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12 朝のひと時
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衝撃のあまりあんぐりと口を開いたアリンに「今すぐ返事が欲しいわけじゃないよ。ただ、知って欲しかった」とだけ伝えて服を着替えに行った。
「言い逃げみたいになってしまった」って少し後悔したが正直内心バクバクで告白をするのは初めてだったから恥ずかしくなってその場にはもう居れなかった。
ーーー
昨日着ていた服は夜干しをしていてくれたらしくすでに乾いていて、丁寧に畳まれ脱衣所に置かれていた。だが、いざ着ようとしてみるといかにも騎士団の制服と丸わかりで、わかる人には王宮の人間だと気づかれてしまう。
どうしようか、と考えていると脱衣所のドアから小さくノック音がきこえた。
「フェアン?いる?」
「どうした?」
「あのね。その服ノスティアでは目立っちゃうからこれに着替えて欲しくて。」
おずおずとドアの隙間から服が差し出された。
「これお父さんの。サイズは少し小さいかもだけど多分大丈夫。あと、帽子もして欲しいんだ。」
「ありがとう、ちょうど困っていたとこだったんだ。」
そのままドアを開けると、まさかドアを開けると思っていなかったアリンとバチッと目が合った。だが次の瞬間、リヒテルから目を逸らし「もうすぐレイが迎えにくるそうです。少し急いでくださいね」とだけ言い、逃げるように出て行ってしまった。
ーーやはり伝えるのは時期尚早だったか…。
だが、もう諦められないのだ。ゆっくり、慎重に…必ず捕まえる。
ーーー
脱衣所から出ると、着替えている間に用意しておいてくれたトマトとハムが挟んであるサンドイッチを手渡してくれた。「早く食べてくださいね」と言いテーブルへと促した後、身支度を急ぐアリンはどこかソワソワしている。どうやら、アリンでも村長に会うのは滅多になくて少し緊張しているらしい。黒い猫耳がピンッと立っている。
服装は昨日はラフな格好だったが今日は襟付きの水色のシャツに黒いスラックスを履き、髪も少し長めの襟足を黒いリボンで結んでいる。肩幅が合ってなくて少しぶかぶかしているところも愛おしい。
ーー昨日の姿も可愛かったけど今日は一段と素敵だ…
じっと見つめてしまっていたからか視線に気付いたアリンがこちらを向いた。
「あの、そんなに見つめられても…」
「気にしなくていいよ。」
「そんな…無理です。恥ずかしい…目も合わせれないのに。」
顔を真っ赤にさせてまた目を逸らすアリン。
ーーあぁ、この子は俺が嫌なわけじゃなく、ただ恥ずかしいだけだったんだ!
意識してもらえることが嬉しくて思わず顔がニヤける。
「アリン、サンドイッチご馳走様。君は本当に料理が上手い!」
「あ、ありがとう…!」
「ところで、俺の髪を結ってくれないか?村長殿にはちゃんと説明するがやはり身なりも重要だろう。」
さぁさぁとアリンを手招きすると、真っ赤な顔のままコクンと一つ頷き、確かにそうかも…と呟く声が聞こえた。
アリンは黒いリボンを片手にリヒテルの座る椅子の後ろに立った。
「じゃあ、結いますね。」
白く細い指先が俺の金色の髪を梳くのが気持ちいい。
うっとりと、しているとアリンがポツポツと話し出した。
「あの…さっきの……告白ですよね?」
「え?」
「僕、そういうの初めてでっ…!びっくりして…嫌な態度取ってたかもしれません。ごめんなさい。」
「いや…こちらこそ、驚かしてしまったな。」
「あの、でも…嫌じゃなかったです…。」
「…えっ!?」
「わかんないんです!こんな事初めてで!好きとかそういうの…。今まで生活するだけでいっぱいだったから…。でも、嫌じゃなかったです。その…ありがとう。」
アリンの言葉に驚き振り向くと、静かにただただ幸せそうに微笑んでいた。
