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第1部
6 | 憂鬱な魔術師 - セルシウス②
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ベルスタは私の舌を遠慮がちに吸っていたが、控えめだったのははじめだけだった。
しだいに吐息が混じり、舌が唾液をからめとるように乱れじゅるっと音を立てる。そうなると、魔力云々ではなく生理的に誘われている気分になった。
じりじりと理性が焼かれていくような気がする。これ以上はよろしくない。
私はかろうじて残っている理性で、「…もう、いいだろう」と体を離した。
「申し訳ありません…夢中に、なってしまって」
「中和されたか?」
ベルスタは困ったように、「中和されたというのはどうわかるのですか」と聞いてきた。
自分の魔力の加減くらいわかるだろう、と思ったが言えなかった。ベルスタの魔力は発現していないし、そうなると自分の魔力がどうなっているかなどわかるわけがないのだ。
「魔力の察知はできないんだよな、失念していた。私が見る限りリリスの魔力はだいぶ消えているが、体の調子はどうだ?」
「そうですか…では、はい。もう十分です」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「恥ずかしながら、こういうことを積極的にしてこなかったもので、どこまでが魔力のせいで、どこまでが自分の欲求なのかわからず…すみません」
なんともいえない色香に戸惑う。
「謝る必要はない。リリスの魔力は弱まっているが…それで済むものではないのかもしれない」
魔力が消えればおさまるとリリスは言わなかった。「体の調子はどうだ?」と、もう一度聞いてみる。
「うまく、言えないのですが…体の奥が膿んでむず痒いというか…」
「男との経験は?」
ベルスタはぎょっとした顔をして、「ありません」と言う。
「驚くことはないだろう、私が来なければ先程の男としていたんじゃないのか」
「あれはリリスのせいです」
「いまのこの状況もリリスのせいだと、割り切れるか」
「はい」とベルスタが言うのと、私が再びくちびるを寄せたのとどちらが早かったのか。
もう理性が止める必要もない。口づけを交わしながら、ベルスタの体をベッドへ倒した。
浮ついた気分で衣服を脱がす。均整のとれた肉体の、左腕が途中から失われていることに今さら気づく。
私の視線に気づいたのか、「お見苦しいものを」とベルスタが恥じるように言う。しまったと思う。
「違う…」
言葉が見つからない。
私は、その腕を元に戻す魔術を知っている。しかし安易に魔術を使うことは控えなければならない。というさもそれらしい言い訳の裏で、左腕が戻ればベルスタは羊飼いを辞めるかもしれないと考えていた。
「…違うんだ」
謝罪のつもりで左腕にも口づけをする。
「見苦しくなどない。立派な働き者の羊飼いの体だ」
潤んだ瞳に見つめられれば欲情を煽られる。私までもリリスの魔力に当てられているのだろうか。
ベルスタの中心で苦しそうに張り詰めているものをそろりと握った。
「全て、リリスの魔力のせいだ」
それは自分のための言い訳でもあったかもしれない。ベルスタのものと自分のものを手の内で擦り合わせて腰を揺らす。
息づかいがみだらに途切れる。先をいじるとベルスタはいとも簡単に達した。
私が体を離すと、「まだ、奥が…」と縋るように言われる。
「これで終わると思っているのか」
くちびるを合わせる。
「ここからが本番だぞ」
口づけにもうぎこちなさはない。じっくりと互いを確かめるように舌を絡め、吐息を食む。
汗がにじむ肌を撫で、ベルスタの脇に寝そべる。背後から耳たぶを甘噛みし、うなじに吸いつきながら引き締まった肉体をさする。
「…なにをされるかわかっているんだよな」
「大丈夫です」
なにが大丈夫なのか。
「辛かったら言えよ」
窄まりに指を這わせる。ほぐすようにふにふにと指を押しつけ少しずつ奥を開いていく。
ベルスタの肩が震えているが、それが痛みからではないことは、垂れはじめた先走りでわかる。
「声、出していいぞ」
「…いえ」
「聞きたいんだ、聞かせてくれ」
一本だった指を二本に増やし強めに中を擦ると、「ぅあ」と声がもれた。
「辛いのか気持ちいいのかどちらかわからないな」
答えを期待していたわけではなかったが、「どちらもです」と返事があった。
「もどかしくて辛いのですが、気持ちよくもあります」
「もどかしいか」
思わず笑っている自分がいた。なんと律儀な報告なのか。どちらにしても良いってことだよな。
まだ窄まりはきつそうではあるが、ねだられたようなものなので自分のものを押しあててみる。
「お前が言う奥とやらに届くといいんだが」
ベルスタが息をのむのがわかった。わずかな反応を逃したくなくて、味わうように少しずつ体を繋げた。深く、深く。
そういえば、もうリリスの魔力は感じない。ベルスタを背後から抱きしめる。首筋に鼻を擦りつけて自分の魔力に混じるベルスタの匂いをかいだ。
もし、このままベルスタの中へ吐き出せば、そこに含まれている魔力もこの羊飼いの中に残るだろう。
「…動くぞ」
体に負担をかけないようにゆっくりと腰を動かす。かすかにベルスタが声をもらす。
「ッはァ…もっと…」
