ちをした。
「下地は蒔かれてたのか・・・なぜ、気が付かなかったんですか、淡雪様、晴」
「えっ?何が?」
見に覚えのない僕はぽかんとする。
その様に都筑の顔が般若と化した。
うわ~、本当に鬼の形相になるんだ、人間って。
「外堀を埋められているんですよ。接点を多くし、お互いに意識させ、仲良くさせた頃合いを見計らい一気に初夜まで持ち込む算段なんですよ、ここの家人等は」
「一気に初夜・・・」
聞き慣れない言葉に僕は呆然とする。
「まっ・・・」
隣で晴が薄っすらと顔を赤らめる。
「ええ、そうですよ!下手をしたら明日にでも式、明晩に新郎新婦の床入、明後日にはめでたく夫婦です。そうなったら死と隣合わせの毎日、離縁だって今以上に困難になること間違いありません。どうするんですか、淡雪様!」
都筑がたたみ掛ける。
どうするんですかっていわれても・・・どうしよう・・・
晴の元気な声で出迎えられた。
「いかがでした~」
いかがでしたもどうでしたもない。見ればわかるだろう。いつものように競歩強化練習のおかげで僕はヘトヘトで帰ってきたんだけど。
「あれ~?大公様は?」
「ああっ?」
「いつもなら~大公様に~お姫様抱っこされて~戻ってくるじゃないですか」
「ふふん。いつまでもあると思うな、親と金。僕がいつまでもお姫様抱っこされていると思うなよ。体が馴れてきたもん。はははっ、これで黒歴史、お姫様抱っこは卒業だ!」
高笑いをする僕に晴は呆れた顔をした。
「卒業ですか~本当に~?」
「今の距離ならイケる」
「まぁ、体力が付いたのはいいことですね~逃げられなくて~このまま結婚ともなれば、色々と体力いりますし~」
晴が誂う。
「なんてこと言うんだよ。嫌なフラグを立てるなよ、晴」
「仕方ないじゃありませんか~大公様のお屋敷に来て、早、3ヶ月。一進一退どころか、一日一歩三日で三歩、三歩進んで二歩下がるですもの~」
「くっ」
晴、なんてことを。
事実なだけに言い返せないところが悔しい。
「けど~このまま体力強化で過ごしているだけじゃ~あれよあれよという間にめでたくも華燭の典ですね~」
めでたく華燭の典・・・冗談じゃない。
このままだと青髭鬼元帥の嫁だと!?
何を言ってるんだよ、それを回避するために暗躍してるんじゃないか。
そりゃ、成果は今ひとつ、いや、ほとんどゼロに近いけど。
晴もそれは知っているはずだよね。
「都筑さんもなんだかんだといいつつも、今ではここ西蓮寺家の家令紛いになって差配してますしねぇ~」
そうなんだよ。
あいつ、あのデタラメな帳簿事件以来、総ての帳簿を調査し、無駄な事や効率の悪い事をすぐさま改善した。その成果は絶大で、いまではこの西蓮寺家で一目も二目も置かれている。使用人達も都筑に一々お伺いをたて、都筑の指示のもと働いているといっても過言じゃない。
一体、あいつはどこの家人なんだ。
直江の弱みを握り、離縁に持っていくという計画をコロッと忘れているのではないだろうかとここに至って、本気で心配になってきた。
「淡雪様~、もういい加減に諦めちゃいません?」
「諦めちゃいません」
「往生際悪い~」
「男の一念岩をも通す。必ずや離縁されてみせるもん」
「無駄な足掻きですよ~」
生死がかかってるならとことん往生際悪く、悪足掻きしますよ、人間は。
御上からの命で仕方なく嫁いできた清く正しく美しくをモットーの僕が、なんで無口で情緒欠落者の青髭鬼元帥と呼ばれる直江に殺されなければならないんだよ。おかしいだろう、絶対に。
マジで今後の対策を練り直さねば。
さて、都筑を探し出すかなと思っていたら
「淡雪様っ、大変ですっ!!」
いつもは取り澄ましている都筑がけたたましくドアを蹴破る勢いで部屋に転がり込んできた。
僕も思うところがあったのでぎょっとなって立ち上がり、
「どうした!?何があったんだよ!?まさか、青髭大公が本領発揮して、僕をお手討ちに来たのっ!?」
と叫んだ。
華燭の典とか遅々として進まない計画が頭にあるのでこんな発想しかできない。
都筑はというと、顔を汗だらけにしている。
「それどころじゃないです。いや、少しは関係があるか?」
都筑は首を傾げた。
どっちなんだよ。
「抜かりました、淡雪様。あの本多とかいう武将、財政再建のために手を差し伸べ、一時的に私が家政を預かり、各所に指示したりと忙殺されて他に気が回らないのをいいことにとんでもない計画を進めてたんですよ!あれが、長年横領し、家中に巣食っていた虫を退治してやった私達にする仕打ちかっ!」
物凄い怒りように僕も晴も怯むしかなかった。
恐る恐る
「光顕がどうかしたのかな、都筑。直江と散歩しろとか食事を一緒に摂れとか何かに付けて会わせたがるけどさ、それだけだし。まぁ、こっちは散歩という名の競歩強化練習で最初の二、三日は筋肉痛地獄だったけど」
都筑はもどかしそうに、ちっと舌打ちをした。
「下地は蒔かれてたのか・・・なぜ、気が付かなかったんですか、淡雪様、晴」
「えっ?何が?」
見に覚えのない僕はぽかんとする。
その様に都筑の顔が般若と化した。
うわ~、本当に鬼の形相になるんだ、人間って。
「外堀を埋められているんですよ。接点を多くし、お互いに意識させ、仲良くさせた頃合いを見計らい一気に初夜まで持ち込む算段なんですよ、ここの家人等は」
「一気に初夜・・・」
聞き慣れない言葉に僕は呆然とする。
「まっ・・・」
隣で晴が薄っすらと顔を赤らめる。
「ええ、そうですよ!下手をしたら明日にでも式、明晩に新郎新婦の床入、明後日にはめでたく夫婦です。そうなったら死と隣合わせの毎日、離縁だって今以上に困難になること間違いありません。どうするんですか、淡雪様!」
都筑がたたみ掛ける。
どうするんですかっていわれても・・・どうしよう・・・
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