レイがアリンの家に着いたのはそれから間も無くのことだった。
「言い逃げみたいになってしまった」って少し後悔したが正直内心バクバクで告白をするのは初めてだったから恥ずかしくなってその場にはもう居れなかった。
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昨日着ていた服は夜干しをしていてくれたらしくすでに乾いていて、丁寧に畳まれ脱衣所に置かれていた。だが、いざ着ようとしてみるといかにも騎士団の制服と丸わかりで、わかる人には王宮の人間だと気づかれてしまう。
どうしようか、と考えていると脱衣所のドアから小さくノック音がきこえた。
「フェアン?いる?」
「どうした?」
「あのね。その服ノスティアでは目立っちゃうからこれに着替えて欲しくて。」
おずおずとドアの隙間から服が差し出された。
「これお父さんの。サイズは少し小さいかもだけど多分大丈夫。あと、帽子もして欲しいんだ。」
「ありがとう、ちょうど困っていたとこだったんだ。」
そのままドアを開けると、まさかドアを開けると思っていなかったアリンとバチッと目が合った。だが次の瞬間、リヒテルから目を逸らし「もうすぐレイが迎えにくるそうです。少し急いでくださいね」とだけ言い、逃げるように出て行ってしまった。
ーーやはり伝えるのは時期尚早だったか…。
だが、もう諦められないのだ。ゆっくり、慎重に…必ず捕まえる。
ーーー
脱衣所から出ると、着替えている間に用意しておいてくれたトマトとハムが挟んであるサンドイッチを手渡してくれた。「早く食べてくださいね」と言いテーブルへと促した後、身支度を急ぐアリンはどこかソワソワしている。どうやら、アリンでも村長に会うのは滅多になくて少し緊張しているらしい。黒い猫耳がピンッと立っている。
服装は昨日はラフな格好だったが今日は襟付きの水色のシャツに黒いスラックスを履き、髪も少し長めの襟足を黒いリボンで結んでいる。肩幅が合ってなくて少しぶかぶかしているところも愛おしい。
ーー昨日の姿も可愛かったけど今日は一段と素敵だ…
じっと見つめてしまっていたからか視線に気付いたアリンがこちらを向いた。
「あの、そんなに見つめられても…」
「気にしなくていいよ。」
「そんな…無理です。恥ずかしい…目も合わせれないのに。」
顔を真っ赤にさせてまた目を逸らすアリン。
ーーあぁ、この子は俺が嫌なわけじゃなく、ただ恥ずかしいだけだったんだ!
意識してもらえることが嬉しくて思わず顔がニヤける。
「アリン、サンドイッチご馳走様。君は本当に料理が上手い!」
「あ、ありがとう…!」
「ところで、俺の髪を結ってくれないか?村長殿にはちゃんと説明するがやはり身なりも重要だろう。」
さぁさぁとアリンを手招きすると、真っ赤な顔のままコクンと一つ頷き、確かにそうかも…と呟く声が聞こえた。
アリンは黒いリボンを片手にリヒテルの座る椅子の後ろに立った。
「じゃあ、結いますね。」
白く細い指先が俺の金色の髪を梳くのが気持ちいい。
うっとりと、しているとアリンがポツポツと話し出した。
「あの…さっきの……告白ですよね?」
「え?」
「僕、そういうの初めてでっ…!びっくりして…嫌な態度取ってたかもしれません。ごめんなさい。」
「いや…こちらこそ、驚かしてしまったな。」
「あの、でも…嫌じゃなかったです…。」
「…えっ!?」
「わかんないんです!こんな事初めてで!好きとかそういうの…。今まで生活するだけでいっぱいだったから…。でも、嫌じゃなかったです。その…ありがとう。」
アリンの言葉に驚き振り向くと、静かにただただ幸せそうに微笑んでいた。
レイがアリンの家に着いたのはそれから間も無くのことだった。
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