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56 真相

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「あ、あの自己紹介が遅れてすいません……。私がソンブル商会のソンブルです。」

男はタイラーの様子を窺うように小柄な体をビクビクさせながら答えた。

「私は王宮の人間です。名前はまだあなたを信用していないので言えませんが……。今日はお聞きしたいことが会ってここまで来ました。……率直にお聞きします。あなたは『ラシュテ』という人物をご存じですか?」

その名を聞いた途端あからさまに目が泳ぎ足も貧乏ゆすりをはじめた。

「さ、さあ誰のことでしょうか。私は知りませんね。……話がそれだけならもう帰ってもらえますか。」

ソンブルは立ち上がりドアを開けようとした歩き出したその時タイラーが叫んだ。

「ソンブル商会 1000トロン!私は知っています。話してください。私たちにはリヒテル様がいます!」

その声にビクッと肩を震わすと無言でいたが、しばらくすると覚悟を決めたようにタイラーを見据えた。

「リヒテル王子が……。そうですか、わかりました。すべてを話します。」


―――


「5年前の6月、あの日は気温が高くて馬たちも弱っていたことはわかっていました。それでも新しい商売のヒントになると思いデリアのマーケットへ馬に無理をさせて行くことを決めたんです。
マーケット自体は素晴らしかった。こちらでは見かけない商品がたくさんあったし、なにより獣人たちがどんな商品を好んで使っているのかを知るチャンスでした。……そして気づいたら荷馬車には乘りきれないほどの荷物を積んでしまっていたんだ。疲労とストレスだったんだろう……馬は暴走し気が付けば猫獣人の夫婦に突っ込んでいってしまったんです。そのあとのことはパニックではっきり覚えていないません。ただ自分が捕まれば従業員やその家族が路頭に迷ってしまう、それが不安で旧知の仲の陛下に泣きつきました。……陛下は初め罪を償えと私に言いましたが相手が猫獣人だということと従業員が路頭に迷うことを考慮してこの事故のことを隠ぺいしてくれたんです。」

ここまで話を聞いたタイラーは陛下とソンブルへの怒りがこみ上げていた。

――猫獣人だから隠ぺいしただと?この男も結局は自分の保身しか考えていないじゃないか。

「それで陛下に献金していたということですか?」

半ば怒りを込めた聞き方で話すとソンブルは頭を横に振った。

「いえ、違います。陛下はお金のことはなにも……。実は陛下に泣きついていたときの会話をラシュテという秘書に聞かれていたんです。それからです……ばらされたくなかったら金をよこせと……。」

タイラーは驚いた。あの秘書はこの5年ずっとソンブル商会に金を脅し取っていたのだ。その結果ソンブル商会は従業員を解雇せざるを得なくなりソンブル商会ももう店を畳むしかない状況になってしまった。

「話はわかりました。私の名前はタイラー。あなたを信用します。あなたがしたことは犯罪だ。だが、ラシュテがしていることも性質が悪い。……リヒテル様に力を貸してください。ラシュテのことは私たちが何とかします。そのあとです、あなたが罪を償うのは。」

ソンブルは隠し事を吐き出せたことに安堵したのか、ありがとうと何度も言い頭を下げた。
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