56 / 70
55 調査
しおりを挟む
護衛の任務が終わるとその足でタイラーはエリックの元へ向かった。
「おい、エリック!タイラーだ、ドアを開けてくれ。」
部屋のドアをノックし声をかけるとエリックがドアの隙間から顔を覗かせた。
「誰にも見つからないように静かに入れよ。」
小声でそういうと部屋の中にタイラーを招き入れた。
「で、こんな夜更けにいったい何の用だよ。」
エリックは眠そうにあくびをしながらタイラーにたずねた。
「それが、あの秘書の手帳を見ることが出来たんだよ!」
エリックへ食い気味に答えるとタイラーは今日あった出来事を話した。
はじめ眠そうにしていたはずのエリックの目は一気に覚醒し、興奮しながら話に聞き入っていた。
「これはリヒテル様に早急に伝えなくては!」
話を聞き終わったエリックは今すぐにでも行きそうな勢いで立ち上がったがそれを待て待て、とタイラーは引き留めた。
「ソンブル商会のことを調べてからだ。王宮とソンブル商会は何も関りがないはずなのにあんな大金が動くはずがない。……明日ソンブル商会に行ってくる。」
「わかった……。気をつけろよ。」
エリックはいつかのように自分の拳を突き出すと、それに気づいたタイラーはニッと笑いながら自分の拳を合わせた。
―――
次の日、タイラーはソンブル商会に来ていた。いつもの制服では怪しまれるため普通の市民が着る服に替え、知っている人がいてもばれないように帽子を深くかぶった。
その違和感は着いてすぐに気づいた。
――こんなに人がいなかったか……?
人が少なく辺りも閑散としているのだ。
ソンブル商会はノスティアでは有名な商会で日用品や雑貨を扱っている。ここで働く人も多くそのおかげでこの辺りも活気に満ち溢れていたはずだった。
――しばらく巡回で来ないうちに一体どうして……?
疑問に思いながらタイラーがソンブル商会の扉の近くまで歩いていくとちょうど扉から一人の小柄な男が出てくるのに気付いた。
「あの、すいません……」
タイラーは小走りで男に近づくと、男は一瞬ビクッと体を震わせた後恐る恐るタイラーの顔を見上げた。
「……な、なんでしょう?」
「あのソンブルさんに聞きたいことがありまして。会わせてもらえませんか?」
タイラーは至って丁寧に話したつもりだが、男はしばらくタイラーの顔を凝視した後ガクガクと震えだした。一体どうしたのかと震える肩に触れようとしたその時、タイラーの手は思いっきり跳ねのけられた。
「あんた、王宮の人間だろ。見たことある……」
男はそう言うとその場で土下座し涙を流しながら懇願した。
「た、助けてください。もうお金はありません。すいませんすいません、罪を償いますから……。」
「……どういうことですか?頭を上げて。話を聞かせてください。」
何度も大丈夫だ、と伝えると涙で顔をぐしゃぐしゃにさせた男はよたよたと立ちあがりソンブル商会の中へ案内してくれた。
「おい、エリック!タイラーだ、ドアを開けてくれ。」
部屋のドアをノックし声をかけるとエリックがドアの隙間から顔を覗かせた。
「誰にも見つからないように静かに入れよ。」
小声でそういうと部屋の中にタイラーを招き入れた。
「で、こんな夜更けにいったい何の用だよ。」
エリックは眠そうにあくびをしながらタイラーにたずねた。
「それが、あの秘書の手帳を見ることが出来たんだよ!」
エリックへ食い気味に答えるとタイラーは今日あった出来事を話した。
はじめ眠そうにしていたはずのエリックの目は一気に覚醒し、興奮しながら話に聞き入っていた。
「これはリヒテル様に早急に伝えなくては!」
話を聞き終わったエリックは今すぐにでも行きそうな勢いで立ち上がったがそれを待て待て、とタイラーは引き留めた。
「ソンブル商会のことを調べてからだ。王宮とソンブル商会は何も関りがないはずなのにあんな大金が動くはずがない。……明日ソンブル商会に行ってくる。」
「わかった……。気をつけろよ。」
エリックはいつかのように自分の拳を突き出すと、それに気づいたタイラーはニッと笑いながら自分の拳を合わせた。
―――
次の日、タイラーはソンブル商会に来ていた。いつもの制服では怪しまれるため普通の市民が着る服に替え、知っている人がいてもばれないように帽子を深くかぶった。
その違和感は着いてすぐに気づいた。
――こんなに人がいなかったか……?
人が少なく辺りも閑散としているのだ。
ソンブル商会はノスティアでは有名な商会で日用品や雑貨を扱っている。ここで働く人も多くそのおかげでこの辺りも活気に満ち溢れていたはずだった。
――しばらく巡回で来ないうちに一体どうして……?
疑問に思いながらタイラーがソンブル商会の扉の近くまで歩いていくとちょうど扉から一人の小柄な男が出てくるのに気付いた。
「あの、すいません……」
タイラーは小走りで男に近づくと、男は一瞬ビクッと体を震わせた後恐る恐るタイラーの顔を見上げた。
「……な、なんでしょう?」
「あのソンブルさんに聞きたいことがありまして。会わせてもらえませんか?」
タイラーは至って丁寧に話したつもりだが、男はしばらくタイラーの顔を凝視した後ガクガクと震えだした。一体どうしたのかと震える肩に触れようとしたその時、タイラーの手は思いっきり跳ねのけられた。
「あんた、王宮の人間だろ。見たことある……」
男はそう言うとその場で土下座し涙を流しながら懇願した。
「た、助けてください。もうお金はありません。すいませんすいません、罪を償いますから……。」
「……どういうことですか?頭を上げて。話を聞かせてください。」
何度も大丈夫だ、と伝えると涙で顔をぐしゃぐしゃにさせた男はよたよたと立ちあがりソンブル商会の中へ案内してくれた。
0
お気に入りに追加
423
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる