上 下
2 / 13

第二話 走る木

しおりを挟む
そろそろか?
こう思い始めて3回目。ガソリンのメモリが一つ消えて半分になろうとしている。このバイクは燃費がかなり良い。どれだけ走ったのか、、、

流石に若干の焦りと違和感を抱き始める。

「俺こんな山奥に入ったか?あとなんで携帯の電波が復活しねぇんだよ。せめてGPSだけでも復活しろよ」

携帯がフリーズしたのかと思って再起動しても変化なし。
むしろ地図が消えて最悪の状況になってしまった。

諦めてもう少し進もう。そう決めて携帯から目を上げた時、奥のカーブの先から土煙が見えた。

「車か!?」
やっと道を尋ねることができるジモ民が来た。どう期待したのも束の間、一人の全力疾走する女性、自分と同い年ぐらいの少女を見つけた。

土煙をあげているのはあの少女か!?????

答えは違った。土煙はもっと後ろから上がっていた。

「誰か!助っ」
軽装で走りやすそうな服装をした女性が俺を発見する。

俺と目があって体感時間3秒が経過した。
「助けてー」

後ろの土煙の正体がカーブの先から姿を表す。

木!???

周りと同化していて一瞬目がバグったが確かに気が動いている。それもなかなかの大木だ。

根っこがもじゃもじゃと動いて移動する大木には鳥肌が立たずにはいられなかった。

女性は半泣きになりながら全力疾走している。

俺の進行方向からくる女性と大木。

Uターンは、、、できない。道幅が足りない。

女性と大木が大体100メートルぐらい離れている。そして、その女性と俺の距離も100メートルほど。
20秒もしない内にこちらに到達するだろう。

やばい。バイクを止めてサイドスタンドで方向変換する時間もない。
咄嗟に思いついたのがアクセルターン。後輪を空転させてターンする方法だがやったことない。

やってみるか。

今のままではバイクを捨てて走って逃げるしかない。

「思い切りが大切だ!」
独り言で心を奮い立たせアクセルを煽る。
ハンドルを完全に切り足をついてバイクを傾ける。

今だ!

レブに当たった瞬間にクラッチを繋げる。

後輪が滑り出す。

ズァー

バイクの後輪が180度移動する。

これで逃げる準備は完璧だ。
女性が到達するまであと5秒もない。

「飛び乗って!」
叫ぶ。

それが聞こえたからか、初めからそうするつもりだったのかはわからないが、かなり綺麗な踏み込みとジャンプをして後ろに飛び乗ってきた。

「捕まって」
そう叫ぶとその女性は最も簡単にその豊満な胸を押し付け胸に腕を回してきた。
きっと俺が男だということを気にする余裕もないのだろう。

さっきと同じように豪快にアクセルを煽りクラッチを繋げる。
砂利道で滑りそうになる車体をクラッチで調整しながら前へ打ち出されるように加速する。

2速、3速、シフトと共に直線的に上がる速度。

逃げ切れる見込みができて少しの余裕が生まれる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

帝国の第一皇女に転生しましたが3日で誘拐されました

山田うちう
ファンタジー
帝国の皇女に転生するも、生後3日で誘拐されてしまう。 犯人を追ってくれた騎士により命は助かるが、隣国で一人置き去りに。 たまたま通りかかった、隣国の伯爵に拾われ、伯爵家の一人娘ルセルとして育つ。 何不自由なく育ったルセルだが、5歳の時に受けた教会の洗礼式で真名を与えられ、背中に大きな太陽のアザが浮かび上がる。。。

処理中です...