こうして交わってしまえばベスルタの内の熱はおさまる。人助けの延長線上の、なにか。割り切れるかと聞いたのは自分なのに。
「急かしてくれるな」
行為を終えてしまうのが惜しくて、切羽詰まった欲望をなだめた。
しだいに吐息が混じり、舌が唾液をからめとるように乱れじゅるっと音を立てる。そうなると、魔力云々ではなく生理的に誘われている気分になった。
じりじりと理性が焼かれていくような気がする。これ以上はよろしくない。
私はかろうじて残っている理性で、「…もう、いいだろう」と体を離した。
「申し訳ありません…夢中に、なってしまって」
「中和されたか?」
ベルスタは困ったように、「中和されたというのはどうわかるのですか」と聞いてきた。
自分の魔力の加減くらいわかるだろう、と思ったが言えなかった。ベルスタの魔力は発現していないし、そうなると自分の魔力がどうなっているかなどわかるわけがないのだ。
「魔力の察知はできないんだよな、失念していた。私が見る限りリリスの魔力はだいぶ消えているが、体の調子はどうだ?」
「そうですか…では、はい。もう十分です」
「なんだ、歯切れが悪いな」
「恥ずかしながら、こういうことを積極的にしてこなかったもので、どこまでが魔力のせいで、どこまでが自分の欲求なのかわからず…すみません」
なんともいえない色香に戸惑う。
「謝る必要はない。リリスの魔力は弱まっているが…それで済むものではないのかもしれない」
魔力が消えればおさまるとリリスは言わなかった。「体の調子はどうだ?」と、もう一度聞いてみる。
「うまく、言えないのですが…体の奥が膿んでむず痒いというか…」
「男との経験は?」
ベルスタはぎょっとした顔をして、「ありません」と言う。
「驚くことはないだろう、私が来なければ先程の男としていたんじゃないのか」
「あれはリリスのせいです」
「いまのこの状況もリリスのせいだと、割り切れるか」
「はい」とベルスタが言うのと、私が再びくちびるを寄せたのとどちらが早かったのか。
もう理性が止める必要もない。口づけを交わしながら、ベルスタの体をベッドへ倒した。
浮ついた気分で衣服を脱がす。均整のとれた肉体の、左腕が途中から失われていることに今さら気づく。
私の視線に気づいたのか、「お見苦しいものを」とベルスタが恥じるように言う。しまったと思う。
「違う…」
言葉が見つからない。
私は、その腕を元に戻す魔術を知っている。しかし安易に魔術を使うことは控えなければならない。というさもそれらしい言い訳の裏で、左腕が戻ればベルスタは羊飼いを辞めるかもしれないと考えていた。
「…違うんだ」
謝罪のつもりで左腕にも口づけをする。
「見苦しくなどない。立派な働き者の羊飼いの体だ」
潤んだ瞳に見つめられれば欲情を煽られる。私までもリリスの魔力に当てられているのだろうか。
ベルスタの中心で苦しそうに張り詰めているものをそろりと握った。
「全て、リリスの魔力のせいだ」
それは自分のための言い訳でもあったかもしれない。ベルスタのものと自分のものを手の内で擦り合わせて腰を揺らす。
息づかいがみだらに途切れる。先をいじるとベルスタはいとも簡単に達した。
私が体を離すと、「まだ、奥が…」と縋るように言われる。
「これで終わると思っているのか」
くちびるを合わせる。
「ここからが本番だぞ」
口づけにもうぎこちなさはない。じっくりと互いを確かめるように舌を絡め、吐息を食む。
汗がにじむ肌を撫で、ベルスタの脇に寝そべる。背後から耳たぶを甘噛みし、うなじに吸いつきながら引き締まった肉体をさする。
「…なにをされるかわかっているんだよな」
「大丈夫です」
なにが大丈夫なのか。
「辛かったら言えよ」
窄まりに指を這わせる。ほぐすようにふにふにと指を押しつけ少しずつ奥を開いていく。
ベルスタの肩が震えているが、それが痛みからではないことは、垂れはじめた先走りでわかる。
「声、出していいぞ」
「…いえ」
「聞きたいんだ、聞かせてくれ」
一本だった指を二本に増やし強めに中を擦ると、「ぅあ」と声がもれた。
「辛いのか気持ちいいのかどちらかわからないな」
答えを期待していたわけではなかったが、「どちらもです」と返事があった。
「もどかしくて辛いのですが、気持ちよくもあります」
「もどかしいか」
思わず笑っている自分がいた。なんと律儀な報告なのか。どちらにしても良いってことだよな。
まだ窄まりはきつそうではあるが、ねだられたようなものなので自分のものを押しあててみる。
「お前が言う奥とやらに届くといいんだが」
ベルスタが息をのむのがわかった。わずかな反応を逃したくなくて、味わうように少しずつ体を繋げた。深く、深く。
そういえば、もうリリスの魔力は感じない。ベルスタを背後から抱きしめる。首筋に鼻を擦りつけて自分の魔力に混じるベルスタの匂いをかいだ。
もし、このままベルスタの中へ吐き出せば、そこに含まれている魔力もこの羊飼いの中に残るだろう。
「…動くぞ」
体に負担をかけないようにゆっくりと腰を動かす。かすかにベルスタが声をもらす。
「ッはァ…もっと…」
こうして交わってしまえばベスルタの内の熱はおさまる。人助けの延長線上の、なにか。割り切れるかと聞いたのは自分なのに。
「急かしてくれるな」
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