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65 挨拶
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「この声は……!」
2人は急いで服を着て玄関へ向かうとドンドンと扉を叩く音が聞こえた。
「レイ!こんな朝早くに……。あれ?」
「おはよう、アリン。それにフェアン、おかえり。」
そこに立っていたのはレイと村長だった。
「村長!」
「レイ、村長殿、お久しぶりです。」
驚くアリンとは対象的にフェアンは平然と事態を飲み込んでいる。
「そんな、かしこまらないでくれよ。君は今王様なんだから。」
「いえ、そんな……本当はこちらから今日中に伺うはずでした!」
アリンはとりあえず部屋に入ってください、と伝えると慌ててお茶の準備をし始めた。
まだ寒い時期の朝、暖房は付けたがまだまだ部屋は冷え切っている。そんな時はジンジャー入りの紅茶に蜂蜜を少し入れて体を温めてもらおうとアリンはキッチンでやかんに火をつけた。
紅茶を持ってリビングに戻るとフェアンと村長が向かい合い、レイは村長の隣に座っていた。アリンはフェアンの隣に座ると疑問に思っていた事を村長に聞いた。
「村長、フェアンがここにいるって知ってたんですか……?」
「実は昨日タイラーさんという方が来てね。フェアンがアリンの家にいるって聞いてたからひと言おかえりって言ってあげないとと思ってね。大丈夫、ここにフェアンが居るって知っているのは私とレイだけだよ。」
「そう、だったんですね。」
今は王になった身、いくら街の入り口に護衛がいるといってもノスティアにはまだ人間を嫌う人もいる。村長とレイしかフェアンの居場所を知らないと聞きアリンはホッと胸を撫で下ろした。
すると、アリンの前に座っていたレイがそういえば、と話を切り出した。
「その、タイラーってやつ昨日俺んとこにも来たぜ。マーケットでアリンが見つからねえからどうしたと思ったらアリンはフェアンとノスティアにいるって伝えにきてくれた。」
「レイ!昨日はごめんね……急に居なくなったからびっくりしたよね。」
アリンが慌ててレイに謝罪すると、レイは呆れたように笑った。
「何言ってたんだよ。フェアンに会うためにマーケット行ってたんだからこれで良かったじゃねえか!」
フェアンの為に頑張っていたアリンを知っているレイは、心配こそはしたが自分を置いて帰ったことを何一つ責めることはしなかった。
「ありがとう、レイ。今日まで一緒に頑張ってくれて……僕レイと親友でいれて本当に良かった。」
「……それは、こっちのセリフだ。」
もう、恋心を抱くことは出来ないけどアリンが伝えてくれた言葉がむず痒くて頬を赤くしたレイは、ぼそっと呟くとそっぽを向いてしまった。
話の空気を変えたのは村長だった。
「ところでフェアン、今日うちに来る予定だったのかい?何か用事?」
「はい……!」
そこで区切るとフェアンは背筋をいつも以上に伸ばし真っ直ぐな瞳でゴクリと唾を飲み込んだ。よく見ると膝で握りしめた拳が少し震えている。
「村長、レイ。昨夜アリンにプロポーズをいたしました。そしてアリンからは『はい』と返事を貰えました。……どうか私たちの結婚を認めてもらえませんか?」
頭を下げるフェアンの姿を見てアリンも急いで頭を下げた。
ーーフェアン、今日村長に挨拶してくれようとしてたんだ……。
しばらくの沈黙の後、村長が穏やかな声で話し出した。
「2人とも、頭を上げて。」
アリンとフェアンは反対の空気ではないと安堵し顔を上げた。
「私もレイもノスティアのみんなも反対なんてしないさ。2人ともおめでとう。……フェアン、この子は若くして苦労してきた子なんだ。必ず大切にしておくれ。」
「はい。必ず幸せにします。」
「君はこんなに美味しい紅茶を毎日飲めるんだ!幸せ者だなぁ。」
「本当に……俺は世界一の幸せ者だと思っています。」
猫獣人が王様と結婚することで周りからの反応が唯一気になっていたがフェアンの真剣な表情や言葉で村長は安心した。
「そして、アリン……」
「はいっ!」
「君は幸せになりなさい。……お父さんとお母さんのためにも。たくさん笑っていつか天国のご両親に会う時に『幸せだった』と言えるように。」
「っ……!はいっ!」
ーーお父さん、お母さん。僕結婚します。初めて愛した人とこれからの人生を生きます。……どうか見守っててね。
心の中で天国にいる両親の事を想いながらアリンは幸せな涙を零した。
2人は急いで服を着て玄関へ向かうとドンドンと扉を叩く音が聞こえた。
「レイ!こんな朝早くに……。あれ?」
「おはよう、アリン。それにフェアン、おかえり。」
そこに立っていたのはレイと村長だった。
「村長!」
「レイ、村長殿、お久しぶりです。」
驚くアリンとは対象的にフェアンは平然と事態を飲み込んでいる。
「そんな、かしこまらないでくれよ。君は今王様なんだから。」
「いえ、そんな……本当はこちらから今日中に伺うはずでした!」
アリンはとりあえず部屋に入ってください、と伝えると慌ててお茶の準備をし始めた。
まだ寒い時期の朝、暖房は付けたがまだまだ部屋は冷え切っている。そんな時はジンジャー入りの紅茶に蜂蜜を少し入れて体を温めてもらおうとアリンはキッチンでやかんに火をつけた。
紅茶を持ってリビングに戻るとフェアンと村長が向かい合い、レイは村長の隣に座っていた。アリンはフェアンの隣に座ると疑問に思っていた事を村長に聞いた。
「村長、フェアンがここにいるって知ってたんですか……?」
「実は昨日タイラーさんという方が来てね。フェアンがアリンの家にいるって聞いてたからひと言おかえりって言ってあげないとと思ってね。大丈夫、ここにフェアンが居るって知っているのは私とレイだけだよ。」
「そう、だったんですね。」
今は王になった身、いくら街の入り口に護衛がいるといってもノスティアにはまだ人間を嫌う人もいる。村長とレイしかフェアンの居場所を知らないと聞きアリンはホッと胸を撫で下ろした。
すると、アリンの前に座っていたレイがそういえば、と話を切り出した。
「その、タイラーってやつ昨日俺んとこにも来たぜ。マーケットでアリンが見つからねえからどうしたと思ったらアリンはフェアンとノスティアにいるって伝えにきてくれた。」
「レイ!昨日はごめんね……急に居なくなったからびっくりしたよね。」
アリンが慌ててレイに謝罪すると、レイは呆れたように笑った。
「何言ってたんだよ。フェアンに会うためにマーケット行ってたんだからこれで良かったじゃねえか!」
フェアンの為に頑張っていたアリンを知っているレイは、心配こそはしたが自分を置いて帰ったことを何一つ責めることはしなかった。
「ありがとう、レイ。今日まで一緒に頑張ってくれて……僕レイと親友でいれて本当に良かった。」
「……それは、こっちのセリフだ。」
もう、恋心を抱くことは出来ないけどアリンが伝えてくれた言葉がむず痒くて頬を赤くしたレイは、ぼそっと呟くとそっぽを向いてしまった。
話の空気を変えたのは村長だった。
「ところでフェアン、今日うちに来る予定だったのかい?何か用事?」
「はい……!」
そこで区切るとフェアンは背筋をいつも以上に伸ばし真っ直ぐな瞳でゴクリと唾を飲み込んだ。よく見ると膝で握りしめた拳が少し震えている。
「村長、レイ。昨夜アリンにプロポーズをいたしました。そしてアリンからは『はい』と返事を貰えました。……どうか私たちの結婚を認めてもらえませんか?」
頭を下げるフェアンの姿を見てアリンも急いで頭を下げた。
ーーフェアン、今日村長に挨拶してくれようとしてたんだ……。
しばらくの沈黙の後、村長が穏やかな声で話し出した。
「2人とも、頭を上げて。」
アリンとフェアンは反対の空気ではないと安堵し顔を上げた。
「私もレイもノスティアのみんなも反対なんてしないさ。2人ともおめでとう。……フェアン、この子は若くして苦労してきた子なんだ。必ず大切にしておくれ。」
「はい。必ず幸せにします。」
「君はこんなに美味しい紅茶を毎日飲めるんだ!幸せ者だなぁ。」
「本当に……俺は世界一の幸せ者だと思っています。」
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「そして、アリン……」
「はいっ!」
「君は幸せになりなさい。……お父さんとお母さんのためにも。たくさん笑っていつか天国のご両親に会う時に『幸せだった』と言えるように。」
「っ……!はいっ!」
ーーお父さん、お母さん。僕結婚します。初めて愛した人とこれからの人生を生きます。……どうか見守っててね。
心の中で天国にいる両親の事を想いながらアリンは幸せな涙を零した。
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