はちみつの君

れお

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  はちみつの君

                 
  

 気になっていたのは少しだけ。本当だよ。たまたま、廊下を歩く君の髪が、夕日に照らされてはちみついろに輝いていたのを見たんだ。

   そのとき、甘い匂いがした。

 



  その日から、ひとつ前の席に座る君から本当にあまい匂いがしていることに気がついた。

 授業中だったけど、僕は思い切って彼の背中をとんとん、とたたいた。

「ねぇ、何か食べてるの?」

 振り向いた彼は驚いた顔をしていた。それから黒板に板書する先生の姿を確認して、小声で聞き返してきた。

「なんで?」

「……その、匂いがする」

「ごめん、なんか臭かった?」

   ちがうよ、そうじゃなくて……。

「あまい……甘い匂いがしてるんだ」

「甘い?あ、そっか」

 彼は思いついたようにポケットから何かを取り出して、僕に手渡した。

それは黄色というにはくすんでいて、オレンジ色というよりはもっと透明感がある。そう、これははちみついろ。はちみついろをした……石?

僕の何これ?という表情を読み取った彼は少し自慢げに教えてくれた。

「はちみつ。はちみつを固めたやつさ」

「すごい!これどうしたの?」

「もらった」

 誰に?と聞こうとしたら彼の後ろ頭にカツンッとチョークが当たった音がした。

 


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