金瞳の王子は黒猫少年を溺愛する

小鳥遊ゆう

文字の大きさ
上 下
49 / 70

48 仲直り

しおりを挟む
目を覚ました。耳を澄ますとチュンチュンと鳥の鳴き声がし、カーテンから漏れる光でもう朝なんだと気付いた。
体は汗でベタついている上に瞼が腫れぼったくて目が開けにくいがぐっすり眠れたせいか頭はしっかりと冴えている。

ーーあれ?昨日、僕……

ガバッと勢いよく起きるとそこはソファの上で体の上には薄手のボタンシャツが掛けられていた。

ーーこれ、レイのシャツだ……。そう言えばレイは?

目線を下げるとソファの下で膝を立てて小さく丸まっているレイがいた。ゆっくり顔を覗くと膝を枕にしてスースーと気持ちよさそうに眠っている。アリンは起こさないようにそっとソファから降り近くにあった薄手のタオルケットを肩にかけようとしたその瞬間、レイの体がピクっと動いた。

「ん……アリン?」

「レイ、お、おはよう!ごめん、その…昨日僕そのまま寝ちゃって……!」

アリンは慌てて手を引っ込め、持っていたタオルケットで目の前のテーブルを拭きだした。
レイはそんな、アリンの姿を見て一瞬キョトンとした後、くすくすと笑い出した。

「いや、昨日あんだけ泣いたと思ったら急に寝るからさ。心配だったけどもう大丈夫そうだな!」


レイの明るい声につられてアリンも久しぶりに心から笑う事が出来た。


ーーー


「前に会った時の事謝りたい。ごめん!!」

朝食を食べてもらおうとキッチンで料理をしている最中、シャワーから戻ってきたレイが開口一番にアリンに言い頭を下げた。
前に会った時というのはレイが告白をしアリンを押し倒した時の事で確かに昨日からそれには触れていなかった。

「レ、レイ!頭を上げて!」

料理の手を止めレイに頭を上げてもらうよう近寄るがレイは頭を下げたままだ。

「俺、本当酷いことした。フェアンが居なくなったのも前から知ってたのに気まずい思いするからってお前を避けてた。」

「レイ……。」

「許されることじゃないし、許さなくていい!でも……心配してた事はわかってくれ。昨日のお前を見てアリンがフェアンの事を今でも想ってるって事もわかった。だから……これから親友としてお前に協力したい。」

頼む、と言い頭を下げ続けるレイの背中をアリンはバンと叩いた。痛てっ、と顔を上げたレイにアリンは語気を強めて言った。

「何言ってるの?!確かに前に会った時のそれは嫌だった!だけどレイは今までもこれからも僕の一番の親友だよ!レイの想いには答えれなかったけど……それでも!僕にとってレイは大切なんだよ。だから……ありがとう!レイ!」

「……。」

「あれ?泣いてる?レイ?」

急に無言になり顔を背けたレイの顔を覗き込むとレイの頬にはキラキラと光るものがあった。

「うるせー!早く料理しろよ!そんでお前のこれから話し合うぞ!」

「う、うん!!」

アリンはバタバタとエプロン片手にキッチンへと戻った。その姿を切なく微笑みながらレイは見つめていた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

処理中です...