オオカミ獣人にスローライフの邪魔される ツンデレはやめてくれ!

さえ

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1章スローライフ準備編

9 出会(アセナ視点)

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(アセナ視点が三話続きます)

遠出から拠点の村に帰る。
村にはオレより強いやつもいねぇし、オレに勝とうという根性や気合のあるやつもいねぇ。腐り切った温室の村だ。

だから今回もこうやって少し難易度が高いぐらいで面倒扱いされていたクエストをオレに押しつけてきやがった。もちろん終わらしたから帰ってきたのだが。

村に入るといつも通りチラホラと村人も見かけるが、コソコソと話すものや、明らかに発情色気付いた目でオレを見る女もいるが誰一人として話しかけてこない。

クエストを終わらせてまず向かうのはギルドだ。

扉を開ける。

いつものギルドの匂い、と、新入りでもいるのか?
狼獣人なりに鼻は効く。

そして五感では感じ取れないなにか、浮かれた空気のようなものを感じた。

受付嬢に言ってクエストを正確に終わらせて報酬を受け取る。そしてこのギルド内に残る謎の違和感を調べる。ただでさえ腐り切った冒険者しかいない中でさらに腐る浮かれるなんてあり得ない。

「おい、ラルゴ、とオスカラン」

「ひっアセナさん、、、?俺はラルフですよ、、、」
ごにゃごにゃ言うから睨む。

「ひっ」

オスカーの方は見苦しくも逃げ出そうとして、アセナに首根っこ掴まれる。

「逃げてんじゃねぇ」
ドスの効いた不機嫌な声がなる。

「お前ら何浮かれていやがる」

「浮かれてなんかいないっすよ、、、最近、新しく旅人がこの村にきて、定住するって言って暫く冒険者するって言うから。俺たち、みんなでその子のために頼りになる先輩になろうって決めて」

何が頼りになるだ。村の周りの魔物を村に近づかないようにするのが精一杯の癖に。

「何が頼られるだ。雑魚のくせに。まぁ雑魚が雑魚の世話をするのは定石か?」

ラルフとオスカーが黙ってしまう。
そこでアセナはふとあることが引っかかる。

「ならお前らなんのクエストを受けていやがる?」

「受けてないよ今は」
その言葉でだいたい予想ができた。
その旅人か冒険者かしらねぇけど、ギルドぐるみでそいつを甘やかしていると。下手すりゃそいつがそうさせている可能性すらある。お高くとまりやがって。

どちらにせよ、そいつもやっぱり腐っていくのだろう。いや旅人の時点で既にいい予感はしない。










昨日はそいつのことを詳しく聞いて家に帰った。
そして今日、そいつに話をつけにいく。下手すりゃ追い出してやる。

ギルドに入るとそいつはいた。
周りが浮かれるのがわかる美貌だ。
だが、コイツが自分がカワイイことを理由にギルドにまでクエストを優遇させて、さらにはこの村のただでさえ雑魚な冒険者たちをさらに雑魚にしていくと考えるとすごく腹が立った。

ちなみにだがコイツは陰で天使やら女神の使者やらなんやらと呼ばれているとか。いい加減にしてほしい。


「おい、そこの旅人風情。いや冒険者風情が今は?」

予想と違い、ピクリとして申し訳なさそうに「はい、、、」と返事してきた。

「お前、最近この村に来て、低ランクのクエストばかり優遇してもらって。調子乗ってんのか?あ?」

「ひっ、すみません、すみません。、、、誰かに迷惑をかけていたなら謝ります」

「あ?」
なんか予想と違う。旅人ならもっとこう、人付き合いをもっと疑いながら話す奴が多い。コイツはすぐ謝罪した。旅人の経験なんてないのではないか。

「この村にきたばかりで、冒険者なんて今までやったこともなくて。ギルドのお姉さんには優しくしていただいてたのですが、、、迷惑をかけるわけにいかないと思って、誰にも右左を聞けなくて、、、その本当に申し訳ないです」
つまりコイツは思い上がっていたわけではない。コイツがこの村の冒険者のように腐っているかはわからないが、何を考えたのかオレはまだ成長段階にあるコイツに戦い方のイロハを教えてやろうと思った。
それに、コイツは俺に一言「教えろ」なんて言葉を跳ね返してくるぐらいの度胸があるようだ。

決して、コイツの顔に、謙虚な姿に、庇護欲を掻き立てる姿に魅了された訳ではない。

「チッ、こいよ」

そいつの細い剣も握れるか怪しい腕を掴み引っ張りだす。

「天使ちゃん可哀想に、、、」
どこかで雑魚冒険者が呟く。獣人の耳だからこそ聞こえてしまう。

可哀想と思うなら助けろよと思うがそれすらしないこの雑魚たちにさらに苛立ちを覚えた。
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