金瞳の王子は黒猫少年を溺愛する

小鳥遊ゆう

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13 村長の判断

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猫獣人でも日常的に馬を扱える事に驚いた。
レイはニ頭の馬を連れてきていて自分が一頭に乗って先導するからと言い、もう一頭を預けてきた。

「フェアンは僕の後ろに乗って?」

「アリンは馬に乗れるのか…?」

「うん、乗れるよ。ていうか学校で習うからだいたいみんな乗れるかな。いくら閉鎖的な街でも移動手段はないと困るしね。」

レイほど上手じゃないけど、と言いつつ当然かのように馬に乗り手綱を握った。

「フェアンは?乗れるの?」

アリンは微笑みながら振り向きたずねた。

その言葉に一瞬ドキッとし狼狽えてしまった。なぜならリヒテルは王宮の騎士団のメンバー、いずれ団長となる身で訓練しているから馬に乗るのは得意なのだ。だが、記憶を無くしたフリをしてるから言えるはずもない。

ーーまだ秘密にしておかないと…でもいつまでも騙してはおけない。

「それもわからないんだ…」

「…そっか…早く記憶が戻るといいね…」

どこか寂しそうに笑うアリンの顔は見ているこっちが辛かった。
タイミングが来たら一番に君に伝えるから…今はすまない、そう心の中で唱える事しか出来なかった。


ーーー



「アリン、村長殿はどういう方なんだ?」

「うーん…優しいおじさんって感じかな?あんまり会ったことないけど。でも威厳がある!って感じの人。」

アリンのフワフワして回答に一抹の不安を感じたがそのまま裏道を馬で走る事10分。村長の家に着いた。


「おい、ここだ」

レイがぶっきらぼうに言い放った。
どうやら話の内容は予め伝えておいてくれたらしく、後は2人で行けと背中を押してくれた。きつい態度や口調でわからなかったがレイはかなり面倒見がいい。……まぁなんとなく相手がアリンだからだと思うが。


アリンがコンコンと戸を叩くと

「はーい!」というなんとも陽気な声が聞こえた。

「アリンです!」と戸の前で答えると、聞いてるよー入っておいでー、と遠くから声が聞こえた。

本当に入っていいのか少し迷ったがアリンが躊躇なく戸を開けたから続いて入った。もちろん、ちゃんと失礼しますと誰もいなかったが挨拶もした!


玄関には誰も居なく、リビングに続く部屋を歩いて行くと窓が少し開いていてそこから誰かいるのが見えた。

「村長!」

「おぉアリン!久しぶりだな!」

アリンに、少し待っててくれと言い縁側から現れたのはシルバーグレーの髪色をした紳士だった。

「すまんね、待たせてしまって。…紅茶でいいかな?」

村長はリビングを案内してくれ、どうぞ席にかけててくれと言い早々とキッチンの方へと消えてしまった。その思っていたよりフランクな態度にホッと息を漏らした。

「ふぅ…」

「フェアン?緊張してる…?」

「いや、大丈夫だ。思っていたより優しそうで良かった。」

「ふふっ。それにしては顔、強張ってる!…大丈夫。僕がなんとかします。」

目をキラキラさせながら見上げてくる。上目遣いと至近距離の威力は抜群でお互い顔が赤くなって、バッと目を逸らした。

「いやいや、どの茶葉にしようか迷ってねぇ。……ん?君たちどうしたんだい?」

「…なんでもないです…。」



ーーー



挨拶を終えると村長が入れてくれた紅茶を飲みながら、アリンは昨夜のことから話した。昨日からアリンには頼ってばかりで申し訳ないが、今自分が余計な事を言ってしまったら拗れてしまいそうで何も言えなかった。

村長はレイから話は聞いていたみたいだったがアリンの話にも真剣に耳を傾け。時折質問もしていた。

「とりあえずフェアン…でいいのかな?川に流され記憶を無くすとは…とても大変だったね。」

「はい…でもアリンが助けてくれたおかげで今ここにいることができます。」

「……君は猫獣人に対しても全然偉そうじゃないねぇ。」

「もちろん!猫獣人に限らず人種が違うからと言って、そこに差があってはいけないと思っています。」

「そうかい、それを聞いて安心したよ。」

「?」

「まぁ先に結論だけ言うけど」

「!」

「フェアン、君しばらくノスティアに居てもらうね。」

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