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61再会
しおりを挟む後ろを振り向く。
数メートル後ろに見えたのは馬に乗った体の大きい男だった。
街灯がなくてはっきり姿がみえなくてもわかる。
そのシルエット、声、匂い……そこにいたのは紛れもないショウの姿だった。
「うそ……どうして」
ジュリが座り込んだまま呆然としていると、ショウは馬から降りマントをなびかせながらあっという間にジュリの元に駆け寄り力強く抱きしめた。
ショウの逞しい腕がジュリの体を包み込む。
ジュリのフェロモンもショウを待っていたかのように濃く辺りに広がった。
「話したいことはたくさんある……。だけど、まず言わせてくれ『ずっと会いたかった』」
「……なんで?ショウは元の世界に帰ったんじゃ……」
「帰るわけないだろう、ここにジュリがいるのに」
優しい声でそう囁くとショウはジュリの両頬に手を添えながら微笑んだ。
ジュリもほっとしたように目をつむるとショウの手に身を預け擦り寄る。
しばらくそうしていると、ショウが不思議そうにたずねた。
「この街に着いてすぐに君の香りがした。きっとこの街のどこかにいるんだろうとは思って探していたが……。でもどうしてこんな夜に一人でいるんだ?」
「あ、ケイ……弟が、体調悪くて……。隣町の病院しか開いてなくて、それでっ……!」
「双子の弟か……。わかった。俺の馬に乗っていこう」
眉間に皺を寄せながら狼狽えるジュリを安心させようとそっと肩を寄せる。
ジュリはショウの顔を見上げると何度も頷いた。
そのまま一人で立ち上がろうとするが、足首は血が滲んでうまく立ち上がることが出来ない。
「ショウ、ごめん。足が痛くて歩けない……」
「大丈夫。腕を俺の肩に手を回して。抱きかかえるから」
ジュリのひざ下に腕をまわすとジュリの体を持ち上げる。
その瞬間、膨らんだお腹がショウの視界に入った。
「このお腹……やっぱり妊娠してるんだな」
「それは……」
「とりあえず病院に行くぞ。話はそれからだ」
ぴしゃりと言い放つとジュリを抱きかかえたまま歩き出す。
温かい腕とは反対にその表情は冷たく無表情でジュリは抱きかかえられたまま何も言えないままでいた。
馬で走る事二十分。
ジュリは病院のベッドの上にいた。
清潔なシーツの上で横になっていると、仕切りのカーテンの外から看護師の声が聞こえてきた。
「ジュリさん、お体どうですか?」
「あ、大丈夫です」
ジュリが答えると看護師はカーテンを開け顔を出した。
看護師は横になっているジュリの横に立つと点滴の速度を調節しながらにこにこと微笑んでいる。
「今連絡きてね、こっちから向かった医師がBINGOに着いたって。弟さん、炎症が酷くて高熱が出てたけど抗生剤も処方したし、一週間くらいで良くなるそうよ。あなたもお腹の赤ちゃんも無事だったし良かったわね」
「良かった……本当にありがとうございました。……あの、ショウ……『勇者様』は今どこに?」
「あぁ~あなたを颯爽と抱えて現れた勇者様ねー。今院長先生と話してるけど……。終わったらここに来るよう伝えとこうか?」
「すいません、お願いしていいですか?」
看護師は「伝えておくね」と言うと、病室を出て行った。
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