異世界から来た勇者様は男娼オメガに恋をする

小鳥遊ゆう

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46クリスの誘い

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「手なんか出してねえよ!」

「本当かぁ……?そんな真っ赤な顔で言われても何の説得力もないけどなあ?」

挑発するかのように言う男に不機嫌になったのか御者の男は歯をぎりぎりと噛み唾を吐くと「だれがこんな男オメガ選ぶかよ」と捨て台詞を残したまま去っていった。
その様子にジュリがあっけにとられていると、助けてくれた男がジュリに近づきてきた。

「可愛い子ちゃん、大丈夫だった?」

「えっと、はい……大丈夫です。あの、あなたは……?」

「俺はクリス。昨日から仕事でこの市場に仕入れに来たんだけど……君、困ってるみたいだけどどうしたの?」

クリスはジュリの匂いに一切気づかないのか肩が触れ合うほどの距離だというのに何も顔色が変わらない。
それどころかボケっとしてるジュリの顔色を窺うようにぐっと近いてくる。

「あ、僕ジュリって言います。マルシャン村に行きたいんですけど、ここから遠いからか断られてしまって……」

「君マルシャン村行きたいの?それなら俺が乗せてってやるよ!今からマルシャン村に帰るところだから」

「ハハハッ」と豪快に笑うその男は金髪にヘーゼル色の瞳、ショウと同じくらいの長身に、鍛えているかのようながっちりとした体つきをしていた。

「本当に!?お、お願いします!あ、でも……弟たちもいるんですけど、それでもいいですか?」

「一人でも三人でも構わねえさ!ほら、早く連れてきな!」

「ありがとうございます!」

ジュリは何度も頭を下げると小走りで市場で待つ弟たちを迎えに行った。
クリスは寛大で優しくジュンとケイに会うとすぐ「よろしくな!」と二人の頭をガシガシと撫でた。

クリスはマルシャン村で各地方の雑貨や家具、アクセサリーを販売する雑貨店を営んでいる。
この日は市場で人気の金平糖やこの土地でとれる宝石を使ったアクセサリーを買い付けに来ていた。
荷台にはたくさんのダンボールが積まれていてジュリとジュン、ケイはその間に入るように身を縮こませた。

「狭くて悪いな。なるべく節約したいから基本は荷台で寝泊まりするんだわ。でももし辛くなったら遠慮なく言ってくれよな!」

「大丈夫!クリスさんありがとう!」

ジュリが荷台の中から返事をするとクリスは振り向きニッと笑う。白い歯がきらりと光ると馬車は勢いよく出発した。

馬車はほぼ一日中、走り続けた。時々食事や馬の体調を見て休憩することもあったがそれ以外はほとんど荷台から降りることはなかった。

ー-結構揺れ激しいなあ。足も伸ばせないからちょっと痛い……。ジュンとケイも寝相悪すぎでしょ……。

ジュンとケイは最初は二人とも元気よく起きていたが、朝早く起きたせいなのか日が暮れるころには熟睡していて二人の足はジュリの体の上に乗っかかっていた。

「もう二人とも……!お腹だけは蹴らないでよ」

小声でつぶやき守るようにお腹に手を添える。
しばらくそうしていると、馬車が止まった気配がした。














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