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74探し出す
しおりを挟む「これ珍しい紅茶が入ったからさ、BINGOで使ってよ。って、あれ……?お客さん?」
大きな木箱を抱えて入ってきたクリスは、見知らぬ顔に一瞬怪訝そうな顔をしたが、ショウの服装が王宮の騎士団員の服装だと気づいて目を見開いた。
――なんで王宮の騎士団がここにいるんだよ……?!
自分の兄がなにかしでかしたんじゃないかと途端に緊張で胸がバクバクする。
「なんで、王宮の騎士団の人が……」
「あぁ……クリス。こちら、王宮の……勇者様です。ジュリちゃんの婚約者」
「はじめまして。ジュリの婚約者のショウです」
ショウは驚いたままのクリスの前に立つと右手を差し出しだ。
その大きくて無骨な手を見た途端ライアンの胸はキュウっと握りしめられているように苦しくなった。
――ここにこの男がいるってことは、ジュリはもう帰っちまうんだよな。
泣きそうになるのを堪えながら差し出された手を握り返そうと沿た時だった。
「そういえば、ジュリちゃんに会えた?」
ライアンが木箱の中に入っている紅茶を一つずつ出しながらクリスに尋ねた。
「は?会ってないけど……?なんで?」
「えー?病院行く前にクリスに会いに行くっていってたけどなぁ。行き違いだったか……?」
頭を傾げながら紅茶を店の棚に次々に入れていくライアンに今度はショウが食い掛った。
「ジュリは何時に出かけたんだ!」
大きな手がライアンの両腕を力強く掴んだ。
その拍子に持っていた紅茶の瓶がごろりと床に落ちる。
掴まれた腕が痛くておもわずライアンの顔が歪む。
慌ててクリスが二人の間に入り引き離すと、ライアンが涙目で答えた。
「えっと……十五分ほど前だと思うけど……」
その言葉に今度はクリスの顔が青ざめた。
「ちょっと待てよ。俺、自分の店からここまで来るのに十五分かかってないけどジュリに会ってないぞ……?」
ちょうど十五分ほど前に店を出たクリスは徒歩でBINGOまで来ていた。
ライアンが言ったことが本当ならば途中でジュリと会うはずだ。
――どこかですれ違った?いや、そんなわけない。俺があの子を見逃すはずない。
次第に呼吸は荒くなり冷や汗が頬を伝う。
その様子を見たショウはクリスの肩を掴むと大きな声で二人に叫んだ。
「……ジュリが危ないかもしれない!ライアンさん、ジュリの病院はわかりますか?今すぐジュリがそこにいるか確認してほしい」
「は、はい!」
「あなた……クリスさんですね。馬は乗れるか?あなたもジュリを探すのに協力してほしい」
「もちろんだ!」
クリスが返事をすると同時に二人はネイサンが馬を繋いだ場所まで走った。
蹄洗場はBINGOから走って五分ほどの場所にある。
二人は走って五分ほどでちょうどネイサンが馬を繋いだ場所―蹄洗場―にたどり着いた。
ネイサンは、こんな事態に陥っているとは知らず蹄洗場の主人と楽しそうに談笑していた。
「おい、ネイサン!」
「あれ、ショウ様どうしてここに?あと、そちらの方は……?」
ショウの声に気付いたネイサンは一度クリスの方をチラリと見た後、ショウに駆け寄った。
「どうしてじゃない!ジュリがいなくなったんだ!馬をだせ!」
「……え?!何があったんですか?!」
声を荒げるショウにネイサンは目を瞠った。
普段、冷静で穏やかなショウがここまで怒った表情を見せたのは初めてだったからだ。
何があったのか詳しく聞こうとしてもショウの目は血走り、ふー、ふー、と息を荒げている。
どうしようかと思った先に、クリスが手を上げネイサンの前に進み出た。
「ジュリの友人のクリスと言います。簡潔に言うと、俺に会いに来たはずのジュリがいなくなりました。行くはずだった病院には俺の兄貴が連絡とっています。……俺にも馬を貸してもらえませんか?その、……ジュリは大切な友人ですから」
「そうなんですね!わかりました、馬は俺がなんとかします!」
ネイサンはそう言うと蹄洗場の主人の元へ向かった。
と、その時だった。
「勇者様!病院に連絡をとりました!」
「……!それで、ジュリは!?」
その言葉にネイサンは不安気な顔で目を逸らした。
そして震える声でただ一言……
「……今日は一度も来ていないと……」
それはジュリが誰かに連れ去られたという事だった。
ショウは、自分の馬が繋がれている紐をちぎる勢いで外すと勢いよく町に向かって走り出した。
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