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第四話 お礼

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緊張の糸が緩んだのか、体をホールドしてくる力が弱まったので上半身を起こす。ちょうど俺も緊張の糸が切れた。
エンジンブレーキを使って速度を下げ、ゆっくりと止まる。

「「はあー」」
同じタイミングでため息をついてしまった。

俺がエンジンを止めると同時に後ろの女性が飛び降りる。

サイドスタンドをだし、車体をゆっくりと傾ける。
サイドスタンドが接地したのを確認し、バイクを降りた。

ヘルメットを脱ぎ、女性を見る。

俺より若いじゃん。
少女という言葉はギリギリ当てはまらないが、若い女性がいた。

ちょっと待って、俺こんな子を後ろに乗せてたわけ!?
彼女いない歴イコール年齢の俺はもちろん二人乗りもしたことない。
やっべ、コミュ障の俺じゃ目合わせれないや。

明後日の方向を向きながらチラチラとその女性に視線を送る。

「、、、さっきは助けてくれてありがとう、、、」
ちらっと女性を見る。

真摯な目だ。

「、、、、、、、どうも」



自然が奏でる静寂が訪れる。

「「あの」」
異世界ですか?なんて直球には聞けないのに見切り発進してしまった。

ここは引こう。
「どうぞ」

「えっと、すごい馬?の魔道具?ですね」
バイクのことだろうか?

「えっと、これ魔道具って言うんですね。何も知らなくて、、、、ここがどこだか」
怪しまれるだろうか?でも言ってしまったんだし今更撤回できない。

「うそ、記憶喪失かな。でも魔道具の操作は完璧だし話も通じてるわね」
記憶喪失はいい設定だと思ったが嘘はいつまでも続かないだろう。

「僕は多分この世界じゃない他の世界から来た気がするのです。トレントとか魔物?の類はいない、、、」
信じてもらえなかったら信じてもらえないでもういいや。
この先の街でまた別の人に今度は嘘で突き通したらいい。

「そんな、本みたいな話、、、、まぁいいや。私あなたが誰だろうと気にしないし、命の恩人には変わりないわ」
信じてくれたかどうかは微妙だが、この人がいい人のようだ。

「自己紹介が遅れたわ、私はクロエ。一応アーガイル家の娘よ」
アーガイル家が何かはわからないが有名なのだろうか。

「ノリユキ苗字がクスノキ、、、です」
名前が先なのか苗字が先なのか、彼女の自己紹介では分からなかった。

「ノリユキね。改めてお礼を言うわ。ありがとう命の恩人」
深々と頭を下げる。

「いえいえ、、、、、その、近くに街とかがあるんですか?道もわからないし、勝手もわからないので教えてもらいたいのですが、、、」
このまま路頭に迷うのも嫌だ。

「そんなこと!?お礼のつもりで実家に招待するつもりだったからそんなの遠慮しないで。さあ、アクアウルフの街はすぐそこよ!行くわよ!」
そう言ってクロエが歩き出してしまう。

俺は慌てて追いかけようとバイクを押すが、追いつけない。
バイク重い、、、

「ちょちょちょ、、、街ってこっからどれくらい?」
少なくとも見える範囲にはない。
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