金瞳の王子は黒猫少年を溺愛する

小鳥遊ゆう

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32 新たな恋敵④

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マイトはその日、満足そうに定食だけを食べて帰った。

ーー友達って言われてもなー…

両親が死んでから生活するのに精一杯で学校以外の友達を作ったことがなかった。そんな友達もレイ以外とは卒業してからはお互い忙しくて滅多に会えなくなっていた。

ーー大人になってからの友達って何するんだろう?あと、まだフェアンに言わない方がいいよね。……変に心配させちゃうし。


そんなことを考えながらフェアンの待つ家に帰った。



ーーー



2日後。

「アリン!明日休みだって聞いたけど!…遊びに行かない?」

「マイト…いらっしゃいませ。……なんでそれを?」

「え、ロバートさんだけど。友達なんですーって言ったら普通に教えてくれた。」

「ロバートさんっ…!」

今日は遅番でランチタイム後に出勤したら、マイトが優雅に食後のコーヒーを飲みながら待っていた。
どうやら自分がいない隙にロバートさんと話し込んで休みを聞きだしたらしい。

「そんな急に遊びに行こうって言われても…」

「なんで?予定あるの?」

「いや、予定とかそういうのじゃ…」

「じゃあ大丈夫だね!……え、もしかしてフェアンって友達と遊びに行くのも許してくれないような心狭いやつなの?」

「っ!フェアンはそんな人じゃない!」

「なら良かった、決まりだね!」

「そうかアリン!良かったじゃないか友達ができて!たまには遊んでこい!」

ワハハッ!と豪快に笑いながらロバートさんも話に参加してきてしまったから、もう潔く頷くしか出来なかった。

「わかったよ。時間と場所は決めてよ?」



ーーー



「アリン、どうかしたのか?元気がないぞ?」

「えっ…!何もないよ、大丈夫…」

遅番の日は帰るのが夜10時くらいになるから今までは疲れた体を休ませることが最優先で適当にシャワーを浴びてベッドに飛び込んでいた。それがフェアンと一緒に暮らしはじめてからは美味しいお夜食と温かいお風呂が用意されるようになった。おまけにお風呂は一緒に入って頭のマッサージまでしてくれる!

そして今はその頭のマッサージ中だ。

「アリンはすぐ顔に出るからな。……仕事で嫌なことあったか?


「フェアンまでそんなこと言う…。ううん、大丈夫ちょっと考え事してただけだよ。ごめんね、心配かけちゃった」

「心配事があるならかけてくれる方が嬉しいよ。明日は休みだろ?ゆっくり休め。」

「あっ明日なんだけど…ちょっと出掛けなきゃいけなくて。」

「そうなのか?どこに?誰と?」

「え、えーと…ちょっとロバートさんに用事を頼まれて…」

「……。そうか、わかった。」

なんかフェアンの顔つきが一瞬変わったような気がしたけど…気のせいかな?

フェアンに隠してるせいなのか、明日に緊張してるせいなのかこの日は体は疲れているはずなのになかなか眠ることができなかった。


……だけどそれでも朝はやってくるもので…。



ーーー


この日の待ち合わせ場所はロバートさんの店の裏で夕方4時には解散するという予定だ。


「やぁ!アリン!」

「マイト!こんにちは。……あのね、お出かけする前にマイトに伝えときたい事があって…」

アリンはこの日、覚悟を決めてきた。今日は素直に友達とのお出かけを楽しむ。だけどマイトに人間やフェアンに対する否定的な気持ちがあるなら、まだフェアンに堂々と友人と紹介出来ないし今日以降はこうやって2人でお出かけするのはやめる。それが守れないなら友人もやめる。

それを聞いたマイトはにっこり笑って僕を見つめた。

「もちろん。それでいいよ。君の大切な人間の恋人だもんね。…じゃあとりあえず今日だけでも楽しもう!……友人としてね。」



アリンはわかってくれたことにホッとして、気付いていなかった。アリンの後ろでマイトが一人ほくそ笑んでいたことを…。




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