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7 2人で過ごす夜 後編
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「ここが寝室です!ベッドがこれしかないんでフェアンには狭いかもしれないけど…」
案内された部屋には勉強机と箪笥、シングルベッドしか置いていなかった。
「泊まらせてもらう身だ。どこでも構わない。…ベッドがこれしかないということはアリンはどこで寝るんだ?」
「両親が使ってたベッドが劣化してて最近捨ててしまったんです…。僕はリビングのソファで寝ますよ!」
ニコニコとさも当然かのように言ってのけるアリンに驚き気づくとアリンの肩を力強く掴んでいた。
「何を言ってるんだ!それなら俺がソファで寝る!!」
「えっ…えー…でも…」
「絶対俺がソファで寝る!」
「お客さんにソファはダメですよ…」
そうやって、暫く続いていた押し問答をアリンが大きな声で断ち切った。
「もうっ!じゃあ!!一緒にベッドで寝ましょう!!」
「……!!?」
「では、僕は片付けとお風呂に入ってきます!先、休んでてくださいね!」
アリンは部屋を出て行き、リビングの方へ向かった。
「…同じベッドはヤバいだろ…」
口元を手で隠すようにし、項垂れるが…事実は変わらない。
ーーもう寝てしまおう!!!
勢いよく掛け布団をめくりベッドの端ギリギリに体を滑り込ませた。
ーガチャー
ゆっくりと静かにアリンが寝室へ入ってきた。
「もう寝てますよね…?」
「……」
「フェアン、おやすみなさい良い夢を」
ーー全くもって寝れない!!!
スルッとベッドに入ってくる気配がする。背中が熱い。
目を塞いで必死に寝るよう努めるが一向に寝れない。
羊を数えようかと悩んでるうちに隣から可愛い寝息が聞こえてきた。
「スー……スー…」
ーー寝たのか…?
「スー…スー…」
ーーちょっとだけ…
寝返りをうつとカーテンの隙間から漏れる月夜に照らされたアリンがこっちを向いて寝ていた。
「…綺麗だ…」
吸い寄せられるようにアリンの黒髪を撫でる。耳にも触ってしまったが起きる気配はしない。
ーー…もうちょっとだけ…
耳を優しく撫でそのまま艶やかな髪をたどり白い頬に触れる。それを2、3度繰り返すうちに…
「んんっ…」
アリンが眉間の皺を寄せ身を捩った。
ーーっ起こしてしまったか?
焦って手を離し距離を取ろうとした。だがそれは出来なかった。
…アリンがすり寄ってきたからだ。
「う…ん…」
撫でていた手にすりすりと頬擦りし幸せそうな寝顔を浮かべている。
そのうちにリヒテルの厚い胸板に擦り寄り長い尻尾をリヒテルの太腿に巻き付けている。
「こ、これは…生殺しだろ…?」
しばらく理性ギリギリで耐えされるがままにしていると胸元に濡れた感覚がした。擦り寄るアリンの目元が濡れている。
「アリン…?」
「…ふっ…うっ……お母さん。……お父さん…」
ーーあぁそうか。今日一日ずっとこの子は笑顔でいたから忘れていた。
13歳の頃からひとりだったんだよな。周りの人が助けてくれたとは言っていたが…。
悲しい夜も寂しい夜も1人で超えてきたんだろう。
そう思うと理性とか本能とかそんなことよりも『そばにいてあげたい』この気持ちしかなかった。
長いまつ毛の先から零れ落ちる雫を指でとり、目尻に一つキスを落とした。
「おやすみ、アリン。良い夢を。」
耳元で囁きながら華奢な体を優しく抱きしめた。
案内された部屋には勉強机と箪笥、シングルベッドしか置いていなかった。
「泊まらせてもらう身だ。どこでも構わない。…ベッドがこれしかないということはアリンはどこで寝るんだ?」
「両親が使ってたベッドが劣化してて最近捨ててしまったんです…。僕はリビングのソファで寝ますよ!」
ニコニコとさも当然かのように言ってのけるアリンに驚き気づくとアリンの肩を力強く掴んでいた。
「何を言ってるんだ!それなら俺がソファで寝る!!」
「えっ…えー…でも…」
「絶対俺がソファで寝る!」
「お客さんにソファはダメですよ…」
そうやって、暫く続いていた押し問答をアリンが大きな声で断ち切った。
「もうっ!じゃあ!!一緒にベッドで寝ましょう!!」
「……!!?」
「では、僕は片付けとお風呂に入ってきます!先、休んでてくださいね!」
アリンは部屋を出て行き、リビングの方へ向かった。
「…同じベッドはヤバいだろ…」
口元を手で隠すようにし、項垂れるが…事実は変わらない。
ーーもう寝てしまおう!!!
勢いよく掛け布団をめくりベッドの端ギリギリに体を滑り込ませた。
ーガチャー
ゆっくりと静かにアリンが寝室へ入ってきた。
「もう寝てますよね…?」
「……」
「フェアン、おやすみなさい良い夢を」
ーー全くもって寝れない!!!
スルッとベッドに入ってくる気配がする。背中が熱い。
目を塞いで必死に寝るよう努めるが一向に寝れない。
羊を数えようかと悩んでるうちに隣から可愛い寝息が聞こえてきた。
「スー……スー…」
ーー寝たのか…?
「スー…スー…」
ーーちょっとだけ…
寝返りをうつとカーテンの隙間から漏れる月夜に照らされたアリンがこっちを向いて寝ていた。
「…綺麗だ…」
吸い寄せられるようにアリンの黒髪を撫でる。耳にも触ってしまったが起きる気配はしない。
ーー…もうちょっとだけ…
耳を優しく撫でそのまま艶やかな髪をたどり白い頬に触れる。それを2、3度繰り返すうちに…
「んんっ…」
アリンが眉間の皺を寄せ身を捩った。
ーーっ起こしてしまったか?
焦って手を離し距離を取ろうとした。だがそれは出来なかった。
…アリンがすり寄ってきたからだ。
「う…ん…」
撫でていた手にすりすりと頬擦りし幸せそうな寝顔を浮かべている。
そのうちにリヒテルの厚い胸板に擦り寄り長い尻尾をリヒテルの太腿に巻き付けている。
「こ、これは…生殺しだろ…?」
しばらく理性ギリギリで耐えされるがままにしていると胸元に濡れた感覚がした。擦り寄るアリンの目元が濡れている。
「アリン…?」
「…ふっ…うっ……お母さん。……お父さん…」
ーーあぁそうか。今日一日ずっとこの子は笑顔でいたから忘れていた。
13歳の頃からひとりだったんだよな。周りの人が助けてくれたとは言っていたが…。
悲しい夜も寂しい夜も1人で超えてきたんだろう。
そう思うと理性とか本能とかそんなことよりも『そばにいてあげたい』この気持ちしかなかった。
長いまつ毛の先から零れ落ちる雫を指でとり、目尻に一つキスを落とした。
「おやすみ、アリン。良い夢を。」
耳元で囁きながら華奢な体を優しく抱きしめた。
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