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51 デリアのマーケットへ②

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「今日は巡回来ないみたいだな……。」

「うん……。そうみたいだね。」

明らかに落ち込んだアリンの様子になんて声をかけようかレイは戸惑っていた。いつ会えるかわからないしそもそも巡回にフェアンが来るかもわからないままだったがやはりアリンは心のどこかで期待していたのだ。

「そろそろ帰るぞ。遅くなるしな。」

「そう、だね……。」

レイは見るからに落ち込んだ顔を見ていられずとりあえず帰ろうとアリンを促した。
帰り道もレイが荷車をひき、アリンが後ろから押す形になった。夕方になりだんだん涼しくなってきたが荷車に荷物を積んでいるせいで行きよりだいぶ大変に感じた。それでも2人は黙ったまま休む事なくノスティアまでの道のりを歩いた。

ノスティアの居住区に着くとそこにはロバートさんとナタリアさんが待っていてくれた。2人は店をわざわざ休みにしてまでアリンとレイを待っていてくれたのだ。

「おかえり!アリン、レイ!」

笑顔で待っていてくれた事に2人の間に張り詰めていた空気が一気に解れた。

「あぁー疲れたわ。ロバートさん、この荷物あとで配るの手伝ってくれ。」

「おいおい、レイ。お前まだ若いのになぁ~」

ロバートさんとレイが和気藹々と話しているとナタリアさんがアリンを手招きしてこそっと話しかけた。

「アリン、どうだった?」

「あぁ……今日はだめでした。巡回もなくて。」

物悲し気に微笑むとナタリアさんはアリンの肩に手を回し優しく摩ってくれた。

「そう。……でも諦めないよね?」

「はい!もちろんです!」

「そう、ならよかったわ!」

アリンの即答にナタリアさんはにこりと笑い、肩に回した手を外すとそのままアリンの頭をポンポンと撫でた。


それからはロバートさんとナタリアさんの手伝いもあり、買ってきた荷物をあっという間に配り終える事ができた。

最後に荷車をアリンの家の納屋に戻したところでレイは「俺も帰る」と言ったがアリンはそれを引き留めた。

「あの、レイ!今日はありがとう……!」

「……別に、俺がやりたくてやってんだから礼なんていいよ……。それより!お前巡回なかったくらいであんな落ち込むな!」

急に怒鳴られた事にアリンは目を見開き驚いたが、いつもと変わらないままでいてくれる事が嬉しくて思わず微笑んだ。

「ふふっ…。ごめんね。もう大丈夫だから!僕は諦めないよ!」

アリンの微笑みにレイは思わず照れたが、それを隠すようにアリンの髪をくしゃくしゃと掻き回した。
そして、「今度は本当に帰る!」と言い捨て、走るように帰っていった。



それから毎週土曜日は2人でデリアのマーケットに行った。
頼まれる品物の数も増えて段々と大変になっていったが、それでもアリンは諦めなかった。通い始めて3ヶ月目、夏の青々とした葉から秋の紅葉に移り変わる頃、初めて王宮の巡回を見たがフェアンはそこに居なかった。
それでも諦めずデリアのマーケットに行き続けた。そして気が付けばフェアンが居なくなってから半年が経とうとしていた。
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