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45 アリンのそれから②

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「あっ……まだ、言ってない…です。」

ーーそうだ。何を僕はボケっとしていたんだろう。フェアンがノスティアにいれるように助けてくれた村長には早く言わないと……。

「とりあえずさ、この事村長に伝えないとな。あいつ、学校でも働いてただろ?今頃困ってるかもな……。アリン、村長のとこまで一緒に行くか?」

「はい……お願いします。」

ーー村長に何て言われるだろう…。

不安な顔を察してか、ロバートさんが僕の背中をさすりながら何度も『大丈夫だ』と力強く声をかけてくれた。



ーーー

ロバートさんと一緒に村長のお家に向かうと急な訪問にも関わらず温かく出迎えてくれた。

「そうか……フェアンがルシュテン王国の第二王子だったとはねぇ。」

村長は冷たい紅茶をゆっくりと飲みながら涼しい顔で答えた。

「村長、驚かないんですか?!」

前のめりになったロバートさんに村長は困ったように笑った。

「いや、驚いてはいるよ。でも彼、初めて会った時から普通の人間って感じはしなかったからね。」

「村長……その、フェアンがノスティアに居れるように色々してくださってありがとうございました。その……急な事ですいません…。」

「いやいや、アリン。君が謝る事じゃないだろう?学校の事は私が何とかしておくよ。さすがに王子だったっていうのは事が大きくなりそうだから言わないでおく。だから君たちもよろしくね。それより……アリンの方が心配だよ。恋人が実は王子様で急に迎えが来て帰っちゃったなんて。」

「はい……ってえ、なんで…知ってるんですか?」

僕とフェアンが交際していたのを知っているのはロバートさん夫婦とレイ、それにリンダさんだけだったはずなのに、なんで村長が、知っているんだろうか。

「直接誰かに教えてもらったわけではないけどね、君たちが仲良さげに歩いてるのを見たことがあって…。あれはただの同居人じゃなくて恋人同士の顔だったよ?」

「あっ……え、そうだったんですね……。」

自分たちが周りからそういう風に見られていたことに恥ずかしくなったアリンだが同時にもうそういう風に見られる事はないという事実に悲しくなった。

「アリン、誰しも別れは辛いものだよ。特に永遠の愛を誓った仲ならなおさら。……とりあえず、今は自分自身の気持ちに正直に向き合ってゆっくり過ごしなさい。いいかい?自分の気持ちに正直になるんだよ。」

「はい……その、村長。ありがとうございました。」

やっと前を向いたアリンに村長は優しく微笑んだ。
その微笑みはまるで亡くなったお父さんのように優しく心のささくれを癒してくれた。


「街の皆んなには、『フェアンは無事に迎えが来て帰った』ということにしておくから。」

こうしてロバートさんと別れ村長の家から帰る頃にはもう日が沈んで空には満天の星が輝いていた。

村長の言っていた『自分自身の気持ちに向き合う』ってどうすれば良いのかを考えていた。今はまだ寂しい、なんで、悲しいって気持ちで一杯で、正直自分がこれからどうしていきたいかなんてわからない。だけどこの同じ星空の下フェアンも僕と同じ気持ちでいてくれたらいいなって考えてたんだ。



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