上 下
27 / 70

26 大切な人への報告

しおりを挟む
フェアンside

「ふふふっ……いってきます、いってらっしゃい!」

「アリンも。いってらっしゃい、いってきます。」

玄関前で向かい合いお互い声を掛け合い出勤した。
こんな些細な事だけでも心が温まる。

ーー俺は幸せ者だな…。

幸せすぎて胸の奥がきゅうっと苦しくなる。こんな気持ちになるなんて初めてだった。



ーーー



朝リンダさんに会うと早速、「あんた!どうだったのよ!!」
と、食い気味で話しかけられた。ここではなんなので、と用務員の休憩室に誘うと、確かにそうだわ!!と、ニヤニヤしながら着いてきてくれた。

「とりあえず…リンダさん。おはようございます。」

「はいはい、おはよ!で、どうだったの!?」

「…OKの返事……貰えました!」

「……!!えーっ!!やったじゃない!!おめでとうっ」

リンダさんはまるで初孫の結婚を喜ぶかのように泣いて喜んでくれた。

「そっかそっか、アリンは色々あったからねぇ…。フェアン!よろしく頼んだわよ!」

「わかっています!」

そしてニカっと笑うと俺の肩に手をかけさも当然かのように俺に言った。

「じゃあ、あんたずっとここにいるのよね。」

「……それはっ…」

言葉に詰まるとリンダさんは訝しげに俺を見つめた。

「えっじゃあ、記憶が戻るか迎えが来たらアリン置いてくわけ?」

「俺はっ!…人間も獣人も関係なく暮らせるようにしたいと思っています。どこに行こうともアリンと離れるつもりはありません!」

リンダさんは、ふーん、と素っ気なく呟くと仕事の準備を始めた。

「まぁあんた達がそれでいいなら私は何も言えないけど。……それが出来たら一番よね。…期待してるよフェアン!」

そう言うと、さあ仕事だよ!と、いつもの声を張り上げ休憩室から出て行ってしまった。


ーー必ず、人間と獣人が平等に暮らせる国にする。

それが俺の願いだ。





ーーー



アリンside

コンコンコン

「レイ、いるー?」

レイの仕事は牛乳配達。お家で牛を飼ってて家族みんなで搾乳や配達をしている。レイの仕事は朝が凄く早いからお互い働き出してからは頻繁には会えなくなった。それでも月に1~2回はご飯を食べに来てくれたり様子を見に来てくれてたりした。それなのに…

ーーフェアンが家に来てからレイ来なくなっちゃったな…

ちょっと寂しい気持ちのまま仕事帰りにレイの家を訪ねた。暫くドアの前で待ってみたけど返事がなくて、出掛けてるのかもと思い帰ろとした。……と、その時玄関のドアがガチャっと開いた。

「アリン…?」

てっきり家にいないのかと思ってたけど、レイは普通に家にいてなんならさっきまで寝ていたのか部屋着のままだった。

「レイ、久しぶり…」

「お、おう……。なんだよいきなり。」

「あのね、ちょっと話したい事があって…今大丈夫?」

「別にいいけど、、部屋入るか?」

「…うん!」


久しぶりのレイの家は昔と何にも変わらなくて居心地が良い。
だからリビングでお話でもいいかな、って思ってたけど親帰ってくるとゆっくり話せないからって、レイが言うからレイのお部屋で話す事にしたんだ。

レイのお部屋は青とグレーが基調のシンプルでいつも整理整頓されている。ベッドの横にはブルーのラグが敷いてありその上に小さなテーブルが置いてある。僕はいつも通りラグの所に座りレイはベッドに腰掛けた。

「で、なんの話?」

「え、えーとね…その…」

「だからなんだよ。」

「えっと……あのね、実は…フェアンと付き合ってるんだ…」

自分で言いながら恥ずかしくて恥ずかしくて中々顔を上げられなかった。レイなんて言うかな、って顔を伏せながら待ってたけど全然返事がないから、あれ?って思ってレイの方をみたんだ。そしたらレイは何かに耐えるように苦痛に歪めた顔をしながら僕を見つめてた。

「レイ……?」

「なんなんだよ、それ。…ありえねぇだろ。」

「……!レイの言いたい事もわかるよ!相手が人間だし、同性同士だし…で、でもね…!」

「違う!!!」

「…えっ…」


「そういうことじゃねぇっ…!なんで、なんであいつなんだよ…」

「ずっと近くにいたのは俺なのに!ずっと見てきたのは俺なのに…!」

「なんで俺がお前のこと好きって気付かねぇんだよ!!」


レイが叫びながら拳をベッドに叩きつけた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

処理中です...