4 / 70
4 ノスティアの街へ
しおりを挟む「あの…?手、そろそろ離して欲しいです」
しばらく手を離せないでいたが、だんだん頬が桃色に染まり目を伏せるアリンを見て慌てて手を離した。
「あっ、えっと…すまないっ」
「いいです、もう大丈夫です……それよりもう行きましょう!すぐに日が暮れてしまいますよっ」
お互い手を離した時からドギマギしていたがアリンが話を変えてくれた事で頭を切り替えることが出来た。
ーー恋だと気づいてからダメだ…だが、アリンの折角の厚意なんだ。俺が切り替えないと…
陽が沈む時間で良かった。俺のこの赤い顔もきっと夕陽が隠してくれるだろう、そう思いアリンの家へ向かうことにした。
道中ではノスティアの街のことや、アリンの話を聞いた。
ノスティアに住む猫獣人の大半は人間が怖い・嫌いと思っている事。詳しくは教えてくれなかったが、アリンには両親が居らず1人で暮らしているという事。
そして、人間が1人でノスティアの街に入るという事がとても危険だという事。
「そうか…過去に人間が猫獣人を奴隷にした歴史はあるからな。嫌われていてもおかしくない。…でもそれならアリンは私が怖くないのか?1人で暮らしているんだろう?泊めてもらいたい気持ちはあるが、アリンが怖いと少しでも思うなら…」
一緒にいたい気持ちはあるが、アリンを不安にさせたくない。その気持ちからかだんだん声が小さくなっていく。
「正直、最初はちょっと怖かったです。体も自分よりとっても大きいし…。でも、なんだかあなたは大丈夫な気がしたんです。この人は怖くないって。」
「っ…!…アリンが人間を街に入れたと知られたらアリンが危ないんじゃないか?」
「僕は構いません!僕よりあなたです、危ないのは。…僕に何日もあなたを守ることは出来ないかもしれないけど…せめて今夜はあったかいお風呂に入ってゆっくり休めるよう頑張りますね!」
にっこり笑うアリンの優しさに思わず目が潤んだ。
「なぜ、君は人間の俺にこんなにも優しくしてくれるんだ…?」
日はとっくに沈み月夜に照らされたアリンが振り返りながら答えた。
「僕は僕にできることをやっているだけです。…でも…あなただったから。かもしれません。」
月夜と振り返ったアリンの美しさに息を呑んだ。
そのまま何も言えないでいるとアリンは急に真剣な顔をし歩みを止めた。
「さて、そろそろ僕たちの住む区域に入ります。ここから正面突破はさすがに無理ですから、裏道で行きます。この時間帯は人通りは少ないけど僕たちは夜目が利きますからここからは静かに・素早く!お願いしますね!」
アリンはそう伝えると徐にリヒテルの手をとり居住区への明るい道ではなく反対の草木が生い茂る道を走り出した。
その様子を見ていた者が居たことに気がつかないまま…。
10
お気に入りに追加
428
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる