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64再会
しおりを挟む「ショウ様、勝手な行動はお辞めくださいと何度もおっしゃったはずです。……カーテン開けさせてもらいますよ」
革靴のコツコツなる音が近づき区切られていたカーテンの前で足音が止まる。
人影がカーテンに映るとジュリはごくりと唾を飲んだ。
白いカーテンが勢いよく開けられる。
そこにはレミウスが不機嫌そうに眉間に皺を寄せながら立っていた。
「病院の先生から『オメガの患者と一緒だ』とお電話を頂いたときはまさかと思いましたが……。やはりあなたでしたか、ジュリさん……」
「レミウスさん……」
「……ジュリを責めるな。俺はジュリを見つけた。約束は守ってもらうぞ」
ショウはジュリを守るように背中でジュリを隠すとレミウスを睨みつけた。
その姿を見て、レミウスは「はぁ……」とため息をつき片手で頭を掻く。
「ショウ様、とりあえず廊下でマーリンたちが待っていますから……」
そういうとレミウスはカーテンを全開にし廊下に向かって手を上げた。
次の瞬間には、ばたばたといくつもの足音が部屋に入ってくる音が聞こえた。
「ショウ様っ……!大丈夫ですか……!?」
「ショウ様、心配しましたよー。行くなら俺も連れてってくださいよ」
顔を覗かせたのはマーリンと騎士団のネイサンだった。
二人はショウの顔を見てやっと安心したのか、ほっと胸を撫でおろしたように微笑んだ。
「マーリンさんに、ネイサン。二人とも心配かけてすまなかった」
「本当っすよー。ショウ様が急に宿からいなくなるから大変でしたよ。まぁ、今は団長がまとめてくれてるから大丈夫っす!」
ネイサンが笑いながらショウの肩に手を置く。
ジュリがその懐かしい声を聞きショウの肩越しに顔を出すと、ネイサンはジュリにむかって「久しぶり」と声をかけ手を差し出した。
「久しぶりです、ネイサン」
応えるようにネイサンの手を握り返すジュリ。
笑顔のネイサンにつられてジュリの顔にもやっと笑顔が戻る。
二人が微笑みながら握手をしていると、そこに割って入るようにマーリンの声が病室に響いた。
「ジュリさん!すいませんでした!」
マーリンはネイサンを押しのけるとジュリの前で深々と頭を下げた。
ジュリは驚き、目を見開いたままマーリンの方をみるが一向にマーリンの頭が上がる気配がしない。
「えっ……マーリンさん、頭をあげてください」
なんとか声を振り絞り声を掛けるとマーリンは恐る恐る申し訳なさそうに顔をあげた。
「……ジュリさん。この半年間ずっと謝りたかったんです……。きっとあなたが王宮からいなくなったのは私とレミウス様の会話を聞いてしまったからでしょう?」
「それは……」
「私の勘違いをレミウス様にも伝えてしまったばかりにジュリさんに不安な気持ちを抱かせてしまった事、本当にもうしわけありませんでした……!」
ぎゅっと目を瞑りながら謝るマーリンの体は小刻みに震えている。
ジュリは一度深く呼吸をするとベッドを降りマーリンの前に立った。
「マーリンさん、顔をあげて」
「ジュリさん……」
「あの時、逃げだしたのはこのお腹の子を守るにはそうするしかなかったから。マーリンさんはショウが元の世界に帰るって思ってただけなんだし、マーリンさんのせいじゃないよ。それに……もう誰が何と言おうとショウと離れるつもりはないから」
「はい、はいっ……!それについてはショウ様とも約束をしていますから」
許された安堵感からやっと落ち着いたマーリンはレミウスの方へ振り返ると「ね、そうですよねレミウス様」と明るく声をかけた。
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