オオカミ獣人にスローライフの邪魔される ツンデレはやめてくれ!

さえ

文字の大きさ
上 下
25 / 65
1章スローライフ準備編

25 別れ

しおりを挟む
「あのさ、、、その、、、」

「んだよ」
部屋に戻って話を切り出した。

アセナは特に何かをしているわけではなかったが、僕の雰囲気を感じ取ったのか面倒そうに睨んだ。

アセナの威圧は慣れていても恐怖を感じる。それが伝え方を酷くした。

「お世話になった。借りはいつかちゃんと返します」

「はぁ?」
一段と視線が鋭くなる。

「今日中には荷物をまとめて出ます。この村にはいると思うのでこれからもよろしくお願
「なんでだよ」
え?」

「なんでそうなるんだよ!!」
急に声を荒げた。

怖くて目を合わせれなかったが、怒りとはちょっと違ったように思える。思い詰めたような。

「もういい。そんなんだからお前は雑魚のままなんだ。オレが出ていく!あのババアに残り一年分の家賃でもなんでも返金して貰っとけ!」

矢継ぎ早に言われて言い返す暇もなく出て行ってしまった。

一人アセナの部屋に残される。

そしてアセナが一人階段で呟く。
「わかってた」






「結局僕もアセナもどうしたかったんだろう」
なんで僕が出ていくはずが、アセナが出ていくんだよ。

部屋で呆然と立ち尽くした。



しばらくは考え事をしていたと思う。頭がぐちゃぐちゃで、自分の置かれた状況でさえもわかっていない。

ミラ母さんに夜ご飯だと呼ばれ、食堂に来た。

「あの馬鹿と喧嘩したのかい、ははは気にするこたぁねーで!」

出されたアツアツのグラタンは優しい味がして美味しかった。でもなぜかアセナと食べた記憶を思い出して涙が出た。
グラタンが熱すぎただけだ。口の中が火傷して、涙が、、、


「なんだいそんな状態なのかい。それじゃあの狼が少し可哀想だね」
と、言われた。

「違う!ちがうの、ミラ母さんのグラタンが熱いから。振ったんじゃない!」

ミラ母さんのやれやれという顔を見る勇気はなかった。

ひょっとしたらアセナは半人前のまま師弟関係を解消すると言われたから怒ってしまったのかもしれない。師匠としての責任とか。師匠として見限られた、なんてアセナが思っていたら、今以上に罪悪感を覚えずにはいられない。
でも僕の気持ちも考えて欲しい。このまま続けるなんて、叶わぬものに期待してしまう。


そのまま部屋に帰っても寝れる気がしなかったので、冒険者の服装に着替えて外に飛び出した。

クエストは受注しない。常設のクエスト、いつでも買い取ってくれるやつを目当てに少しだけ行こう。


「お、アキトっちじゃん。こんな時間からどこいくの?」
村の出入り口のところでラルフとオスカーにあった。

「小銭を少しだけ稼ごうと思って」

「ひょっとして金欠!?まぁ俺らも新しいコレ買っちったからさ!金欠なんだわ。ついて行ってもいい?」

どうやらラルフは新しい魔剣を買ったらしい。この前アセナが連れてきた行商から入手したのだろう。

初心者を思い出すような草摘みや、雑魚モンスターをいくつか討伐し村に帰った。
やっぱりアセナの家には帰る気が起きずに、久しぶりに宿に泊まった。

決して大きいとは言えない村だ。アセナに街中で出会わなかったのを見るに、もう村を出て行ってしまったのかもしれない。

僕は僕が嫌いかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...