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第一話 死亡
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塾も終わり、確かな疲労感を感じながら駐輪場を目指す。塾は繁華街の真っ只中にあり、夜になると治安は非常に悪い。俺は親に捨てられ、雀の涙ほどの奨学金と高2の夏休みに必死で貯めたバイトの貯金でなんとかここの塾を選んだのだが、この街並みを見ると少し後悔してしまう。
時短のために迷路のようになった裏路地を進む。駐輪場まであと少しというところで誰かの肩にぶつかる。
「すみません」
小声で言って立ち去ろうとする。
ガッ、と後頭部に走る衝撃に、僕は最悪の事態を想起した。
地面に向かって加速していく視界は、現実とは裏腹にゆっくりとなっていった。
殴られた、ということだけは明確に理解できたが、今更どうしようもない。
俺は殴られた勢いをそのままに倒れた。
手をついて立ち上がろうとして、腹に蹴りをもらう。
殴られた頭がなぜか痛くない。腹もそうだ。
これ以上やられてはたまらないので、なんとか起き上がりざまに相手に組みつく。
相手のギラついた目が合う。そいつが単なる酔っ払いではないことを理解する。
その時、僕は相手の手にした武器を見ていなかった。
組みついたまま必死の抵抗をしている最中に、ヒザやアタマなどを幾度となくぶつけた。
しかしその抵抗も一瞬で終わる。
乾いた破裂音がして、次の瞬間には腹が一気に熱くなる。
しがみついていた腕から途端に力が抜けていく。
腹に感じている熱さに思わず手を触れて、生温い、ドロっとしたナニカが染みていくのがわかった。
ふと目を向けると、血溜まりができていた。
男を見ると、手には見慣れない武器があった。
おい、なんで拳銃なんて持ってるんだよ。
白く薄らいでいく視界のなか、僕は急に寒さを感じた。
終わるんだな、とだけわかった。
俺は死んだ。
時短のために迷路のようになった裏路地を進む。駐輪場まであと少しというところで誰かの肩にぶつかる。
「すみません」
小声で言って立ち去ろうとする。
ガッ、と後頭部に走る衝撃に、僕は最悪の事態を想起した。
地面に向かって加速していく視界は、現実とは裏腹にゆっくりとなっていった。
殴られた、ということだけは明確に理解できたが、今更どうしようもない。
俺は殴られた勢いをそのままに倒れた。
手をついて立ち上がろうとして、腹に蹴りをもらう。
殴られた頭がなぜか痛くない。腹もそうだ。
これ以上やられてはたまらないので、なんとか起き上がりざまに相手に組みつく。
相手のギラついた目が合う。そいつが単なる酔っ払いではないことを理解する。
その時、僕は相手の手にした武器を見ていなかった。
組みついたまま必死の抵抗をしている最中に、ヒザやアタマなどを幾度となくぶつけた。
しかしその抵抗も一瞬で終わる。
乾いた破裂音がして、次の瞬間には腹が一気に熱くなる。
しがみついていた腕から途端に力が抜けていく。
腹に感じている熱さに思わず手を触れて、生温い、ドロっとしたナニカが染みていくのがわかった。
ふと目を向けると、血溜まりができていた。
男を見ると、手には見慣れない武器があった。
おい、なんで拳銃なんて持ってるんだよ。
白く薄らいでいく視界のなか、僕は急に寒さを感じた。
終わるんだな、とだけわかった。
俺は死んだ。
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