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1章スローライフ準備編

25 別れ

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「あのさ、、、その、、、」

「んだよ」
部屋に戻って話を切り出した。

アセナは特に何かをしているわけではなかったが、僕の雰囲気を感じ取ったのか面倒そうに睨んだ。

アセナの威圧は慣れていても恐怖を感じる。それが伝え方を酷くした。

「お世話になった。借りはいつかちゃんと返します」

「はぁ?」
一段と視線が鋭くなる。

「今日中には荷物をまとめて出ます。この村にはいると思うのでこれからもよろしくお願
「なんでだよ」
え?」

「なんでそうなるんだよ!!」
急に声を荒げた。

怖くて目を合わせれなかったが、怒りとはちょっと違ったように思える。思い詰めたような。

「もういい。そんなんだからお前は雑魚のままなんだ。オレが出ていく!あのババアに残り一年分の家賃でもなんでも返金して貰っとけ!」

矢継ぎ早に言われて言い返す暇もなく出て行ってしまった。

一人アセナの部屋に残される。

そしてアセナが一人階段で呟く。
「わかってた」






「結局僕もアセナもどうしたかったんだろう」
なんで僕が出ていくはずが、アセナが出ていくんだよ。

部屋で呆然と立ち尽くした。



しばらくは考え事をしていたと思う。頭がぐちゃぐちゃで、自分の置かれた状況でさえもわかっていない。

ミラ母さんに夜ご飯だと呼ばれ、食堂に来た。

「あの馬鹿と喧嘩したのかい、ははは気にするこたぁねーで!」

出されたアツアツのグラタンは優しい味がして美味しかった。でもなぜかアセナと食べた記憶を思い出して涙が出た。
グラタンが熱すぎただけだ。口の中が火傷して、涙が、、、


「なんだいそんな状態なのかい。それじゃあの狼が少し可哀想だね」
と、言われた。

「違う!ちがうの、ミラ母さんのグラタンが熱いから。振ったんじゃない!」

ミラ母さんのやれやれという顔を見る勇気はなかった。

ひょっとしたらアセナは半人前のまま師弟関係を解消すると言われたから怒ってしまったのかもしれない。師匠としての責任とか。師匠として見限られた、なんてアセナが思っていたら、今以上に罪悪感を覚えずにはいられない。
でも僕の気持ちも考えて欲しい。このまま続けるなんて、叶わぬものに期待してしまう。


そのまま部屋に帰っても寝れる気がしなかったので、冒険者の服装に着替えて外に飛び出した。

クエストは受注しない。常設のクエスト、いつでも買い取ってくれるやつを目当てに少しだけ行こう。


「お、アキトっちじゃん。こんな時間からどこいくの?」
村の出入り口のところでラルフとオスカーにあった。

「小銭を少しだけ稼ごうと思って」

「ひょっとして金欠!?まぁ俺らも新しいコレ買っちったからさ!金欠なんだわ。ついて行ってもいい?」

どうやらラルフは新しい魔剣を買ったらしい。この前アセナが連れてきた行商から入手したのだろう。

初心者を思い出すような草摘みや、雑魚モンスターをいくつか討伐し村に帰った。
やっぱりアセナの家には帰る気が起きずに、久しぶりに宿に泊まった。

決して大きいとは言えない村だ。アセナに街中で出会わなかったのを見るに、もう村を出て行ってしまったのかもしれない。

僕は僕が嫌いかもしれない。
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