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55 調査

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護衛の任務が終わるとその足でタイラーはエリックの元へ向かった。

「おい、エリック!タイラーだ、ドアを開けてくれ。」

部屋のドアをノックし声をかけるとエリックがドアの隙間から顔を覗かせた。

「誰にも見つからないように静かに入れよ。」
小声でそういうと部屋の中にタイラーを招き入れた。

「で、こんな夜更けにいったい何の用だよ。」

エリックは眠そうにあくびをしながらタイラーにたずねた。

「それが、あの秘書の手帳を見ることが出来たんだよ!」

エリックへ食い気味に答えるとタイラーは今日あった出来事を話した。
はじめ眠そうにしていたはずのエリックの目は一気に覚醒し、興奮しながら話に聞き入っていた。

「これはリヒテル様に早急に伝えなくては!」

話を聞き終わったエリックは今すぐにでも行きそうな勢いで立ち上がったがそれを待て待て、とタイラーは引き留めた。

「ソンブル商会のことを調べてからだ。王宮とソンブル商会は何も関りがないはずなのにあんな大金が動くはずがない。……明日ソンブル商会に行ってくる。」

「わかった……。気をつけろよ。」

エリックはいつかのように自分の拳を突き出すと、それに気づいたタイラーはニッと笑いながら自分の拳を合わせた。


―――

次の日、タイラーはソンブル商会に来ていた。いつもの制服では怪しまれるため普通の市民が着る服に替え、知っている人がいてもばれないように帽子を深くかぶった。

その違和感は着いてすぐに気づいた。

――こんなに人がいなかったか……?

人が少なく辺りも閑散としているのだ。
ソンブル商会はノスティアでは有名な商会で日用品や雑貨を扱っている。ここで働く人も多くそのおかげでこの辺りも活気に満ち溢れていたはずだった。

――しばらく巡回で来ないうちに一体どうして……?

疑問に思いながらタイラーがソンブル商会の扉の近くまで歩いていくとちょうど扉から一人の小柄な男が出てくるのに気付いた。

「あの、すいません……」

タイラーは小走りで男に近づくと、男は一瞬ビクッと体を震わせた後恐る恐るタイラーの顔を見上げた。

「……な、なんでしょう?」

「あのソンブルさんに聞きたいことがありまして。会わせてもらえませんか?」

タイラーは至って丁寧に話したつもりだが、男はしばらくタイラーの顔を凝視した後ガクガクと震えだした。一体どうしたのかと震える肩に触れようとしたその時、タイラーの手は思いっきり跳ねのけられた。

「あんた、王宮の人間だろ。見たことある……」

男はそう言うとその場で土下座し涙を流しながら懇願した。

「た、助けてください。もうお金はありません。すいませんすいません、罪を償いますから……。」

「……どういうことですか?頭を上げて。話を聞かせてください。」

何度も大丈夫だ、と伝えると涙で顔をぐしゃぐしゃにさせた男はよたよたと立ちあがりソンブル商会の中へ案内してくれた。
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