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60 決戦は今日③

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ルーカスが連行された後、その光景に呆気にとられていた陛下がはっと我に返り声をあげた。

「一体どうなっている!このままでは式典は中止だ!」

「いえ、まだ話があります、父上。みなに聞いてほしいことが。」

「何を言ってるんだ!こんな状況で……。」

式典を中止しようとそそくさと部屋に入ろうとする陛下をリヒテルは引き留めた。

「父上、この方をご存じですね?」

リヒテルは後ろの方で控えていたソンブルに前に出てくるよう言った。

「知っているも何も、彼は昔からの知人だ。それがどうした。」

陛下はなぜソンブルがここにいるんだと不思議そうな顔をしていたが、陛下の後ろにいたラシュテは顔を真っ青にしながら怯えていた。

「陛下、私たちがしたすべての事をリヒテル様は知っています……。」

「ふん、猫獣人の事故のことだろう?そんなこと息子に知られようと何とでもなるわ。」

ソンブルの発言にもそれがどうしたと言わんばかりに言い返す陛下にリヒテルは強い口調で反論した。

「父上!あなたは間違っている!あなたがしたことは犯罪だ!猫獣人だから事故を隠ぺいしたなんて一国の主がしていいわけないだろう!」

リヒテルの話を聞いた国民からはざわざわとどよめきが起きている。それを見た陛下は眉間に皺を寄せ不快な様子を隠せないでいた。

「うるさい!とりあえず今日の式典は中止だ!ルーカスのこともなんとかしなければならないのに……。」

「父上それだけではないのですよ。……あなたの秘書、ソンブルさんからかなりの大金を脅しています。」

「なんだと……?どういうことだラシュテ!」

陛下はラシュテの方へ振り向くとそこには体を縮こませて震えるラシュテがいた。

「すいません、すいません陛下……」

俯きブツブツと謝罪の言葉を口にするラシュテを見て陛下は全て悟った。

「お前は……なんてことをっ!」

陛下がラシュテへ怒鳴ろうとしたときだった。

『陛下!説明してください!』『隠ぺいとはどういうことだー!』

と国民から口々に非難の声が浴びせられた。

「父上、もうあなたは終わりました。潔く身を引いてください。」

「っ…!お前ひとりで何ができるっ……!」

「ええ、俺一人では何もできません。だからみなでこの国を作っていきます。」

リヒテルはそこまで言うと近くにいた護衛に地下に連れて行くように託した。
それから国民の前にたち陛下やルーカスのしていたことを包み隠さず全て話した。国民からは非難の声や野次も飛んだがリヒテルが深々と頭を下げたことで一瞬でその場が静まり返った。

「本当に申し訳なかった。ただ、これだけは信じてほしい。私はこの国に生きるすべての種族に幸せになってほしいと願っている。行きたいところも、やりたいことも自由に叶えられる未来にしたいんだ!そしてそれは私一人では実現できない。お願いだ、共に未来を創っていってくれないか!」

しばらくの沈黙の後、小さく拍手の音がリヒテルの耳に届いた。その音はだんだんと大きくなり終いには割れんばかりの拍手となった。

『リヒテル王、万歳!』その声が鳴り響く中、リヒテルはアリンへ思いを馳せながら遠い空をじっと眺めていた。


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