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68 最終回 未来へ

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寒さの中にも暖かい春の風が吹く3月下旬。

王宮では、朝から今日行われるフェアンとアリンの結婚式の準備が着々と進められていた。
アリンは自分のために用意された部屋で一人フェアンを待っていた。静かな部屋でふと耳を澄ませると外から結婚式の準備をしている使用人の声が聴こえてきた。それが気になって部屋の窓を開けると広大な敷地に開花したばかりのたくさんのチューリップが植えられているのが見えた。このチューリップはフェアンがいつかアリンがここへ来たときに喜ばせたいと思い植えたという。

ーーまるでノスティアのチューリップ畑みたい。……そっか、僕が好きだって言ったから…。

フェアンの優しさに気づいたアリンは一人部屋にいる寂しさも伴ってか胸がキュッと苦しくなった。

ーーフェアン、早く会いたい……。

そう願った時だった。部屋の外からノック音が聞こえた。

「アリン?……もう入っていいかい?」

「フェアン!うん、今開けるね!」

声でフェアンだとわかると急いでドアを開けた。するとそこには幸せそうに微笑むフェアンがいた。だが、フェアンはアリンの全身を見るなり口を開けて固まってしまった。

「……フェアン?僕変かな?……に、似合わないよね。こんな素敵な服着させてもらっているのに……。」

アリンはこの日のため肩まで伸びっぱなしだった髪を首筋が少し見えるくらいに髪を切った。サイドの髪を編み込んでもらいお揃いの髪紐を使いたいとお願いしたのはアリンだった。
白いスラックスに白いジャケットそしてフェアンが用意したシフォン素材の白いスカーフを纏ったアリンに見惚れているフェアンだったがアリンの言葉にはっと我に返った。

「いや、アリン……まるで妖精かと思ったんだ。…すごく綺麗だ。」

「そ、そんなっ……!ありがと…。フェアンもかっこいいよ。」

フェアンは上下黒のモーニングコートを着ていてそのいつもと違う雰囲気にアリンも見惚れていた。

「さあ、可愛い妖精さん。そろそろ行きましょうか。俺たちを待っている人達がいる。」

「う、うんっ……!」

二人は互いに手を取りあうと挙式の会場であるチューリップ畑に向かった。



ーーー


式は堅苦しくしたくないというアリンとフェアンの希望でガーデンウエディングで執り行われる事となった。

色とりどりのチューリップ畑の真ん中にバージンロードが特設で作られてありその脇を大切な友人たちが拍手で出迎えてくれている。

ーーレイもロバートさんもナタリアさんも、みんな来てくれた!

アリンはみんなが来てくれていることに嬉しくなり思わず涙ぐむと、フェアンが優しく微笑みながら腕を差し出した。アリンは微笑みを返すとその腕にそっと手を添えた。


「フェアン、僕フェアンに出会えてよかった。フェアンに出会ってから色んなことがあったけれど全てはこの日を迎えるためにあったんじゃないかって思うんだ。」

「アリン……。」

「この先もきっと色んなことがあると思う。でも僕は怖くないよ。……だってフェアンが側にいてくれるでしょ?」

「当たり前だろう、もう何があっても離す気はないよ。……アリンこちらこそ出会ってくれてありがとう。君を愛することができて俺は幸せだ。」

どちらからともなく微笑みあうと2人はバージンロードの一歩を踏み出した。




春の風にチューリップが揺れる、祝福の声が聴こえる、


二人の未来は始まったばかりだ。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがき



これにて『金瞳の王子は黒猫少年を溺愛する』本編完結となります!
読んでくださった全ての方に感謝です。

初めての作品で自分でも完結できるか不安でしたがなんとか完結出来てホッとしています。
(もしかしたら番外で新婚編書くかも……)
それも読んでくれた方のおかげです!

良ければコメントをくださると次への励みになります。


それではまた次の作品でお会いしましょう!





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