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72狙われた命
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BINGOからクリスの店クリクラまでは歩いて十五分程度。
道もわかりやすくBINGOの敷地を抜けて最初の曲がり角を右に曲がればあとは大通りをまっすぐに進めばいいだけだ。
ふと感じる違和感。それにジュリが気づいたのは曲がり角を曲がった直後だった。
――あれ?なんで大通りに誰もいないんだろ?
この大通りは市場だ。
平日でも観光客や町の住人で賑わっている。
それが右を見ても左を見ても後ろを振り返ってみても人っ子一人いない。
不思議に思い近くにあった靴屋に駆け込む。
「すいませーん!BINGOのジュリです!誰かいませんか!」
店先で大声で叫ぶも誰の返事もない。
申し訳ないと思いながらも店の中に入りすべての部屋を覗いたが客も店員もネズミ一匹さえもいなかった。
「どうして?なんで誰もいないの?」
頭が真っ白になりながら店を出る。
誰もいない大通りの道の真ん中でジュリは蹲った。
――これは夢?店も町もそのままなのに人だけがいない……。BINGOは今どうなってる?もしBINGOも誰も居なくなっていたら……。
ジュリの頬には冷や汗が伝う。バクバク鳴る心臓をなんとか抑えようと目を閉じ何度も深呼吸する。
スーハー、スーハー、と胸に手を置き三度目の深呼吸をしようとした時だった。
突然、瞼を閉じていてもわかるほど急に空が暗くなった。
――……なんかおかしい。空が暗いけどこれ雲じゃないような……。なんか灰色の壁みたいに感じる。
目を開け空を見上げるとそこは一面濃い灰色の空で覆われていた。
今日のマルシャン村は晴れの予報。こんなに厚い雲がかかるはずない。
――とりあえず、ジュンとケイが心配だし一回BINGO戻らなくちゃ。しっかりしろ!
目をぎゅっと瞑りながら両手で自分の頬を叩く。
ふらつく足で踏ん張りながら立ちあがり前を向くと、遠くの方にぼんやりと人影が立っているのが見えた。
――良かった……!誰か人がいる!
ジュリはほっとした表情で遠くにいる人影に手をあげた。
そしてゆっくりと人影の方に近づく
残り数メートルまで近づいた時、ジュリは「ひっ」と小さな悲鳴を上げ恐怖で体を強張らせた。
その男の顔色は人間とは思えないほど白く、血を塗ったような口からは二本の牙がちらりと見えている。
全身黒のマントに黒の長い髪は不気味で頭からは左右一本ずつ黒い角が出ていた。
ジュリがその異様な形相に目を逸らせないでいると、男はジュリをじろりと舐めるように見た後話し出した。
「お前があの男の子を孕んでいる人間だな?」
「だ、誰……?」
「まあまあ、名を名乗らずともそのうちわかるだろう。それよりこの世界は面白いものだな、男でも妊娠出来るなんて」
「!お前、いったい誰だ……!他の人たちを戻せ!」
叫びながら一歩ずつ男と距離を取る。
すると男は眉を八の字にし困ったような表情をした。
「お前は何を勘違いしている?私はお前以外の人間には何もしておらん。お前が私の作った結界に入ったのだ」
「どういうこと……」
「お前に何も罪はない。だがお前の腹の子には消えてもらわねばならん。その血は私にとって邪魔でしかならないからな。……さて、そろそろこの結界も切れる。とりあえず来てもらうぞ」
「……!やめろ!!」
伸びてきた手を振り切るように背を向け走り出す。
だが、一歩踏み出した途端に黒い腕がジュリの体に巻きつき抵抗する間もなくジュリは一瞬で気を失ってしまった。
地面に横たわったジュリの姿を見下ろすと男はポツリと呟いた。
「お前も運が悪い。この私……魔王デビアスに捕まるなんてな」
道もわかりやすくBINGOの敷地を抜けて最初の曲がり角を右に曲がればあとは大通りをまっすぐに進めばいいだけだ。
ふと感じる違和感。それにジュリが気づいたのは曲がり角を曲がった直後だった。
――あれ?なんで大通りに誰もいないんだろ?
この大通りは市場だ。
平日でも観光客や町の住人で賑わっている。
それが右を見ても左を見ても後ろを振り返ってみても人っ子一人いない。
不思議に思い近くにあった靴屋に駆け込む。
「すいませーん!BINGOのジュリです!誰かいませんか!」
店先で大声で叫ぶも誰の返事もない。
申し訳ないと思いながらも店の中に入りすべての部屋を覗いたが客も店員もネズミ一匹さえもいなかった。
「どうして?なんで誰もいないの?」
頭が真っ白になりながら店を出る。
誰もいない大通りの道の真ん中でジュリは蹲った。
――これは夢?店も町もそのままなのに人だけがいない……。BINGOは今どうなってる?もしBINGOも誰も居なくなっていたら……。
ジュリの頬には冷や汗が伝う。バクバク鳴る心臓をなんとか抑えようと目を閉じ何度も深呼吸する。
スーハー、スーハー、と胸に手を置き三度目の深呼吸をしようとした時だった。
突然、瞼を閉じていてもわかるほど急に空が暗くなった。
――……なんかおかしい。空が暗いけどこれ雲じゃないような……。なんか灰色の壁みたいに感じる。
目を開け空を見上げるとそこは一面濃い灰色の空で覆われていた。
今日のマルシャン村は晴れの予報。こんなに厚い雲がかかるはずない。
――とりあえず、ジュンとケイが心配だし一回BINGO戻らなくちゃ。しっかりしろ!
目をぎゅっと瞑りながら両手で自分の頬を叩く。
ふらつく足で踏ん張りながら立ちあがり前を向くと、遠くの方にぼんやりと人影が立っているのが見えた。
――良かった……!誰か人がいる!
ジュリはほっとした表情で遠くにいる人影に手をあげた。
そしてゆっくりと人影の方に近づく
残り数メートルまで近づいた時、ジュリは「ひっ」と小さな悲鳴を上げ恐怖で体を強張らせた。
その男の顔色は人間とは思えないほど白く、血を塗ったような口からは二本の牙がちらりと見えている。
全身黒のマントに黒の長い髪は不気味で頭からは左右一本ずつ黒い角が出ていた。
ジュリがその異様な形相に目を逸らせないでいると、男はジュリをじろりと舐めるように見た後話し出した。
「お前があの男の子を孕んでいる人間だな?」
「だ、誰……?」
「まあまあ、名を名乗らずともそのうちわかるだろう。それよりこの世界は面白いものだな、男でも妊娠出来るなんて」
「!お前、いったい誰だ……!他の人たちを戻せ!」
叫びながら一歩ずつ男と距離を取る。
すると男は眉を八の字にし困ったような表情をした。
「お前は何を勘違いしている?私はお前以外の人間には何もしておらん。お前が私の作った結界に入ったのだ」
「どういうこと……」
「お前に何も罪はない。だがお前の腹の子には消えてもらわねばならん。その血は私にとって邪魔でしかならないからな。……さて、そろそろこの結界も切れる。とりあえず来てもらうぞ」
「……!やめろ!!」
伸びてきた手を振り切るように背を向け走り出す。
だが、一歩踏み出した途端に黒い腕がジュリの体に巻きつき抵抗する間もなくジュリは一瞬で気を失ってしまった。
地面に横たわったジュリの姿を見下ろすと男はポツリと呟いた。
「お前も運が悪い。この私……魔王デビアスに捕まるなんてな」
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